ファルケンなうのスーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャスな映画ブログ(ネタバレあり)

ファルケンなうの趣味の部屋。殴り書きをコンセプトに、主に映画館に観に行った映画作品の感想をダイレクトに投稿しています。少しでも気になった方は、Twitterのフォローもよろしくお願い致します。@FALKEN_now       ※ネタバレありがほとんどです。

ファルケンなうの2020年映画ベスト56  今年は”好き”が溢れる年間ベスト!

明けましておめでとうございます。

本年も当ブログ並びにファルケンなうをよろしくお願い致します。 

 

さて、年末年始といえば映画ベスト記事ですよ。毎度のごとく、このブログでは劇場鑑賞作品は全てランキング化しております。”この人の好みはそうなんだ。”ぐらいの軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。

2020年はコロナウイルスの影響により映画館が閉まったり、作品自体の公開が延期になったりと映画業界全体が大きく振り回された1年でした。そんな中で私の今年の鑑賞本数は56作品。去年より20作ほど下回る結果となってしまいました。また、ブログ自体もなかなか上げられず、2021年からはそこの改善も考えていきたいと思っております。

 

ではランキングに参りましょう!

 

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40位以下

 

56位

「UFO真相検証ファイル Part1/戦慄!宇宙人拉致事件の真実」

 

 

…映画じゃない。

 

 

55位

「キャッツ」

 2019年から悍ましいビジュアルが話題となっていた本作。正直言うとネタとして観に行った部分もあったんです。しかし、冒頭の街の全景から猫の世界へシームレスに移ろっていくカメラワークにワクワクすらしました。字幕版での鑑賞でしたが、劇中のミュージカル場面の歌も良く、要素としてはしっかり楽しめる水準を誇っていると思います。公開前から話題となっていたビジュアルも正直慣れてくる。

 では何が本作をダメにしているのか。それは原作や舞台版の知名度甘えて、「キャッツ」を映画に落とし込めていないところなんです。映画として、映像作品として観る上で考えなければならない部分を放棄して、手放しに喜んでもらおうとしている。本作の世間的評価はその積み重ねの結果なんだと思うんです。

 

 

54位

「浅田家!」

 実在の写真家浅田政志さんを原案とした映画。本作はきっと、ノレる人にとっては心底泣ける作品なんだと思うんです。家族愛を中心に、病気や震災等の要素まで含んで物語が進行していき、その1つ1つにしっかりと泣ける要素がある。なのに私がこの映画にノレなかったのは、まず感動要素が多すぎるように感じてしまったところ。前半、かなりたっぷりめに浅田家の話や写真家として成功する話を盛り込んだせいで、3.11を題材とした後半のシークエンスのテンポが早すぎるんですよね。しかも主人公は関東東北間を行ったり来たりするので大忙し。もっと要素を少なくしてくれた方が、個人的にはノレたのかなぁ、と。でも田舎娘な黒木華ちゃんは可愛い!

 

 

53位

「STAND BY ME ドラえもん2」

”ドラ泣き”というパワーワードから色んな意味で世間を沸かせた前作から6年。本作は名作「おばあちゃんの思い出」から着想を得たオリジナルストーリーを骨組みとした作品に。正直この映画、減点方式で見るととんでもない数値を叩き出すと思うんです。大人のび太の行動や台詞回しの下手さ、そしてご都合主義な展開とかとかとか…。驚くほどダメな点が多い本作ですが、のび太の自己肯定というテーマを描いた点だけは唯一良かったところなんじゃないでしょうか。無理矢理にでも幼稚園の時、大人になった時、さらに誕生の瞬間までを小学5年生ののび太に見せることで自分を肯定することを学んでいく。この骨組みだけは、この映画の加点ポイントだと思います。

もっといえばこのポイントを盛り上げるにはおばあちゃんは要らなかったりするんです。最後の結婚式はおばあちゃんではなくドラえもんにフォーカスを当てないと。ドラえもんが、のび太くんの成長を見て涙する演出でもあれば、こっちも泣いてましたよ。ドラとのび太の出会いと別れをなぁなぁにしてしまう毎度お馴染みな作りは、どうにかならないんでしょうかね…。そここそが映画に再構成するメリットだと思うんですが。

 

 

52位

ストックホルム・ケース」

人質が強盗に恋をしちゃったという嘘のような恋の病、ストックホルム症候群の元となった事件の映画化。まずイーサン・ホーク演じる強盗が呑気な雰囲気を漂わせながら強盗を始める冒頭のコメディ感にワクワクしてしまう。しかしこの映画はデフォルメしたお気楽コメディではなく、中盤からは強盗と人質を飛び越えて人情や友情、そして恋心に訴えてくる人間ドラマへと展開していく。この過程が見事で、鑑賞前には疑ってかかっていたこの症候群すらも説得力を帯びて鑑賞してしまうこと間違いなしの作品でした。

危険で非現実的な恋を欲してしまう恋心と、私達が非現実的な体験を求めて映画館へ足を運ぶのは実は同義なのかもしれない…。

 

 

51位

「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」

「スイスアーミーマン」の監督とA24が再び手を組んだ奇作。中盤まではディックの死因が観客にも伏せられており、「ハングオーバー!」のようなアホコメディとして楽しめる本作。

しかしこの映画の本質は、死因が明らかになってからの中盤以降。まさに失笑してしまうこと間違いなしのアホな理由を隠し通すために主人公は右往左往するが、行動がアホすぎて二進も三進もいかずにどんどん自体が悪化していく。この光景があまりに滑稽で、しかし一方でいつの間にかとんでもなく人間味を帯びてくるんです。最後までアホが痛い目にあう本作は、同じくアホな全ての人に対する処方箋のような作品となること間違いなし。アホに見て欲しい作品でした(褒めてます)。

 

 

50位

「リチャード・ジュエル」

 警備員のリチャード・ジュエルが爆弾を発見し、非難を促した英雄的活躍とその真偽を問われた実話の映画。私たち観客は、冒頭で彼が英雄的行為をしているのを見ているんです。しかし世間ではそれが嘘なんじゃないかと疑われ、同時に観客もFBIに協力するリチャードの行動から彼へ偏見を持ち始めてしまう。本作は、観客が無意識的に持ち始めていた偏見が、当時彼に向けられていた偏見と同じであると言うことを気づかされるんです。差別、偏見を見直そうとする現代にこそ、偏見の出来る過程とその後を描いた見事な作品でした。

 

 

49位

「ミッドウェイ」

ローランドエメリッヒ、久しぶりの新作。WWⅡモノといえばどちらかのお国に左右されがちな作品が多い中、本作の推しポイントは日米両方の豪華キャストでどちらの国の視点からも語るというもの。私はそんな器用なことをエメリッヒには求めていないので初めからそこに期待はしていませんでしたが、この映画の日米の描き方はかなり米寄りです。当然ですけどね。

