「HELLO WORLD」感想 京都×SFの化学反応は、”セカイ系”の概念を覆す。

HELLO WORLD

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散りばめられた伏線や固有名詞の数々には正直、朦朧としてしまう。けどそれこそ、仮想現実系SFの楽しみ方だと思ったり。

この映画はセカイ系の概念を覆す、究極のセカイ系映画だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイムトラベル(?)×恋愛×落雷=……!?

タイムトラベル(?)して、あの娘と付き合うために奔走して、雷がキーポイントになってる。……この要素を聞いて、誰もが思い浮かべてしまうある映画があると思うんです。それこそバック・トゥ・ザ・フューチャー

BTTFの1作目は、過去に行って父親と母親の恋を手伝い、雷を使って未来に帰るお話。本作の前半はそのプロットにかなりなぞられている。ちょっと反則技な気もしますが、タイムトラベル系の映画を作ることにおいて、この上ない傑作をオマージュした本作の前半が面白くないわけがない。テンポよく登場人物を紹介して、時代設定やキーとなるALLTAREやドローンの説明など、必要な情報をすんなりしてくれるから、序盤の掴みはばっちりな映画でした。

 

 

 

 

異なる時間軸×救出=……!!

異なる時間軸を駆け回り、誰か(何か)を助けるために奔走していたら、実は自分が助けられる……この要素を聞いて、もしかすると何人かが思い浮かべてしまう映画があると思うんです。

それこそインターステラー

宇宙SFである「インターステラー」は、地球を救うために宇宙へ向かう主人公が、時間の進み方の異なる惑星を転々として、その時間軸のズレが大きなキーポイントとなる作品。

そして本作の後半部分は、この時間軸のズレと救出というキーワードを踏襲して描かれる。狐面の絵面は「シュガーラッシュ2」でしたが、後半、特に終盤の畳み掛けるようなどんでん返しの流れは「インターステラー」並みのどんでん返し。予告でも話題になっていた”ラスト1秒”こそ、とんでもなく「インターステラー」っぽいんです。この後半に関して、あらゆる人が重厚な考察を繰り広げて下さっているのでここでは考察はしません(得意ではないのでw)が、この考察させるような、思考を促すような作りがなんともクリストファーノーランっぽい。難し気だけどなんとか付いていけるような、絶妙なバランス感覚だから難しいのに見やすい。

後半も、SF作品としての名作をオマージュした展開が面白くないわけがないんです。

 

 

 

京都

ではこの映画にオリジナリティ溢れる部分がないのか?と言われればそんなことはなくて、上記したようなSF大作的なストーリーと、京都の街並み及び京都アニメーションっぽいキャラクターが魅せるアニメ描写がマッチングしているのが本作。

京都の街並みって、近未来SFとかなり相性が良いと思うんです。古都的な描写と一緒にあるドローンのような近未来なモノがギャップになって、近未来っぽさが際立つ。さらに仮想現実系SFとアニメも相性が良くて、所謂セカイ系と言われるような、”あの娘と僕のセカイ”という究極の仮想現実設定が活きるのはやっぱりアニメだと思う。逆に、実写でここまで”セカイ系”っぽいお話になるとかなり気持ち悪い違和感が飛び出てしまう。

この映画は、アニメ的面白さと京都ならではの近未来感を使って、SF名作を日本でしか出来ないクオリティで再構築した映画なんです。

 

 

 

 

究極のセカイ系

そんな本作は”セカイ系”として究極の領域にまで達する。近作では「天気の子」のような、”俺と君がいれば、あとはどうだっていいんだ!!”的なセカイ系に止まらずに、本作は君と僕が居られるセカイを再構築してしまう。

その突き抜け感は「天気の子」に負けず劣らずの尖りぐわいで、そこが苦手と感じる方もいるとは思いますが、個人的にはこういう尖った部分のある映画が大好きなのでそこは良かった。

 

 

 

 

 

3つの違和感

ただ手放しにこの映画を大絶賛できないのも事実で、それは3つの違和感を感じたから。

1つ目は作画。この映画はアニメ映画なんだけど、びっくりするぐらいヌルヌル動く。あまりアニメを見ない私にとって、ここまでヌルヌル動くアニメは「ゴールデンエッグス」以来でした。そのヌルヌル動くアニメーションが、個人的にはかなり違和感を感じる部分で、アニメは当然ながら背景とキャラクターで絵のタッチが違う。だけどヌルヌル動くキャラクターたちはどことなくリアリティを持った、アニメ的でない印象を与える動きをする。タッチの違う背景とキャラクターが、異なったリアリティを持って同時に描かれるから、キャラクターが背景から明らかに浮いているように感じてしまいました。

2つ目は納得の早さ。特に顕著なのは、主人公が未来から来た自分に「ここはALLTAREが作り出した過去の記録なんだ」と説明された時に、びっくりするぐらいすんなりそれを受け入れてしまう。自分の生きている世界が、実は現実ではなく記録上のモノだった…!なんて、それだけで映画1本作れるような衝撃的事実なのに、そこを一瞬で受け入れてしまう。この映画、こういうSF映画でオチになるような衝撃展開を何個も何個も用意しているために、1つ1つがかなり薄味になってしまっている。折角面白い設定なのに、それを何の調理もせずに出されているような。

3つ目は仮想現実という設定。この設定って、わかりにくくなりがちだとは思うんです。だけど、それにしたってやっぱり終盤の畳み掛けは怒涛過ぎる。確かにそこが「インターステラー」みたいな面白さの部分なんだけど、あくまで個人的にこういう仮想現実系のSFは、何でもアリ感を感じてしまってあまり好みではないことも相まって、このゴチャゴチャした仮想現実設定に常に違和感を感じてしまいました。。。

 

 

最後に

色々言いましたが、この映画の最大の楽しみ方は友人や恋人と一緒に観に行って、お互いに考察しあうことだと思います。是非、ご友人恋人家族と一緒に映画館へ!