「パシフィック・リム アップライジング」感想!!!血沸き肉躍るエンターテイメントの最新作!!

「パシフィックリム アップライジング」(IMAX3D字幕版)
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ついに!!ついにこの時が!!!誰もが熱く燃え上がった前作から5年。やっと、皆が夢見たロボアクション大作、待望の新作が公開!!!
いや、これはもう観に行くしかないでしょ!!観に行くのは義務だよ!!!

というテンションで、久しぶりにIMAXで観てきました。


※多少のネタバレを含みます。

前作の魅力
何がそこまで、”俺達”を熱くしたんでしょうか。私は、前作の細かすぎるギミックや、1つの行動をするのにも面倒すぎる動作過程を経ないといけないイェーガーの機動こそが魅力なんだと思うんです。いちいち、重々しい操作を要求され、しかもそれが2人で全く同じ操作をしないといけない。この面倒さがイイんですよ!!!

そんな”面倒さ”がもっとも輝いていたのが、冒頭の出撃シーンです。
ベケット兄弟が寝室から飛び起き、口喧嘩をしながらコックピットへ。そこでは何人ものスタッフがベケット兄弟に装備を着せ、コードを繋ぎ、脊椎にパーツを取り付ける。そしてベケット兄弟のヘルメットには液体が注入され、装備が完了すると足を接続する。
コックピット(イェーガー頭部)は急降下し、ボディまでたどり着くと一回転してボルトのように固定される。そして滑走路のような巨大な通路を何人ものスタッフによる誘導を頼りに通り抜け、ついに出撃!!!!

この流れですよ!!面倒くさっ!!!!(褒めてますよw)




本作の魅力
さてさて、そんな今までのハリウッド映画にはなかった魅力たっぷりだった前作と比べて、今作はどうだったのか。
まず、カイジュウやイェーガーの見た目は70点というところ。カイジュウは大分カッコイイんですよ。でも、イェーガーの造形が気になったんですよね…。前作は腕が3本だったり、ドラム缶みたいな見た目だったり、スリムだったりと主人公が乗るジプシー以外のイェーガーも多種多様だったのに対して、今作のイェーガーは前作と似ているorカラーが違うだけで形がほぼ同じ、なんです。もっと色んなことが出来そうなイェーガーたちの見た目を、こんなにも工夫していないのにはガッカリしました…。

とはいえ、熱くなるシーンももちろん健在でした。
イェーガーの1機で、ヒロインであるアマーラが搭乗するブレーサー・フェニックスは戦闘で棘付きのチェーンハンマー(モーニングスター)を装備しているほか、腰部にバルカン砲が装備されている。このバルカン砲が最高に良いんです!!カイジュウに向けて発射される、巨大な銃弾。そして排出され落下する巨大な薬莢。カイジュウが背後に回り込むと、腹部から背部に回転する。…最高やんけ!!!!
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かるた選手からイェーガーのパイロットになった新田真剣佑が乗るセイバー・アテナは、最速の機動力を誇りカイジュウを寄せ付けない、イェーガーとは思えない軽快で素早い攻撃ができる。さらに2本の剣は組み合わせることで1本の大剣としても使用可能!!
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ガーディアン・ブラーボのムチはそこまで燃えなかったので、割愛します…w

そして主人公ジェイクが乗るイェーガー、ジプシー・アベンジャー!!!
前作同様、近距離戦に特化した多彩な武器を装備しており、ガンガンカイジュウに突っ込み、敵を圧倒する。新たに装備された重力を操る武器はわざわざビル群を破壊して攻撃するから正直どうかと思うけど、エルボーロケットやプラズマロケットのような前作ジプシーを踏まえた、けど最新機でどのイェーガーより多種多様で機動力もあるアベンジャーの戦闘は見ごたえあり!!
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何がそこまで評価を分けているのか。
本作は、びっくりするぐらい評価がパックリ割れているんですよね。というかこの映画、ロボが好きな人は擁護したくなるけど、前作が好きな人は嫌悪感を抱いてしまうような映画なんです。
では、何が本作の評価を下げているのか。ここからは私個人が気になった部分を上げていきます。