ストーリーがダメならアクションはどうなんだと言われると、かなりCGが際立ったアクションが多いのも事実。しかし今時、ゴリゴリのCGアクションが見れる作品がどれくらいあるでしょうか。リアル志向が行きすぎて、一昔前のあのゴテゴテ感を今尚作り続けるエメリッヒは賞賛されるべきだと思うのです。そしてそんなゴリゴリアクションシーンの中でも最も魅力的なのが、高高度からの急降下爆撃シーン。まるで雨のように降り注ぐ(?)、いや撃ち上げられる対空砲火を掻き分けて敵戦艦を狙い撃つこのシーンは、絶対に映画館で観るべき最高のシーン。そしてそれはきっとエメリッヒもわかっていて、なんとお代わりまで用意されてるサービス精神の高さには、感謝しかありません。

 

 

48位

「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」

 「ムーンライト」のプランBとA24が製作した新作。「ムーンライト」が自分に合わなかったのと同様に、本作の詩的なセンスに訴えかけてくる話運びは苦手でしたが、それでもサンフランシスコという街を優雅に映し出す印象的な冒頭から、主人公ジミーがこの街に生きて思うこと、感じることに共感しながら進む展開は見事。特に終盤の、差別に対する激白は目を見張るものがあり、それだけでも劇場での鑑賞をイチオシしたいほど。もう少し短かったらベスト10入りしていたかもな作品でした。

 

 

47位

ワンダーウーマン1984

みんな大好きワンダーウーマン2作目。女性ヒーローというジャンルをまさに先導する「ワンダーウーマン」シリーズでも前作以上に”女性らしさ”を強調した作りになっていた本作。それも旧時代的なセクシー路線もなく、少し前の女性の幸せ=恋愛ではなく仕事 という考え方でもなく、恋愛も仕事も両立する彼女の姿はより現代にアップデートされた女性像でありヒーロー像になっていると思いました。正直、2時間半という尺が長過ぎて間延びしている部分は気になりましたが、今、ヒーロー映画を作ることの意義を感じる作品でした。

でもテーマ曲はアレンジして欲しくなかった!

 

 

46位

「mid90s」

ジョナヒルがメガホンを取った初監督作。まずは90年代を象徴した音楽、カルチャー、そして画面作りのセンスが半端じゃないんです。ザラついた映像は風景を時に美しく、時に醜く映し出す。それは少年時代の不安定な世界の見え方を象徴しているような画面構成でもあって、加えて本作は少年時代のザラついた思い出を蘇らせてくれます。親に反抗して、友達が絶対で、世界が狭かったあの頃。思い返せば否定的に思えてくるあの頃の思い出を、本作は優しく肯定してくれる。彼らを悪友だと決めつけて関わらないように抑圧していた母親のある”気づき”が、世界の見え方を変えていく。過去を否定するのではなく慈しむことこそ大切なんだよ、と優しく教えてくれる作品でした。

 

 

45位

「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」

実話から着想を得て作られたミステリー作品。これが物凄く骨太なミステリー作品で、オチが超有名な「オリエント急行殺人事件」のその先を描きつつ、作家や翻訳家の拘りと出版社の隔たりをテーマにしたメッセージ性まで備えた優秀な映画なんです。タイトルから小難しい感じがしますが、前半の密室サスペンス・ミステリーも、後半の怒涛の展開も楽しい娯楽作でした。

 

 

44位

ソニック・ザ・ムービー」

大人気ゲーム実写化作品。原作よりも幼く設定されたソニックが好奇心旺盛に縦横無尽に暴れまわるのがとにかく可愛く楽しい。「X-MEN」よろしく速さを利用したアクションやメタ的(?)なギャグセンスなど、現行のハリウッド娯楽作の良いところを取り揃えた本作は、誰でも楽しめる作品になっていると思う。特にジムキャリーソニック以上にキャラが立っていて(それで良いのか?w)最高。

ここまでは「名探偵ピカチュウ」と同じような評価だけど、実は本作はピカチュウと違って一見さんには取っ付きにくい部分もあるのかもしれない。ソニックってアメリカ人にとってはピカチュウと同格もしくはそれ以上に認知度があって、彼ら向けに本作は随所に原作ゲームネタが散りばめられており、それがどうしてもソニックにあまり馴染みのない日本人には難しいのかもしれないんですよね。見せ場やラストまでゲームを知っていないとピンとこないことになっているので、少しゲームを触れてみるとより楽しめるのかもしれません。

 

 

43位

ドラえもん のび太の新恐竜」

ドラえもん50周年の2020年の新作映画。本作のタイトルを観たとき、誰しもが「ドラえもん のび太の恐竜」を想起するはず。ドラえもん最初の長編作品にして、今でも語り継がれる名エピソードな「のび太の恐竜」を現代にリブートすることこそが本作の目的なんです。F先生らしいお話作りを意識して、爬虫類ではなく鳥類が恐竜の祖先だという学術的新説を盛り込んで現代で「のび太の恐竜」をやってみせる。それ自体は大きく成功だし、さらに今までのドラえもん映画では余り見られなかった過去エピソードの回収やタイムパラドックス的展開さえも付け加えてリブートするだけでなく新しいことにも挑戦している意欲作なのは間違いないんです。

しかし本作は、それこそ「のび太の恐竜」の面白さの骨組みでもあった部分を欠いている。それはドラえもんに縛りを与えていないこと。旧作ではタケコプターの燃料問題やどこでもドアによる冒険等が展開の骨組みになっていた一方で、本作ではドラえもんは基本的になんでも使えるし故障もしない。だから正直、どんなピンチでも”道具あるやん”と思ってしまう。これがかなり冒険的面白さを失わさせているのは残念でした。次回作は「宇宙小戦争」ということなので頑張ってもらいたいです!

