「テルアビブ・オン・ファイア」感想 制作はパレスチナ、脚本はイスラエル!?雪だるま式に笑いが倍増していく、新感覚中東コメディ!!

「テルアビブ・オン・ファイア」

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なんてことない1つのメロドラマが、人種間、国同士の問題を如実に表していくことに!!

二転三転する皮肉たっぷりな、雪だるま式コメディ映画!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ややこしいよパレスチナ問題

中東の問題って、学のない私にとっては複雑に絡み合いすぎてもうややこしすぎるんです。パレスチナイスラエルの問題に限っても、アラブとユダヤエルサレム隔離壁など単語が多すぎて、もうこんがらがっちゃって…。

正直この映画はこれらの、特にパレスチナ問題については知っていないと楽しめないと思う。と言っても、時代的背景を全部知っておく必要はなく、パレスチナイスラエルでは宗教観も考え方も違うんだなぁ…ぐらいのイメージで大丈夫。

逆に、それさえ知っていればこの映画は絶対面白い!

 

 

 

 

 

連続ドラマ

そんなパレスチナで製作されている連続メロドラマこそ、「テルアビブ・オン・ファイア」。まず、このドラマが良い感じに安い昼ドラ感を醸し出していて最高なんですよ。タイトルがイスラエルでの戦火と恋の炎というしょうもないダブルミーニングになっていることや、本作のオープニングにもなっている炎バックにアップでキャストたちを紹介するというなんとも安いドラマ「テルアビブオンファイア」のOPだったり、すぐ恋に発展するしょうもない展開だったりと、このドラマ、めちゃくちゃ安いんですよね。オチは決めてるらしいけど、それさえもハリウッドのパクリという志の低さ。急展開を重ねて、なんとか視聴率を稼いでうまくいけばシーズン2なんかも作りたいという、もう作品性なんて一切無視のドラマこそ「テルアビブ・オン・ファイア」。

 

 

 

サラームの才能

 そんな連ドラの脚本を任されるサラーム。彼は正直、脚本を書く才能なんてないんですよね。あるのはフムスを作る才能ぐらい。

しかし彼には、そんな料理の才能以外に物凄い才能がある。それは、”人から頼まれる”才能。彼はいろんな人の頼みを、出来る出来ない関係なくすぐに安請け負いしちゃう。だけど、そんな彼だからこそ人はモノを頼んでくれる。適当そうに見えるし、多分彼も半ば適当なんだろうけど、気軽に人の頼みを聞けるのは、脚本を書く上では文才並みに、いやもしかしたら文才以上に必要な才能なのかもしれない。なんたって、書いているのは小説や漫画のような作品ではなく、脚本なんだから。 

 

 

職人監督、あんたら凄いよ!

ドラマや映画の脚本を作るのってとんでもなく難しいと思う。というのも私は高校時代、文化祭で劇の脚本を書いたんですが、これが本当に難しかった。1から任されたから本質的な部分は自分の意向を盛り込めたけど、そこに付随するあらゆる要素が、例えばクラスの人気者は出そうだったり、クラスの可愛いあの子にはもっといい役をだったり、そんなのやりたくないと愚痴る人のシーンを減らしたり.....プロって訳でもないからみんな言いたい放題だったんですよね。この、ぐちゃぐちゃになっていく脚本をどうやって全員が満足しつつわかりやすくするのか、で僕はとっても苦労したんですw

 本作の「テルアビブオンファイア」でも、監督やプロデューサー、スポンサーに役者、さらには衣装係や大道具……そしてもちろん視聴者も。数えだしたらキリがないぐらい多くの人々が関わるのが映像作品で、一人では出来ないからこそ、十人十色の作品への熱意が出来てくる。そんなバラバラな情熱を一手に任される人こそ、脚本なんですよね。売りたい役者にいい場面を、センシティブな内容はしないように、スポンサーが喜ぶように、シーズンが続くように.......そして視聴者が喜ぶようなモノを作り出さないといけないのが脚本。

そんな脚本作りにおいて必要な能力の1つが、求められた物をしっかり形にする能力。職人監督的に、スポンサーやら事務所の言う通りに作りました感満載の映画、作品としての質を無視した映画が溢れる昨今。だけど、そんな映画作品1つ1つに、脚本家と作り手たちの攻防があったのかなぁ....と思うと、なんだか肯定的に見れそうな気がしてくるかも...?w

 

要求された物を作る、それは一見簡単そうなんだけど、それが如何に難しいかをこの映画はコメディタッチに教えてくれる。ユダヤ人とアラブ人に結婚をさせろ!いや、そんなことありえない!の攻防を繰り返すことで、ドラマは二転三転していってしまう。この、雪だるま式にどんどんめちゃくちゃになっていくのも最高に面白いし、それにどう落とし前をつけるのかと言う超難題に、全員が満足する答えを出すために奔走するサラームは最高にカッコよく見えました。職人監督、あんたらすげぇよ!!

 

 

 

 

ユダヤとアラブの皮肉

でも実際、ユダヤとアラブの結婚って今でも有りえない。たとえドラマの中のお話でさえ叶わない、やっちゃいけないと言うのは、今の中東問題を如実に表していると思う。コメディタッチに面白おかしく人種間のやりとりを描いてはいるけど、国同士や人種同士での齟齬が、こんなにも生活に根付いてしまっているのが今の中東。国や考え方がぐちゃぐちゃに入り乱れてしまったから、こんな昼ドラみたいな世界観でさえユダヤとアラブの禁断の愛も許されない。

この映画を、真に笑って見られるような世の中に、中東になることを願いたくなる作品でした。

 

 

 

 

最後に

今回は短めですが、複雑に入り乱れたパレスチナ問題をここまで面白く逆手にとって楽しめる作品は唯一無二だと思います。是非映画館で、手を叩いて笑ってください!!