「ガンズ・アキンボ」感想 両手に縫い付けられた2丁拳銃から”楽しい"が撃ち込まれる大娯楽作!!!

「ガンズ・アキンボ」

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あらすじ

しがない会社員生活を送るマイルズの日課は、クソリプを送ることでストレスを発散すること。その日は最近話題の闇サイト「スキズム」にコメントを連投していたが、返信に自身のIPアドレスが届く。震え上がるマイルズの家に、明らかに招かれざる客が強引に押し入り、目が覚めると彼の両手には拳銃が縫い付けられていた…。

予告

youtu.be

 

 

 

 

 

制作側の”楽しい”

2丁の拳銃が手に縫い付けられた男がデスゲームに放り込まれる。もうこの設定から、作っている側が楽しんで作っているのが伝わって来るとんでもない設定ですよね。監督がインタビューで「アクションシーンには全ての特殊技術、スタント、カメラが必要だった。観客が楽しめるよう、その手の本に載っている技術を全て採用して噛み砕いてスクリーンに映し出したんだ!」とあるように、ありったけをぶち込んで観客を楽しませてやろうと企む監督の気持ちがスクリーンから溢れ出ているような作品なんです。多彩なカメラワーク劇中の刺激的なガンアクションシーン満載なんですが、中でも放たれた弾丸を支点にカメラがその弾丸の軌道でグルグル回りながら敵の眉間めがけて進むシーンがあるんですが、そういうカメラワークが数珠繋ぎ的に繰り返されるので観客は脳への刺激を純粋に楽しめるようになっている。

監督が楽しんでいるという点では、YouTubeに自主的に投稿していた”こんなことしてみたいな”という妄想を描いたアクション絵コンテが映画会社の目に止まり、本当にその絵コンテ通りに映画化してしまった「シューテムアップ(2007)」を連想するほどに”こんなものを作ってみたかったんだ!”という楽しさ満載なんです。

 

 

 

ニックス

そんな本作で、正直なところ主人公マイルズよりもキャラが立っているのがヒロイン(?)のニックス。殺し屋として登場する彼女は金髪で美形、スタイル抜群なのに清潔感のカケラも感じない様相にバッタバッタと人を殺すぐらい凶暴、しかしそれでも溢れ出てしまうキュートな部分がクールなんです。例えるなら「エージェントウルトラ(2016)」に出てきそうな脱力系美人な彼女のガンアクションは魅力たっぷりで、特にハートのサングラスをかけてミニガンをぶっ放すシーンは最高に可愛くてクールでバイオレンス。彼女のセリフも「金玉クラッシャーだ!」や「金曜夜の恋人だったのに!」、AA-12を前に女子的ときめきをしちゃうシーン……もう彼女が喋るたびに楽しいんです。

 

 

 

 

スマホ世代の”楽しい”

この映画は両手が銃になったマイルズのドタバタコメディと刺激的なバイオレンスシーンで構成されているんですが、98分という上映時間でそれらが全く中だるみしないんですよね。冒頭でマイルズが「久しぶりにスマホの画面を見ないで街を歩いてる。まるで仮想世界みたいだ。」と話すんですが、現代人のほとんどがスマホに依存していて、もはや外でスマホの画面を一度も見ないことなんてあり得ないと思うんです。SNSYouTubeなんかで”瞬間的な楽しさ”に慣れてしまった現代人にとって、映画という2時間前後で構成されるコンテンツを楽しむ許容が薄れてしまっているのも事実。つまり飽きやすいわけです。

しかし本作は映画として物語の起承転結を踏襲しつつ、そんなスマホ世代が楽しめるようにコミカルな演出、キャッチーなビジュアル、ノリノリな音楽にバイオレンスなアクションをこれでもかと投入することで瞬間的な楽しさをキープしている。そしてさらにSNSYouTubeの楽しさから一段階上の”キマってる”楽しさを提供している。この映画を見ていると、まるでお酒を呑んだ時、サウナで整った時、タバコを吸う時、エナジードリンクを飲んだ時……そんな日常とは違う少し飛んだ感覚になることができるんです。これこそSNSにはない、映画というコンテンツだからできる楽しさの1つだと思うんです。

 

 

最後に

ダニエルラドクリフ主演という話題性が一人歩きしている本作ですが、今は彼の当初のイメージよりも遥かに魅力的な作品選びをしていると思うんです。”ダニエルラドクリフが出ているから見に行こう”の定義がいつか”こういう最高の映画を見たいから”に変わるその日まで追いかけ応援したい、と思える最高の作品でした。最高のガンアクション、音楽、カメラワークをぜひ映画館で堪能してください。

 

パンフレットはゲームの説明書をモチーフにしたデザインで監督、出演陣のインタビューにキービジュアル満載な内容でした。