 

 

 

42位

「わたしは金正男を殺してない」

2017年、マレーシアのクアラルンプール国際空港で起きた金正男暗殺事件。その実行犯として逮捕された2人の少女のドキュメンタリー映画作品。実際の映像や取材映像を使い事件を追いかけるドキュメンタリーと聞くと苦手意識を感じる人もいるかもしれませんが、本作は事件発生前に彼女たちが関わることになった経緯、事件発生時の状況、そして事件後の周囲の動きを丁寧に順序立てて構成されているのでかなり見やすくなっています。

さらに本作はただ事件を描くだけではなく、2020年の今、北朝鮮金正恩を世界がどう捉えているのか、そして何を忘れてはならないのかを、事件により世界のあらゆる存在がら利用され尽くした2人の少女の心境の変化と共に伝えてくれる。世界は油断してはいけない。グローバルな世界は華やかで美しいと思っていても、自分が足を踏み入れたことのない世界は、実は想像よりもずっと暗く不安定な場所なのかもしれないという問題提起は、今の世の中にこそ相応しく感じました。

 

 

41位

「悪人伝」

ヤクザと刑事が手を組んで連続殺人犯を追いかける衝撃の実話作品。本作を語る上で外せないのがマ・ドンソクの存在感。「新感染」「犯罪都市」に代表される彼の魅力的な部分を踏まえた本作は、暴力的だけど愛らしいという濃度の濃いマ・ドンソクが楽しめる作品になっております。

序盤、マ・ドンソク演じるヤクザ側のエピソードは「アウトレイジ」のようなテンポの良い暴力や裏切りを楽しめて、キム・ムヨル演じる刑事側のエピソードは許可を出さない上司とぶつかりながら真犯人を追いかけるサスペンスとしてまず楽しめ、さらに観客はこの2人がタッグを組むことに対するワクワク感を限界まで高められるわけです。そこの臨界点を突破した中盤から両者の物語がガッツリ絡み合うわけですが、本作では敵対していた両者はベタベタと単純な仲良しにはならないんですよね。真犯人を殺したいヤクザと逮捕したい刑事が時には協力し、時には裏切る。この攻防の末に行き着く、全員が満足するラストはまさに絶頂。どうしても暗いイメージのあるヤクザ映画、犯罪映画をここまで娯楽作として昇華させた本作は、今後の韓国映画を変えてしまうのではないかとさえ思える作品でした。

 

40~31位 

 

 40位

「劇場」

 

山崎賢人主演、ヒロイン松岡茉優で描かれる恋愛映画。劇作家を目指す永田が出会ったのは、田舎から上京してきた専門学生の沙希ちゃん。話が合ったわけでも、共通点が合ったわけでもない2人があれよあれよと言う間に付き合うことになる。しかし永田を待ち受けるのは、才能を認められない鬱屈とした毎日だった。そして、この鬱屈した生活を沙希ちゃんにぶつけてしまう。相手にどう思われているんだろう、と考え出すと自分が嫌で嫌で仕方なくなるような、そんな気分を作品にしたような映画でした。

特に本作の松岡茉優の演技力は、彼女の様々な作品の中でも群を抜いている。クズ寸前の永田を迎い入れる笑顔が、時に優しく、時に切なく、そして時にはこちらに後悔を思わせるように見えてしまう。常に笑顔でいる彼女から様々な感情が溢れ出ており、その全てが松岡茉優の高い演技力ゆえの感動を生んでいるんです。正直、永田の感情の変化等をナレーションで済ましてしまう構成のせいで、永田は主人公なのに観客は感情を理解しようと前のめりになれない(オチからすれば納得の演出ではありますが)と言う問題点は感じましたが、相乗的に観客が沙希ちゃんの感情の変化を注目できるようになっているのも確かな、まさに松岡茉優の映画でした。

 

 

39位

「囚われた国家」

 異星人による侵略で敗戦国となったアメリカ。そこから9年後の世界が舞台の本作。まず本作の魅力は、荒廃するわけでも戦闘状態になっているわけでもなく、当たり前のような普段の生活に散りばめられた”違和感”が楽しいんです。朝起きて、出勤して、家に帰るその上空には小型ドローンが飛び交い、監視ゲートを潜り、海上には意図不明なロボットが並んでいたり…。少しの違和感が異常に気持ちが悪く楽しい。

そしてもう1つの魅力が、敗戦国アメリカという世界観。自由の国、世界のリーダーとして君臨してきたアメリカは、敗戦国となっても尊厳を失わないように踠いている。その有様が滑稽にさえ見えてくる。特に皮肉たっぷりに描かれる”リパブリック讃歌”のシーンは最高に面白い。ラストはまさかの方向に突き進む展開も楽しめる、硬派な娯楽SF作品でした。

 

 

38位

「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

アニメシリーズが話題となったヴァイオレットエヴァーガーデンの映画化作品。本作はアニメシリーズで成長しきったヴァイオレットちゃんのその後を描くため、アニメシリーズの視聴は必須。

まずこのシリーズの魅力は、何と言っても絵の綺麗さ。アニメには詳しくない私でもわかるほど細部まで作り込まれた描写の数々のおかげで、まるで実写作品のようにヴァイオレットちゃんの気持ちに共感することができるようになっていると思うんです。そしてその感情が遂に最高潮にまで高まるラストシークエンスは、正に落涙必至。閾値に達した感情が溢れ出して、止め処ない感動を生んでいました。

しかし本作は、感情を汲み取ることができるようになったヴァイオレットちゃんのエピローグ的お話なので、正直アニメシリーズの終盤のような”シリーズ全体を占める”ための物語になっているのは好みが分かれる点だったと思います。私は「ヴァイオレットエヴァーガーデン -外伝-」の方が長編作品としては好みではありましたが、ヴァイオレットエヴァーガーデンという大きなシリーズの集大成として、最後にはファンが見たかった部分を徹底的に詰め込んでいるのでシリーズファンは必見の作品でした。

 

 

37位

「ジョン・デロリアン

BTTFで有名なデロリアンがどのように誕生し、どのように話題になり、そして散っていったのかを描く作品。主人公はFBIの情報提供者として雇われることとなったジム。そんな彼と友人となるのが、ジョン・デロリアン。大金持ちで気が強く、周囲の目を気にするジョンと、人生崖っぷちのジムは騙し騙されの攻防を続けながらも友情を深めていく。本作の魅力は、この敵対するような者同士が大人の友情を持った関係性になっていくところ。大人らしくかっこいい両者が最後にどう考え、そして辿り着くラストは両名はもちろん、デロリアンという車にさえ敬意を払う最高の名シーンでした。

 

 

36位

「薬の神じゃない!」

中国で興行収入500億円を記録したメガヒット作品。金が欲しいだけの男が、インドから薬を密売して大儲けする前半部分。ここまでは「ウルフオブウォール・ストリート」のような成金ものなのかなと思いつつ見ていると、中盤からお話は別ジャンルに突き進み始める。薬を売買することで本当に苦しんでいる人々を目の当たりにしていく。その過程で、主人公は金儲けではなく”やらなければならないこと”に目覚めていくんです。このお話の展開がアツ過ぎるのに加えて、本作に登場するキャラクターはどれも個性抜群。ドラマ化さえいけるのではないかと思えるぐらいにキャラクター同士が会話するシーンが楽しく、娯楽作としても満点クオリティとなっています。

そしてこの映画の重要なところは、この話が実話であること。中国政府の眼を掻い潜り、薬を密売して中国の製薬事情を変えさせた。そんな”時には国や政府に争ってでも、正義を全うしなければならない”というメッセージを中国の映画で作り上げられた奇跡。本作はギリギリまで公開出来るか否かを争っていたそうで、この映画を通して中国で映画を作る映画人たちの熱意が感じられる作品でもありました。