人数感
前作では冒頭の出撃シーンでもわかるように、搭乗するパイロット以外にも、何十人何百人の尽力があってやっと動き戦えたイェーガー。なのに本作では「行ってきます!」→即搭乗。しかもそれを見守る仲間たちも前作よりかなり人数がこじんまりとしているため、”人類みんなで頑張ってる”感がないんですよね。それに、PPDCは前作よりもっと軍備が増しているはずなのに、なぜか中国の本拠地を破壊された後ではイェーガーがほとんどない事態に。なんでイェーガー、本拠地にしかなかったの??もっと各拠点に置いとこうよ…これも、完全に後半では中国の本拠地以外の拠点を忘れてしまっているんだと思うんです。どんどん話がこじんまりしていく。



軽い
個人的には、前作の重力感あふれるアクションは大好物ですが、本作の軽快なアクションもギリ”アリ”なんです。気になったのは、アクション部分でもそうですが出撃シーンでもなんでも、もっと動作の過程を増やしてくれよ!!
というところです。何もかもがササっと動いてしまうので、イェーガーに搭乗するのが、もう車に乗るような感じになってしまっているんですよね。これじゃあどう頑張っても前作の魅力は引き出せないよ…。



キャラクターたち
前作以上に登場シーンが多い、主人公とヒロイン以外のキャラクターたち。訓練生たちはみんなバラバラで、誰が見ても最後に共に戦うやつらなんだろうな、と思わされる。逆に言うと、だからこそ彼らの区別はつけようと観客は努力するんです。「こいつはこういう性格ね」とか「こいつはこういう特技があるのね」とか。
でも本作は、前作よりも長々と搭乗者たちのエピソードを描くのに、全く訓練生のキャラが立ってない。でもこれ、必然だと思うんです。前作は、例えば重量級イェーガーであるチェルノ・アルファに乗る2人は気が強そうだが仲がよさそうなロシア夫婦だったり、手が3本ありカンフーのような動きの出来るクリムゾン・タイフーンは武骨そうな中国人3人兄弟だったりと、国別、そしてイェーガーの特徴を踏まえた人選だったから短い時間でキャラクターたちが立っていた。
しかし本作のキャラクターたちは、先に訓練生として頑張るシーンを描いた後でイェーガーに登場する。イェーガーと訓練生たちに関連性がないんです(ブレーサーはまだマシですが…)。これって、例えば最速のイェーガーに乗る真剣佑(リョウイチ)は普段から訓練の徒競走が速いみたいな特徴を付けることなんていくらでもできたと思う。訓練生たちが立ち上がり、最終決戦のために初めて実戦に向かう。なんてバカでも燃え上がるような展開なのに、キャラクターが立っていないから全然盛り上がらない!!だって、最終決戦なのにまだ誰がどんな奴なのかどころか顔の区別もまだついていないんだから。しかもヘルメットを被ることで髪型という特徴は遮断されてしまい、さらに前作ではそれぞれのイェーガーにカラーがあったのに対して本作ではジプシー以外のイェーガーに搭乗するためのスーツは色が同じという、最早キャラクター分けなんてする気も起きなくなるような演出なんだもの…。
(正直、2日前に観たばかりだけどもう最終決戦でどのイェーガーに乗っていたのか、何人かは覚えていない…)
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日本愛
前作は、日本への愛が詰まった映画だったと思うんです。何より敵モンスターを”カイジュウ”と呼称するぐらいですから。短時間ですが登場する日本のシーンは、ちゃんと日本の特徴を掴んでいましたし!!
それに比べ、本作はびっくりするぐらい日本の描写がゆるゆる。まず富士山と東京の距離感がおかしい。それどころか、中国と日本の距離感もおかしいんですよ…。最終決戦時、イェーガーたちは手製のロケットで出撃するんです。これは、カイジュウたちがもう富士山にたどり着きそうでヘリでの輸送じゃあ間に合わないから急遽行うことになった理論でしかまだ可能でなかった計画。なのに、最終決戦ではスクラッパーが助けにくるんですよ。シャオ産業で改修されたとしても、中国から日本までイェーガーたちはロケットブースターで着たのに、スクラッパーはどうやって辿り着いたの???
さらに、最終決戦では昼間の日本で戦闘を行いますが、この日本が違和感しかない!!東京のビル群なのに繁華街みたいに店の看板が無造作に並んでいたり、ビル群が東京というよりはニューヨークっぽかったり、街中に謎の提灯ホログラムがあったり。ブレードランナーを観てその後、ちょっとだけ日本の写真を何枚か見ただけとしか思えない杜撰さ。
そして、オブジェとして登場するガンダム。でもガンダムがこの世界で人気なのもおかしいですよね。イェーガーという本物の巨大ロボットがあり、前作ではイェーガーやカイジュウはおもちゃになるほどの人気っぷりでした。でもそれは、カイジュウをイェーガーが圧倒していたからで、その後、カイジュウに人類が圧倒され、ついには大都市までもが破壊された凄惨な一件から10年。まだ復興が終わっていない地域もあるなかで、ガンダムのような架空の巨大ロボットが流行っているのはおかしくないか!?

