「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」感想 イケイケインスタ女子とリック&モーティ男子。友達にするならどっち?

「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」

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SNSというモノがある青春。

それは過度なコミュニケーションが求められる、過酷なものだった…。

今の子供たちの青春に対する苦悩を、ポップにテンポよく描く現代青春映画!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Youtuberケイラ

ミドルスクール卒業間近のケイラは、”無口賞”に選ばれるぐらい社交性がない女の子。この映画はそんな女の子が成長する青春物語なんですが、この映画が他の青春映画と異なるのが、ケイラちゃんが通称”ジェネレーションZ”であるということ。この世代は、子供のころからスマートフォンが身近にある、もっといえばSNSが身近にある世代なんです。そんな世代ゆえの苦悩を描くのが本作。

そんな本作の主人公ケイラちゃんはなんとYoutuber。彼女が投稿するのは自己啓発のように人生のアドバイスをする動画なんですが、そこで彼女が語るのはどこかで聞いたことのあるようなアドバイスだったり、私生活と真逆のことを扱った話ばかり。さらにこのチャンネル、びっくりするぐらい視聴数が伸びない。

 

 

 

 

SNSで繋がってる

ではなぜ、ケイラちゃんは動画投稿をしているのか。これがジェネレーションZなんですよ。SNS、例えばLINEやInstagramなんかで常に誰かと繋がっているのが当たり前になっている世代。クラスで居場所を作るためには楽しそうな写真を投稿したり、色んな人とメッセージのやりとりをしないといけない。交友関係や恋愛がステータスになっている世代。

だからこそ、”誰かと繋がっている”欲求が本当に強い世代だと思うんです。いつでもメッセージのやりとりをできるようになったことで、いつでもメッセージのやりとりをしないといけなくなってしまっているんですよね。

彼女もまたその鎖の中にいるからこそ、ずっとInstagramYouTubeに没頭している。

 

 

 

 

地獄のプールパーティ

そんなケイラちゃんは、クラスのイケイケ女子の誕生日パーティに呼ばれる。このシーンが本当にイヤでイヤで……。

プールパーティだから水着に着替えるんだけど、そのせいでケイラの無装備感がより強調される。装備無しで、魔王のような存在たちとやり合わないといけない。居場所なんてあるはずないのに、なんとか時間をしのがないといけない。正直、イケイケな奴となんか関わりたくないんですよ。でも、そういう奴と”繋がっている”ことこそが最強のステータスになるんです。イケイケな奴ほど有利になるSNSというコンテンツが生み出す、地獄のシーン。

こういうイケイケな奴って、自分がステータスを振りまいているのを知っているからやっかいなんですよね。自分の周りに自然と人が集まってきて、自然と相手から繋がろうとしてくるから、どんどん付け上がる。ジャイアンみたいな暴力野郎よりも、こういう奴が現代のいじめっ子なのかもしれません。。。

そんなイケイケ地獄パーティで、ケイラはゲイブという男の子に出会う。このゲイブくんが、絶妙なバランスで変な奴なんです。でもゲイブくんは唯一、SNSを気にせず自分を表現できる男の子。でも、いやだからこそゲイブと仲良くする=今自分が乗ろうとしているSNSの波から外れてしまうことを恐れて、ケイラはゲイブから遠ざかるんです。そして最低だけどSNSという波の頂点にいるエッチ野郎エイデンくんにアプローチしていく。

 

 

 

お父さん

この映画で最も印象的なのが、ケイラの父マーク。彼が本当に最高の理想の父親なんです。反抗期なケイラが突っぱねても、それに対して怒るのではなく「ごめん…」から入る。そして「でも○○だろう?」と、優しく促す。この、包み込むような姿勢がカッコイイ。

 

そんなマークの名シーン、というより本作随一の名シーンこそが焚火のシーン。ケイラは父に「将来生まれてくる子供が、自分のような娘だったら悲しい」という思いを激白する。これって、ピンとこない人にとっては何を言いたいのかもわからない話かもしれません。自分が情けなくて、悔しくて、そんな青春の泥水を啜っていた俺達にしかわからない話かもしれない。クラスに馴染めない自分の何が一番イヤかって、それを”見られている”こと。誰かから「あいつ友達いないよね」と思われるのが、本当にイヤなんです。まして家族にそんなことを言われるのは絶対にイヤだし怖い。

そんなケイラちゃんに父マークは「そんなことない、君は素晴らしいんだ」と応え続けて「お母さんがいなくなったとき、子育て出来るか不安で怖かった。けど君は自分でどんどん成長して、色んなものを吸収していった。僕は見ていただけだ。でも、そのおかげで怖くなくなった。だから君も、見てごらん」という。このセリフは、ケイラに自信を付けされるため、自分の価値を思い出させるため、自分が誰かを教えてあげるため、父の思いを知ってもらうため…。多重にアドバイスやフォローが重なっていてもう涙腺崩壊確定の名セリフ。

 

 

自分らしく

そんな父の言葉を経て、高校を卒業する自分に向けてのタイムカプセルを作るケイラ。中学入学前に作ったタイムカプセルは、「友達は出来た?ボーイフレンドは?楽しい中学生活だった?」とポジティブ満点だった。だからこそケイラちゃんはそんな理想を全く叶えられなかった自分に絶望したんだけど、それを経たケイラが作るタイムカプセルの内容は「高校生活が楽しくなかっても良いじゃない、先に進むことができたんだから」。こんなメッセージを残せる中学生なかなかいないですよ。自分がこの答えに行きつくのに何年かかったか…。

そしてケイラはイケイケ女子に一言浴びせ、自分が突っぱねてしまったゲイブと友達になって、遂に自分らしさを見つけるSNSで周り全員と繋がろうとするんじゃなくて、繋がりたいと思った人と繋がれば良いんだ。イケイケ女と繋がっても、得なことなんてないんだ。だってケイラには、「リック&モーティ」について語り合える友達がいるんだから。最高じゃない、リック&モーティ。

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最後に

自分らしく生きようと口で言うのは簡単だけど、それに気づくのって時間がかかるし、もしかすると僕自身、まだ自分らしく生きられていないのかもしれない。でも、SNSがあるからこそ出来る”自分らしさ”の表現があるってことを知れる、現代青春映画でした。

 

読んでくれてありがとう。

グッチ!