 

 

35位

「タイトル、拒絶」

「全裸監督」の脚本も勤めた山田佳奈監督作品。デリヘル嬢を取り巻く環境がメインのお話なんですけど、これって誰しもが当てはまる感覚だと思うんです。デリヘルじゃなくても、サラリーマンでも専業主婦でも、大人って皆どこかに闇を抱えていて、それを見せないように必死にシラフを装って生きてる。自分を肯定していないと溢れ出してしまう負の連鎖を食い止めようと必死に、自分をすり減らして自らを肯定していると思うんです。そんな言葉にすらするのが難しい苦い内心をこれでもかと描き、最後にはまさに”爆発”させる力作でした。

 

 

34位

「狂武蔵」

400vs1という決闘を描く坂口拓主演の時代劇アクション映画。制作期間9年、77分ワンカット、実際には588人切り、指の骨や肋骨の骨折……。この”とんでもない逸話”を実際に見せられることこそが本作の魅力であり、坂口拓という1人の漢のアクションへの拘りをある意味ドキュメンタリーのように描き出す作品なんです。子供の頃に窓を見て「今テロリストが入ってきたらこうやって…。」と妄想していたあの頃の自分の夢が叶ったような至高の77分を浴びるように楽しめる。

本作は77分ワンカットを撮影後に一度、坂口拓は引退してしまっているんです。本編の最初と最後にくっ付いてる映像は撮影から9年後の今、再撮影したものなんですが、ここのアクションシーンの見せ方と77分ワンカットアクションの見せ方がとてつもなく対照的で、これこそが坂口拓という人間の生き様を表すようなアクションになっているんです。”坂口拓”という漢のドキュメンタリーを是非見てみてください。 

 

 

33位

「異端の鳥」

発禁の書となった原作が半世紀の時を経て映画化された作品。時代、言語、舞台さえあやふやにしてまで描かれるのは、人間の持つ醜悪な部分。少年は”異端”であるものを排除しようとする動物的本能むき出しの、虐待、信仰、嫉妬、性欲、暴力、復讐と様々な地獄を体験していく。そしてそんな体験をした少年の目には、もはや当初の希望すら映らなくなるという悲劇。

上映時間169分という長い長い地獄巡りを映画館で体感することで、周囲の観客との謎の一体感すら生まれる作品でした。絶対に映画館で観なければならない、最悪の地獄巡りは私たち観客に痛烈なメッセージを突きつけてきます。

 

 

32位

「テルアビブ・オン・ファイア」

「テルアビブオンファイア」というメロドラマの制作現場で働くパレスチナ人青年を描くコメディ作品。構造としては脚本を巡るドタバタコメディなんですが、そこに今のパレスチナイスラエルの問題を当てはめるという、本作のウィットに富んだ物語の運びがまず面白いんです。民族や宗教観、そして食べ物にもその対立が広まっていることを逆手に取り、笑いに昇華して皮肉る巧みさが本作には溢れている。社会情勢など今でも難しい問題が山積みな両国のことを、鑑賞中はそこまで考えずに笑って楽しむことが出来て、そして鑑賞後には良い方向に両国が進むにはどうしたらいいのかをつい考えてしまえる作品になっている。まさに苦肉の策としか言えないラスト、そしてそこからのエンドロールまで大爆笑必至な作品ですので、是非難しそうという印象を持たずに多くの人に見て欲しい映画でした。

 

 

31位

「フェアウェル」

 中国とアメリカの文化を描くA24の新作。主人公である中国系アメリカ人の女の子は、中国に住むお婆ちゃんの余命がわずかということを知り会いに行くところから始まる本作ですが、この映画の特筆すべき点は中国とアメリカの文化、価値観の違いなんです。余命僅かのお婆ちゃんに余命宣告をするべきと考える主人公のアメリカ的価値観と余命宣告をすべきではないと考える親戚一同の中国的価値観のギャップから生まれる葛藤。死に対する考え方の違いで苦悩する主人公は親戚やお婆ちゃんとの交流を通して、彼らも同じように家族を慈しむ気持ちがあってこその発想なんだと気づいていく。そんな彼女が、最後に起こす行動はまさしく”郷に入っては郷に従え”。自分の価値観を押し付けるんではなくて、お婆ちゃんを構成する価値観を尊重することこそ、自分が出来るお婆ちゃんへの恩返しなんだと感じられる良いラストでした。

本作では中国とアメリカの価値観の違いを描いていますが、そこに日本という要素が組み込まれているんですよね。日本人にとってこの映画は、中国の家族的価値観に共感しつつアメリカ的な個人主義の考え方にも共感できると思うんです。この日本という要素があることで、本作はただの文化のギャップを描く作品ではなく文化のギャップを肯定する作品になっているんだと感じました。

 

 

 

 

30~21位

 

30位

「フォード vs フェラーリ

1966年のル・マン24時間レースを描く実話作品。レース優勝常連のフェラーリ社から王座をもぎ取るフォード社の話でもあり、フォード幹部陣vsマイルズ&シェルビーの話でもある本作。絶対に勝てない勝負に勝つため、マイルズとシェルビーが実力で相手に認めされていく展開が最高に胸熱なんですよね。病気で第一線から退いた者と芽が出ずもがく者、負け組の2人が”見栄を張る”ために努力・友情・勝利を重ね成り上がっていく。負け犬として抑圧され続けた中訪れる中盤、メインテーマにのせてまさにフルスロットルでボルテージが上がっていく展開は、立ち上がってガッツポーズをしたくなるほど見事でした。

上映時間2時間33分と少し長いのは気になりましたが、特にIMAXの大音響で見るべき作品でした。

 

 

29位

「パラサイト 半地下の家族」

カンヌ国際映画祭パルムドールアカデミー賞で作品賞等を受賞するという偉業だらけの傑作韓国映画。圧倒的なクオリティで社会の貧困を皮肉る大傑作なのは言うまでもありません。貧乏家族が少しずつ成り上がっていく前半部分がまず楽しく、そして中盤のあるポイントから”臭い”という新たな視点での貧乏を描写していく。本作は貧乏が持つ根本的な、もはや変えようのない原因をこれでもかと描き続けているんです。どれだけ言葉遣いを徹底しても、綺麗な服装を着ても根源的な貧乏は透けて見えてしまう。誰もが人生で何度も経験してきたであろう、貧乏と金持ちの”差”を痛感させられる。

ラストの、仕方がないの一言で片付けるしかないような、無計画な集大成のような展開は貧乏にしかわからないエモーショナル。これを肯定的に見てしまうか否定的に見るかで世の中の線引きが如実に現れるに違いありません。クオリティ面において今年イチの大傑作でした。

 

 

