「去年の冬、きみと別れて」感想!!ネタバレあり

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※最初に
私は原作は未見です。このブログでは、ネタバレ全開なのでご注意ください。




騙される快感
サスペンスものって、見事に騙されれば騙されるほど気持ちいいのは私だけでしょうか…?w
本作は、主要人物は約6人と極端に少ないうえに、事件も1つの事件のみを軸に話が進むので良い意味で謎が大きくなり過ぎない。だから、その小さな謎たちが明らかになり、しかしそれがひっくり返る この連続が気持ちいい!!
話は中だるみせずにテンポ良く進んでいくので、グイグイ話に引き込まれる。
この映画、大きく分けて前、中盤の耶雲が主人公の話と終盤の謎解きがありますが、前、中盤の伏線を張るパートも、見ていて「え?なんで?」という展開はほとんどなく、その上小さなほころびのような疑問には終盤にしっかり答えてくれる。伏線を張るのが綺麗だから、見ていてどれが伏線かわからないんです。だから、終盤の推理パートでどんどんそれが伏線だとわかると何度も何度も驚くことができる。例えば、耶雲のキャラクターが彼女に極端に冷たく接することで序盤では「こんな奴にこんな可愛い彼女は出来ひんやろ」と思わせといて、終盤でしっかりその理由を回収。こういう、一見伏線には見えないほつれを作るのがうんまい!!だから素直に騙されて、気持ちいい!!




”恭介”という人間の使い分け
主人公が実は全体に罠を張っていた!という展開は、小説だからこそのトリックだと思う。顔が見えない小説というものだからこそ、主人公の表裏を描写できるんです。
そして、だからこそ本作は実写化不可能と言われていた(らしい)。
でも本作では、この主人公の表裏性を主人公のメガネを介して使い分けている。目で見て同一事物に見えるけど別人にも見える。メガネをかけているときは耶雲。外しているときは中園。この使い分けのおかげで、映像としても違和感なく表裏が描けている!




気になるトリック
かといって、全てが無条件に「騙された!」というわけでもないんですよね。特に2回目の焼死体は1回目と違い燃えて悶える描写がないために「あ、これは別人か、または人形とかなんだろうな」と思えてしまう。かなり大事なトリックの1つなので、ここはもううちょっと絵で見ても騙される工夫が欲しかった。
まぁ、それが誰だったのかを知って鳥肌全開になったんですけどねw





生き様
この映画の主人公耶雲は自らを”化け物”と言い、自分の狂気を表現しますが、耶雲は”こう生きるしかなかった”んですよね。恋人を奪われ、犯人は無罪放免になり、さらには真犯人と寝てしまう。復讐劇というには、あまりに切ない。自分がこの立場になったときを考えると、誰も耶雲を化け物とは呼べないのかもしれない…。

登場人物が二転三転していく感じは、スリービルボードにも通じるところがあるかも・・?





斎藤工の怪演
最後になりますが、本当に斎藤工という役者さん、凄いですよね…。この映画で1番、序盤と終盤で別人になるキャラクターを違和感なく演じ切ったのはさすが!!
序盤は斎藤工が出るたびに不穏になり、終盤は斎藤工が出るたびに復讐劇としては清々しい。この映画が、グイグイ話に陶酔できるのは斎藤工のおかげだと思う!!






「羊の木」につづいて、最近の邦画、めちゃくちゃ良い…!!是非、映画館であなたも”騙され”てください!!


(そういえば、あの主題歌は…どうなんだろうか…w)