というか、富士山である必要、ある??



中国愛
前作でも舞台になり、今作では話の大きな役割を持つ中国。良いんですよ、中国にPPDCの本拠地があるのも。でも、わざわざ新しい中国人キャラクターを出すために、前作のヒロインを殺すのはどうなんでしょうか…。前作のヒロインである森マコは、敵の策略(?)でヘリが墜落し帰らぬ人に。しかし森マコは死の間際、データの送信を試みていた。
このデータにはある場所が記されており、そこに向かうことにする主人公たち。この展開はわかるし、そこに何があるのか(あったのか)は回収されるべき伏線としても機能している。だけどこの映画、そこに何があったのか、森マコが何を伝えたかったのかわからないまま話が進み、終わるんです。うそでしょ!?じゃあ殺す意味ないじゃん!!!
主人公ジェイクをパイロットとして成長させるため、という理由もあるのかもしれません。でも、それならもっと森マコの魅力を引き出してから殺すこともできたんじゃないでしょうか。例えば、ジェイクを守るために死ぬとか。
そしてそこからシャオ産業という企業の女社長シャオの登場シーンが急増する。多分、森マコのポジションが彼女に変わったから。でも、そもそもこのキャラクター、シャオ産業、本当に必要だったんでしょうか。シャオ産業がなくても、PPDC内部で話は進められたんじゃないんでしょうか。
なぜ、ここまで無駄を作ってまで中国を登場させ、中国語をセリフとして多用するのか。



1番気になったこと
そんな中でも、もっとも気になったのが終盤の演出。本拠地をボコボコにされ、イェーガーの出撃もままならない中、もう1度立ち上がろうと決意するPPDC。そこで流れ出すメインテーマ。ここ、テンション爆上がりなんですよね!!!!キターーーーー!!!!!
でもこのシーン、惜しいんですよね…
メンテーマに乗せてテンポ良く進む修理、改修シーン。(ここも、イェーガーってそんな短時間で修理できるもんなの?と疑問に思ったりはしたけど)
そしてついに出撃!しかも今度はロケットブースターで飛んでいく!!
誰もが燃え上がるこのシーン。ですがこの映画、ここで「親父がよく聞いていた歌んだ」とか言って、間の抜けた曲を流すんです。
外しギャグ的な演出なんでしょうが、折角テンションがMAXになろうとしていたのに、一気に冷めてしまうんですよね。最低だよ。
ここ、なんなら改修するシーンは、メインテーマの伴奏部分だけをループさせて、出撃!で飛び立った瞬間にメインテーマがサビに!!みたいな王道演出のほうが、絶対良かったと思う。





色々語ってきましたが、前作が「子供のおもちゃ箱をひっくり返したみたいな映画」なら本作は「子供のおもちゃがスマホになっちゃった映画」って感じなんですよね。
おもちゃ箱ではなくスマホなら、遊びたいものに一瞬でアクセスできる。飽きたら、どんどん違う遊びを提供してくれる。
それに比べて、確かにおもちゃ箱は自分の好きなおもちゃを探さないといけないし、遊びたいおもちゃをどこに置いたかわからなくなったりしてしまうこともあるかもしれない。けど、おもちゃを探す時間は、例えば全然関係のないおもちゃたち(ガンダムウルトラマンみたいな)を「今日はこいつが悪者だ」とか「今日はこいつとこいつを仲間にしよう」と妄想し、そして自分だけのごっこ遊びを始められる。
全体的にあっさり、軽く、見やすくなった本作は、おもちゃを探すような、夢の詰まった時間を失ってしまっていのかもしれません。