28位

「はちどり」

1994年の韓国に住む14歳の少女の物語。14歳という不安定な年齢の彼女に家族、友人、恋人、先生がどう映っているのかが描かれる作品であり、そこに1994年の韓国が抱える家父長制の社会情勢が重なり合わあれる作品でもある本作。この映画の最も特徴的な部分は、余白の使い方。例えばある事故を知った家族の中で、兄だけが突如泣き出すシーン。兄は兄妹思いとは相反するような性格として描かれていたにも関わらず、家族のピンチに1番に涙するんです。しかしそこから、兄や父といった男性陣を悪役として描くのではなく、彼らもこの時代を必死に生きようと踠いているんだと思考を巡らせてしまう。この映画は、そんな余白を巧みに使った、観客を信じている作品なんです。

そんな思考促される本作でメンターとして登場するのが、塾の先生。彼女のひとつひとつの発言が思考を促し、僕ら観客の人生をふと振り返り考えさせてくれる。彼女の放つ言葉は、押し付けがましくなく人生を豊かにしてくれる。そんな本作を見た後、世界がどこか少し優しく見えるような作品でした。

  

  

27位

「超擬態人間」

「狂視」で話題になった藤井秀剛監督最新作。ホラー苦手な自分からすればかなりキツイレベルのグロさとホラー演出が楽しめる作品であり、きっとホラー好きな人からするとあるあるネタのように散りばめられた演出にニヤリとするんじゃないかと思えるほど、近年では珍しくしっかりとホラーをやっている作品でした。冒頭から描写されるサイケデリックな演出の数々に最初は拒絶反応すら覚えましたが、次第にその演出の虜になり最後にはおかわりが欲しくなるほど楽しめてしまう、藤井監督独特の演出がキマリまくりなのもかなり良かったです。

さらに「狂視」同様、表層的なホラーというジャンルに擬態した本当のテーマが浮き彫りになっていく中盤以降からは、怖いけどこの演出、描写を目に焼き付けたいという不思議な感覚にすらなってしまいました。ホラー苦手な僕でも楽しめた本作は、是非色んな方々の目に届いて欲しいなと思える作品でした。

 

 

26位

「シカゴ7裁判」

1968年のシカゴが舞台のNetflixがおくる裁判映画。裁判モノというと難しそうなイメージだったりで嫌厭する方もいるかもしれませんが、本作はそこまで難解な作品ではなくエンタメとして面白いのがかなり特徴的だと思います。もちろん用語や当時の社会情勢についてのセリフが横行するんですが、セリフの意味を深く理解せずともキャラクターたちの立場や考えがちゃんと伝わってくる作りになっており、さらに本質的にはバラバラな考え方だった7人が同じ目標のために団結して圧制だった裁判を逆転していく、という単純明快な骨組みがしっかりあるため軽い気持ちで見られる映画でした。特にラストでは、裁判の構造や法廷のルールを理解していなくても本編を見てきた誰もが納得せざるおえない解決が待っているので、気持ちの良い爽快感を感じられること間違いなし。

 

 

25位

ランボー ラストブラッド」

シルベスタースタローンの代表作「ランボー」シリーズ最新作。同じく代表作である「ロッキー」同様に本シリーズも、力を持つ者と持たざる者についての物語であるが、ランボーシリーズは力、暴力の持つ負の側面を描く。戦場という暴力で傷ついたランボーが、自らの抑えきれない怒りをブチまけ、そしてまた自分に絶望する。この負の連鎖こそランボーシリーズ。

そしてそんな負の連鎖が頂点にまで達したのが前作「ランボー 最後の戦場」だと思うんです。暴力の非情さをこれでもかと描いた前作から10年以上。本作が描くのは、ランボーにとっての幸せと復讐。戦場と切っても切り離せない関係になっていたランボーが実家に帰り、束の間の幸せを掴み取ろうとしている。なんとか他人と交流し、家族同然の関係を大切にし、怒りを地中へ埋めてきたランボー。そこまでして手に入れた幸せが、一瞬で弾けてしまう。彼は生き続ける限り、この連鎖から逃れられないのかもしれないとさえ思える絶望と、それをやはり怒りとしてぶつけてしまうラストバトルはまさにシリーズの白眉。

 

 

24位

「TENET テネット」

映画業界でも今、第一線を走る大人気監督クリストファーノーラン監督最新作。私にとってノーラン作品って二通りの印象があるんですよね。「インターステラー」や「インセプション」のようなトンデモSF作品と、「メメント」「ダンケルク」のような映画の時間を操る一発屋的作品の印象があって、私は特に後者の映画群がノーラン作品の中でも好きなんです。そして本作はノーランがついに、これまで相見えることのなかったこの二つの要素を組み合わせた”絶妙”なバランスの作品だったと思います。

上映後には様々な媒体で難しい考察や科学的考証が溢れかえった本作ですが、”何かわかりそうでわからない”ラインを崩すことなく鑑賞するのがベストなんじゃないかとすら思えるほど、ノーランがやりたいことをやれている作品でかなり好印象でした。

 

 

23位

「ストーリー・オブ・マイライフ 私の若草物語

大ベストセラー、若草物語のリメイク作品。本作で特筆すべきはやっぱりその構成。1949年版は前半が子供期、後半が大人期になっていたのに比べて、本作は子供期の思い出と大人期の出来事が対になって交互に描かれていきます。この構成によって、大人期に起こっている出来事と子供期の憧れの剥離を如実に表せていると思うんです。誰しもがなりたい大人像があって、でもそれとの剥離に悩む。そんな”過程”と”結果”を交互に見せることで本作は4姉妹それぞれの生き方を肯定していくんです。”結果”がうまくいかないかもしれないけど、それでも姉妹で暮らしたあの頃、夢を追いかけたあの日々の”過程”はあんなにも素晴らしかったじゃないか!人生は結果よりも、その過程こそ大事なんですよ。ジョーが最後にどうなったのか、について本作では言及されません。されないからこそ、”結果”がないからこそ”過程”を重んじよう。そう思えるような作品でした。

 

 

 

22位

「1917 命をかけた伝令」

前編ワンカットで描かれる戦争映画。ワンカットといっても「ハードコア ヘンリー」のような臨場感ではないのが特徴だと思うんです。戦場をワンカットで描くことでシーンの繋がりが限りなく地続きとなった本作は、まるで1917年という時代を切り取った1枚の絵からストーリーを掻き立てる絵画のような作品にさえ見えてくるんですよね。あらゆる演出が緻密に縫い合わされ、完全に管理されることで生まれる人工物のようなこの世界観だからこそ生まれる、ラストのエモーショナルな疾走は言葉にするのも難しいほど圧倒的な”映画体験”でした。

絵画のようであり、それでもってそこから生まれる新しい映画体験はIMAXをはじめとする大スクリーンでしか体感できない貴重な体験で、人生で忘れがたい経験になったことは間違いありません。

