「囚われた国家」感想 エイリアンによる侵略から9年。自由の国アメリカは、統治されていた。
「囚われた国家」
コロナ対策
お久しぶりです。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
緊急事態宣言が解除され、まだまだ油断はできない状況ですが映画館も少しずつ開館してきましたね。ここでは記録という意味合いも兼ね、数ヶ月ぶりに訪れた映画館(イオンシネマ)の感染症対策について書きたいと思います。今映画館に行くことに不安を感じる方も、参考として一読いただけると幸いです。
まず入り口。イオン自体は誰でも入場できるんですが、イオンシネマのある階層は体温チェックをクリアした人しか入れなくなっていました。
そしてチケット売り場。ここでは発券機が1台おきに使用不可になっており、発券時も距離を取れるようになっておりました。
次に売店ではビニールカーテンがかけられており、フードメニューを注文した方で希望する方にはビニール手袋をいただけるみたいです。
トイレでも1つおきに使用不可になっておりました。
最後にシアター内は上下左右に座らないようになっていました。また、マスクを着用していないとシアターには入れないみたいです。
これらの対策はされていても、最後の対策は自己判断です。その判断材料になればと思います。
あらすじ
地球規模での戦争で、地球側が敗北した。停戦協定を結ぶため宇宙人と対話しようとする政府がニュースを埋め尽くすある日、ドラモンド一家は街を抜け出し、反旗を翻す一派に加わろうと車を走らせていた。
街を出るトンネルに差し掛かったところ、その先に”奴ら”が姿を表す。奴らの攻撃で一瞬のうちに両親は塵となったが、ガブリエルとその兄はなんとか生き残る。
9年後、大人になったガブリエルは、反乱分子に加わろうと躍起になっていたが、兄が爆破テロを企てたことで政府から目をつけられることに。政府の目を掻い潜り、ガブリエルは反旗を翻すことが出来るのか……。
予告https://www.youtube.com/watch?v=dpreSUTTG-k
征服から9年後
偉大な国、アメリカの陥落。そしてそこから9年が経った2027年が舞台な本作。まず、この2027年の世界観がとても良いんです。「マッドマックス」のように荒廃してしまった訳でもなく、電気系統の遮断で人類の文明が後退してしまった訳でもなく、「レッドドーン」のような戦争になる訳でもなく、ただいつもの日常が統治された世界。当たり前のように朝起きて、出勤して、家に帰るその頭上には小型偵察機が無数に飛んでいる世界。これが何とも不気味何ですよね。日常的な風景に、1つ理解不能なモノが置かれている違和感が、この映画の全体を占めている。
キービジュアルやポスターにも使われている海岸に並ぶ謎のロボット(?)だったり統治者が乗る岩のような乗り物だったり、はたまた主人公ガブリエル君の職業がカメラやPCのメモリーを統治者に転送する仕事だったりのような細かい設定まで、ちょっとの違和感に溢れていて、その気持ち悪さが気持ち良いんです……。
敗戦国アメリカ
地球がエイリアンに支配される映画ですが、本編ではほとんどエイリアンとは戦いません。人間同士で争い合います。エイリアンの支配を受け入れた従属者たちと、それに反抗する反逆者たち。エイリアンの支配により就業率は上がり、犯罪率は低下したがその一方で、貧富の差はより開いてしまっている。つまりこの構図はそっくりそのまま、今の世界情勢における貧富の差の問題に直結しているんです。エイリアンに従う者には(制限された)権力が与えられ、逆らう者には一切の救いを用意しない。
エイリアンに支配されたにも関わらず、「インデペンデンスデイ」のように人類全員が立ち上がるどころか、反乱分子を制圧したり、エイリアンを賞賛してしまう。権力を持つために、そして自分たちの尊厳を失わないためにエイリアンに協力し続ける人類、そして偉大な国アメリカ合衆国が滑稽に見えてくるんです。敗戦国となったアメリカが、それでもなお自分たちの尊厳を強調する様を特に描いているのが、中盤のスタジアムでの「リパブリック讃歌」のシーン。統治者であるエイリアンを歓迎するためにアメリカの愛国歌が歌われ、観客は帽子を脱ぎ目を閉じ、祈りを捧げる。北軍の行進曲だったこの曲が、もはや”統治してくれてありがとう”という意味合いにさえ変わってしまう。そしてそれを賞賛する市民たちがあまりに滑稽なこのシーンは、自由の国アメリカの今と擦り合わせて見てみると本当に面白いですよね。まさに”今見るべき”映画になってしまっている。
※ネタバレ注意!
青春をもう一度
そんな小難しいテーマに見える本作。だけどその実は、ガブリエルの両親をはじめとしたかつての同級生たちの結束の物語なんです。この映画は、エイリアンに反抗するSF映画だと思っていたら実は青春よ再び映画だった。過去も目的も明かされずに登場して来たあらゆる人物たちが、青春という一繋ぎの関係に収束していく。この見事さ、そして彼らが旧友たちと交わした日々を想像させるラストは、まさかSF映画で涙ぐむとは思ってもいませんでした。
社会人になって、コロナウイルスのせいもあって、なかなか会えなくなってしまった友人たちと、10年後20年後に再会するその日に想いを馳せるような、まさに青春映画でした。
ラストショットも、あそこで終わるからこそこのテーマが強調されて素敵でしたね…。
最後に
かなり画面が暗い映画なので、家で見るより断然映画館で、それも今観るべき映画作品でした。是非映画館でご覧ください!