 

 

21位

「スパイの妻 劇場版」

2020年にNHKで放映されたドラマシリーズを劇場用に再編成した映画作品。序盤はタイトルの”スパイ”の言葉に引きずられて夫が実はスパイなのか!?とスリラーとして鑑賞していると、中盤のあるポイントでグッと映画の方向が定まるんです。その瞬間、ドラマ的なシーンの羅列だったのが突如映画的な一本道になってしまう。ドラマシリーズが基だが、それを映画にする上で重要な点をしっかり見据えたこの構成力がまずお見事。

この映画はスリラーと思わせておいて実は純愛ものなんです。スパイと罵られることになろうとも正義を貫こうとする夫と、愛を貫くためにそれを支える妻のお話。そんな2人が近づいては遠くなり、また近づいては遠くなりを繰り返すのち、遂に開戦したことでお互いが究極に遠い存在になってしまう。日本全土が戦争と言う時代に絶望する中、蒼井優演じる妻だけは夫がなし得た事を実感していく。戦争が続くほどに、彼女は夫との愛を感じる。だからこそラスト、全ての夫との関わりが無くなってしまい涙するシーンは異常な求心力を持って描かれており、素晴らしい映画的な最後だったと感じました。

言葉で説明するのが難しい、映画の魅力がたっぷりと詰まった傑作邦画でした。

 

 

 

 

 

20~11位

 

20位

「生きちゃった」

映画の原点回帰をコンセプトとした「B2B A Love Supreme」の一環で作られた映画作品。文化的に感情を表に出さない現代の日本人が抱える鬱屈とした不安や悲哀を、夫婦生活の破綻という物語で描いていくんですが、本作はまさしく日本人のための映画なんです。劇中、主人公のアツヒサの身には本当に山あり谷あり様々なことが起こるんですが、彼はそれに声を上げられないんですよね。常に絶望を前提とした人生になってしまっていて、そこから抜け出そうという考えにすらたどり着けない。そんなアツヒサ、そして僕ら日本人が”本当の気持ちをぶつける大切さ”を学ぶ物語。わかりにくい部分や気になる部分も確かにあります。しかし、絶望というフラストレーションが溜まりに溜まった最後に描かれる、この映画が持つ原石のようなパワフルなメッセージはきっと、日本人を浄化してくれるんじゃないでしょうか。

 

 

 

 

19位

「アルプススタンドのはしの方」

兵庫県東播磨高校演劇部の演劇が原作の映画化作品。高校の青春といえば高校野球。暑い太陽の下でマウンドに立ち、お互いの青春をぶつけ合う。この映画は、そんなスタンドの端の方にいる生徒にスポットを当てた青春映画なんです。端っこの方で、野球のルールも知らない女子高生が野球を見ている。そんなワンシチュエーションで、彼女たちは高校野球を通して成長していくんです。最初は興味すらなかった野球が、次第に心境を変化させていき、最後には「がんばれー!」と叫んで応援する。「しょうがない」で済まそうとしていた彼女の青春が、息を吹き返して復活していく瞬間を目の当たりにするこのシーンは、思わず涙してしまいました。何かに挑戦する事をすっかりやめてしまった僕達が、スクリーンから応援されたような気持ちになれる最高に爽快な映画でした。

 

 

18位

「Mank/マンク」

デヴィッドフィンチャー6年ぶりの最新作。「市民ケーン」の脚本家ハーマン・J・マンキウィッツを描く本作は、もちろん「市民ケーン」の視聴は必須でした。”優雅に見えるが異常に規律の効いた”世界だったハリウッドと、そこからの脱却を目指したマンクの物語である本作を通して、愛への羨望を描いた「市民ケーン」は自由への渇望から生まれたと知ることになるんです。それは映画全体が完全に調和のとれた雰囲気を持つフィンチャー独特の作劇とも重なり、映画全体がハリウッドを体現しているような異様な完成度の作品になっていると思うんです。

今だからこそ、映画を作るということの意義を再定義する本作は、映画が好きなすべての人へ”映画の魔法”をかけてしまう不思議な作品でした。これがネトフリで配信されるというのも、また意味深いですね。

 

 

17位

「燃ゆる女の肖像」

カンヌ映画祭脚本&クィア・パルム賞を受賞し、大絶賛の嵐になっている作品。画家である主人公がある令嬢の肖像画を、素性を隠して描くことを依頼される。そこで画家は令嬢と生活を共にしながら密かに耳の形やうなじなど、絵を描くために必要な観察を行っていく。この行為こそが、人を愛する感情の発端なんですよね。顔が良いとか性格が良いとかそんな理屈的なものではなく、その人の一挙一動が気になり始める瞬間こそ、恋であり愛。2人の表情、仕草、言葉に隠れた感情が少しずつ同調していくまさに愛の過程を、2時間弱の作品でこれでもかというほどの感覚的映像体験で見せつけられてしまう。一瞬一瞬が惹き込まれるような、どう表現すれば良いのかわからない高クオリティである本作は、明らかにLGBTQや男女差別のような諸問題をも完全に飛び越えて究極の”愛”が描かれる大傑作でした。

 

 

16位

「カセットテープ・ダイアリーズ」

ブルーススプリングスティーンに影響された1人の若者の人生を描く作品。この映画はブルーススプリングスティーン本人の伝記映画ではなく、そして主人公の少年が音楽をやっているわけでもないんです。さらに1987年が舞台なので主人公はブルーススプリングスティーンど直球世代でもない。しかしこの映画がなぜそこまで評価されているのかのミソは、そこになるんです。ブルーススプリングスティーンとは遠いところにいた若者が主人公である本作は、音楽が持つ原始的な力、それこそ人の人生すら変えてしまう力を描いていているんです。音楽が好きとか、流行っているとか、そんなとっかかりすら無くても音楽は素直に人の心に響き、変える力を持っている。それは同じくブルーススプリングスティーンに馴染みのない現代の若者にも強く響く。

悲しい時に聴く曲、嬉しい時に聴く曲、勇気をもらいたい時に聴く曲。自分たちはこれまでもこれからも音楽に共感し、励まされ、感情を分かち合ってきたんだ、と気づくことが出来る最高の青春映画でした。

 

 

15位

「音楽」

 7年の歳月をかけて作られたアニメーション映画。まず本作の主要登場人物である3人の男子高校生が全員魅力的なんですよね。漢気と愛嬌があるのに体温の感じない話し方、垣間見える3人の友情等独特の魅力に溢れていて、この3人を見ているだけでまずは楽しくなっちゃいます。

この映画のポスターを見てもわかるように、本作は昨今のアニメ映画と比べてかなり絵がデフォルメされており、表情の変化で感情を読み取らせない作りになっているんです。しかしそんな余白のような隙間のあるからこそ本作は、誰もが内に秘めたる突飛な原動力、無限の想像力を掻き立てる映画なんです。音楽を始める高校生たちの突然の思いつきが少しずつ形となって、ひとつの完成を迎える。何かを作り出す快感の原点のようなパワフルな作品でした。

 

 

14位

「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」

口コミで話題になったアメリカ発の青春映画。冒頭、上手くもないロボットダンスから始まる最高のコメディ作品なんですが、本作の特徴は”個性”がテーマであり骨組みになっていること。LGBTQや男女の差別という問題が、まるでもう存在しない世界に迷い込んだかと思うほど当たり前のように主人公はレズビアンだし、それを当たり前のように親友は知っているし、トイレは男女共用だし…とあらゆる要素が”当たり前”のように存在しているんです。そんな本作で登場するキャラクターは誰もが個性抜群であり、そしてそんな個性豊かなキャラクターたちを一発屋のように登場させるのではなく、それぞれが血の通った人間として描かれることで、本作は全て”個性”の多様性を肯定する映画になっているんです。ダンスが下手でも好きなら踊れば良いし、自分の好きなファッションを楽しめば良いし、好きな人が男でも女でも構わない。そしてそんな世界で2人は自分の人生の送り方さえも好きにすれば良いじゃない!って事を学んでいく。

偏見や多様性がパッと消えたなら、とそんな世の中が楽しみになるような、現代に作られるべき青春娯楽作品でした。

 

 

13位

「'96」

2019年のインディアンムービーウィークで上映された作品。同窓会で再会した初恋の人が、既に結婚していたというところから始まる切なすぎるラブストーリー。主人公であるラーム、そしてヒロインであるジャーヌの視点から当時の思い出を振り返ることでなぜ両思いだった2人がすれ違い、結ばれなかったのかが描かれていくんですが、そこに本作では”もしあの時こうしていたら”という第3の視点が加わるんです。もう絶対に結ばれてはいけない男女が、妄想のような視点でのみ自分たちの夢を実現しようとする。そしてたった一夜、それも手を繋ぐことすら許されない2人がただ夜道を散歩をする後半では、口にも行動にも表していないお互いの”思い”が静かに儚くシンクロしていく最高の名場面。美しくも儚い、ビターなラブストーリーでした。

 

 

12位

「喜劇 愛妻物語」

水川あさみ濱田岳セックスレスの夫婦を演じた家族映画。この映画は何と言っても水川あさみのケツの映画です。濱田岳演じるダメ夫は奥さんのケツをいやらしく見つめる視点や、不恰好なデカパンでセクシーさのカケラもない描写など、とにかくケツでこの映画は夫婦を語ってしまう。女性のお尻をケツと思えるようになることが、夫婦になることなのかもしれない。

そんな一風変わった本作のラストは、言葉にするのも難しいほど強烈に”夫婦”を描くんです。泣きながら笑い、笑いながら泣く。もう感情もグチャグチャなんだけどどこかど直球な、これぞ”夫婦”だ!としか言えないパワフルなラストシーンは、今年ベスト級でした。

 

 

11位

「ナイブズ・アウト」

ダニエルクレイグ主演の探偵物。往年のミステリー映画を思わせる豪華絢爛なセットや俳優陣に加え、本作ではミステリー、サスペンス、スリラーとジャンルを次々と変化させていくことでそれぞれの映画的な弱点をカバーしあい、既視感はあるのに見たことがないような古くて新しい映画作品になっているんです。しかもそこにアメリカの移民問題を重ね合わせることで、現代に作る意義さえ感じられる大傑作にもなっており、見事としか言いようがありません。ダニエルクレイグ演じる探偵のキャラクター的面白さもきっちり描けていたので、次回作、いやシリーズ化が待ち遠しいです。

 

 

 

 

 

 

ベスト10

 

 

10位

「映像研には手を出すな!」

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話題となった原作を、主要キャストに乃木坂46を迎え英勉監督がメガホンを撮った作品。正直、乃木坂も原作もアニメさえ知らずにこの映画を見に行ったんです。今週見たい映画ないしこれで良いか、、ぐらいの気持ちで。しかし今では漫画にアニメ版、そして乃木坂にもどハマりしてしまう始末。確かに原作を読んでからだと本作は原作の魅力とは違う方向に進んでいる部分があるのも事実なんですが、何より本作の魅力は主要3人のキャラクター。原作よりも誇張されたキャラクター性は、アニメから飛び出してきたような”現実なのにアニメらしい”見事なバランス感覚になっているんですよね。だから3人が出ているシーンは無条件に魅力的に見えちゃうし、乃木坂46に興味すら湧いてしまうほど。

正直、浜辺美波の取ってつけた感は残念極まりなかったですが、それを差し引いても昨今の漫画実写化映画で素直に”楽しい”作品に出会えたことが嬉しくてなりません。

 

 

 

9位

「佐々木、イン、マイマイン」

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佐々木!佐々木!と連呼するだけの予告が特徴的な作品。青春映画が豊作だった今年の中でも、最も挑戦的だった作品かもしれません。佐々木コールで服を脱ぎだすようなひょうきん者だった佐々木と共に過ごした学生時代と、大人になってからの鬱屈とした暮らしがリンクする。佐々木との思い出を思い返すことで少しずつ鼓舞されていく主人公のお話と、それと並行して佐々木がどういう生き方をしてきたのかが描かれることで本作は、「桐島、部活やめるってよ。」の空虚な中心だった桐島ともまた違う、存在感のある中心である佐々木に励まされる作品になっているんです。他人を元気付けてきた陽気な佐々木が、実は自分を元気づけることが下手だったこと、そしてそこから少しずつ前へ進もうとしていた佐々木の生き様。そんな全ての”佐々木”を感じとったからこそ生まれる、最後の映画の奇跡としか言いようのない出来事。パワフルで原始的な映画体験ができる傑作でした。

 

 

 

8位

「お気楽探偵アトレヤ」

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IMW(インディアンムービーウィーク)で上映された作品。推理を映画で勉強し、着メロは007といういかにもダメダメな迷探偵アトレヤが助手と繰り出す前半のドタバタコメディが素直に楽しく笑いながら鑑賞していると、いつのまにかとんでもない事件に巻き込まれていたと気づく中盤のあるポイントから痛烈なインドの社会風刺へと繋がる終盤まで見事な映画でした。”お気楽”と銘打ってはいますが、推理ものとしてしっかり構成されているので常に脳みそフル回転で楽しめる骨太な構造も魅力で、その分終盤のインドの宗教犯罪を批判する内容が活きてくるんですよね。実際の事件を基にしてまで、宗教大国であるインドだからこそ宗教が良い面だけでなく悪い面を持ち合わせているんだと声高に言うことの重要さを痛感できる。楽しく、鑑賞後も余韻を残す素晴らしい傑作でした。

   

 

 

7位

「バクラウ 地図から消された村」

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オバマ前大統領が選ぶ映画ベストに選出されたブラジルの映画作品。村の長の死、UFOの襲来、村人の惨殺、謎の来訪者…。これだけ怪しい要素てんこ盛りで歪な前半部分と、それを一気に解放することで前半とぴったり合ってしまう後半の見事な伏線回収はお見事。文字にするとジャンルすら意味不明なあらすじですが、この映画はまさしく西部劇なんですよね。英雄が町に訪れない西部劇。では誰が英雄で、最後にどんな結末が待っているのかはぜひ本編を観て驚いて欲しい限りです。

爽快感のある物語であり、しかもそこに”白人の侵略性”という歴史の闇を痛烈に批判する見事な脚本は後世に残る異端の作品でした。

全裸中年男性に燃えること間違いなし!

 

 

 

6位

「行き止まりの世界に生まれて」

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「mid90s」と同時期に公開されたスケボーに乗る若者を描くドキュメンタリー。この映画は主要人物である3人の若者のうちの1人が監督、制作、撮影をした作品なんです。カメラを通すことで友人が親からの虐待について言及したり、また自らの不安定さを吐露したりする。そんな彼らの両親やガールフレンドから見た自分たちについての意見が加わる。そしてさらに友人がしてしまった”ある事”について、3人の人生をバックに彼がどれほどの事をしてしまったのかについて話し合う。時に厳しく、時に優しく人生を支えてきた友情が切り取ったような、まるで奇跡のような作られ方をしたドキュメンタリー作品でした。

 

 

 

5位

「恋するけだもの」

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 白石晃士監督最新作。宇野祥平演じる女装をした(?)怪力野郎が田中俊介演じる訳ありなひ弱男に恋するというとんでもない物語なんです。独特なキャラクター、ネオンっぽいライティング、トゲのあるセリフ、出てくるだけで映画全体を転がしてしまうアイテムの数々…。全てが僕ら”一部の観客”へ向けた好きが連続する最高の娯楽映画。押して欲しいツボをずっと押し続けられる1時間半はまさに至高の映画体験になること間違いなし。苦手な人は心底苦手だろうけど、僕は観た後笑顔で劇場を出てくる観客一人一人に握手をして回りたくなるほど大好きな映画でした。

 

 

 

4位

「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」

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中国が作ったアニメ作品。ジブリを彷彿とさせるキャラクターの小さな仕草にまで拘ったアニメーションに、ピクサーを思わせる”(広義な意味での)行って帰ってくる”ストーリー。世界的トップクラスのアニメ制作の実情をしっかり理解し、リスペクトした本作はどこまでも愛おしい作品になっているんです。「結界師」のような世界観にトンデモな設定や能力が多数登場するしそれの由来なんて説明しないけど、この作品上でのルール設定をしっかり観客の頭に叩き込んでいるので違和感なくスムーズに世界観を楽しむことが出来、驚くほど見やすいのもこの映画の大きな長所だと思います。

飛び上りたくなるほど爽快なラスト含め、是非多くの方々に観て欲しい大傑作でした。

 

 

 

3位

ジョジョ・ラビット」

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マイティ・ソー」3作目の監督として有名となったタイカ・ワイティティ監督最新作。ヒトラーがイマジナリーフレンドの少年が主人公というとんでもない設定の本作が描くのは、子供時代の成長と愛。自分の思うがまま、自分の好きな事を話してくれていつも共感してくれる存在であるイマジナリーフレンドを持つ子供の心の中には、独裁国家があると思うんです。自分のしたいことが最優先、他人の考え方を受け入れることができない。そんな天真爛漫な子供時代の心境が作り出す独裁国家の象徴こそがアドルフヒトラーであり、ナチスドイツなんです。そんな少年の独裁国家を木っ端微塵にぶっ壊すのが”愛”。他人を受け入れるという心の芽生え、”愛”は最強なんです。

そしてジョジョ君は自分が成長の為に、残酷なまでに最良の友であったイマジナリーフレンドを一方的に突き放す。これこそが、子供時代からの脱却なんです。誰もが経験した子供時代からの成長を、コメディあり涙ありで見せつける大傑作でした。 

 

 

 

2位

「私をくいとめて」

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原作綿矢りさ×大九明子監督、のん主演でおくる最新作。「勝手にふるえてろ」が大好きな私はこのコンビってだけで劇場に駆けつける案件でした。30になって彼氏を作るどころか”おひとりさま”で色んなことを楽しめる主人公は、脳内にAという相談役がいる。ひと昔前なら結婚や趣味に偏見がありましたが、次第にそれが取っ払われてきて自由に生きられるようになってきた現代だからこその主人公なんですよね。1人で生きるのが大変じゃないからこそ、誰かと関わる面倒さに負けて1人に依存しちゃう。この1人で映画館に来ているような私たち全員が共感してしまう設定から、この映画は時に優しく、時に厳しく”アンサー”をくれるんです。コミカルな演出が多用されているのにどこかクドくなく、それでもって急にハッとさせられるような展開があり、「勝手にふるえてろ」同様ずっと見れてしまう映画でした。特に大滝詠一の「恋は天然色」が流れる飛行機でのシーンは、”水に溺れるような感覚”とそこから”救い出される感覚”が観客にも共有され、それがラストにまで活きているという特大級の名シーンでした。

好きだけど付き合いたくない。一歩踏み出したくないと思っている草食系な全ての若者に寄り添う優しい映画でした。

 

 

 

1位

「初恋」

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邦画が目立った今年、最も自分の好みにフィットした大傑作。ヤクザ映画にタランティーノを混ぜ込んだようなテンポ感と俗悪な雰囲気はまさに至高。かなり登場人物は多いですが、1人も無駄なくキャラクターは立っているから気持ちいいほど見やすいんですよね。そんな大好きが連続する展開の中、ラストにはしっかりとタイトルを回収することでただのヤクザ映画ではない清涼感すら感じるんだから本当に凄い。ここまで”好き”が連続する作品は、近年でもなかなか出会えない最高の映画体験でした。三池崇史監督、ありがとうございました。また10年生きられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

如何だったでしょうか。きっと”これがそんなに低いの!?”というような思いがあったとは思いますが、そこは好みの問題ですので悪しからず…。

2020年は鑑賞本数こそ少なかったんですが、去年と比較しても”好きな作品”が多くかなり接戦なランキングとなりました。正直、30位以降はずっとほぼ横並びでその日の気分で順位が変動するほどです。

2020年は配信という新たな映画上映方法が大きく普及した年となりました。それの是非はともかく、僕ら観客が映画を好きでいる気持ちを忘れないでいられるような上映方法が広まって欲しいと願うばかりです。2021年も、どうぞよろしくお願い致します。

長文失礼しました。