「ジュラシックワールド 炎の王国」感想!! 肯定し難いラストと生命の倫理について…

ジュラシックワールド 炎の王国」(2D字幕)
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前振りとして、私にとっての「ジュラシックパーク」についてちょっと語りたいと思います。
私は今、生物学を大学で学んでいます。この道を選ぶきっかけになったものこそ、「ジュラシックパーク」でした。化学の夢、生命の力強さ、そして人間の強さ。まさに、生物への愛を探究した映画こそ、この「ジュラシックパーク」だと思うんです。

そんな、思い入れたっぷりな映画シリーズの最新作。正直、ジュラシックシリーズは全部が全部総じて最高!とは言えない私にとって本作は、かなり不安なところも多かった…


良所
前作よりも、ちゃんと主人公とヒロインが立っていたのは本当に良かった!!彼らが、前作を経た上での成長や葛藤を、ここまで丁寧に描いてくれるとは思いませんでした。
それに、イスラ・ヌブラル島での大脱出はちゃんと今までのジュラシックシリーズのセオリーを守っていて、恐竜映画として十分に楽しめました。ちょっと、死人が出なさすぎとは思いましたが…w
加えて、ラストの館での密室ホラー展開。今までもこういう狭い空間でのパニックシーンはありましたが、ここまで長尺なのは初めてじゃないでしょうか。けど、それが良い意味でこれまでのシリーズとは違った恐竜の怖さを見せつけてくれる、良いシーンだったと思います!
あと、ブルーがついにシリーズにおけるTレックス並みのヒーローになってて、これは良かった!クリプラとブルーの絡みは、本当に涙なしには見れません…。



言いたいところ
正直、言いたいことが多すぎる。
生命の美しさ、尊さ。そんなものを守るためにクレアは再び島を訪れ、恐竜たちを救おうとする。そもそも、この考えがおかしい。死にゆく彼らがかわいそうだから連れ出そう。違う島なら、隔離できて安全だし。いやいやいや。
その島にも生態系は存在しているんですよ?そして、恐竜たちにとっても環境が一変させてまで生かすことは、本当に彼らのためなんでしょうか?
まぁ、ここは彼らが終盤で成長するための前振りなんで良いんです。その終盤。クレアは恐竜たちが死にゆく選択をする。しかし、クローンだった少女メイジーにより、恐竜たちが解放される。
そして、マルコム博士による宣言とともに、人類と恐竜の共存という無謀とも思われるテーマが語られる…。

なんだこれ!!この映画の倫理観には、目に見える生態系しかないように感じるんですよね。恐竜という目に見える生命が死に絶えようとしているから助けよう。目に見える生命が危険に晒されるから恐竜を諦めよう。クローンとして目に見える共感者を助けよう。
この映画では、クローンと純粋な生き物。この2択しかない。
生態系って、そうじゃないでしょ?

例えば、恐竜を外来種と考えてみると、今現在、外来種は悪とされ駆除する動きがある。これは、在来種を守るため。そう考えると、恐竜たちを解放するということは、外来種との共存の肯定を意味する。でも、そんなことできるはずがないんです。同等の種が同じ時代、場所に存在すれば、どちらかが滅びるまで種間競争は止まらない。それを経て、今の人類があるんですから。
そして、恐竜を解放するということはこのような目に見える問題だけじゃない。例えば、恐竜が解放されてその地域の肉食動物が狩り殺されたとする。それまで頂点に立っていた動物がいなくなった地域では、下位の生き物たちの競争が始まる。その結果、恐竜とは食う食われるの関係が一切なかった、下位の小さな生き物の絶滅まで招いてしまう危険がある。
一方で、恐竜の残した肉を手に入れることでかつてより繁栄する動物種もいるかもしれない。そうなると、その種のライバルだった種は滅び、滅んだ種と共生関係にあった種までも絶滅してしまうかもしれない。
こういう、見えない危険が無数に存在する事こそが、生態系を守ることの難しさなんです。これを、次回作で解決できるとは到底思えない。現代社会においても、外来種を駆除する以外に選択肢がないんだから。

はたまた、恐竜をクローンとして考えてみると、倫理的な問題が浮上する。彼らが生命といえるのかどうか。これこそが、この映画で描きたいところなんだとは思う。(私個人としては上記のほうが気になるんだけども)
そもそも、植物ではもう世界中にクローンはありふれている。というか、植物は何も育種をしていなくてもクローンを生んで繁栄しているものも多数いる。そして、家畜動物などではクローンが作られている。そんな彼らを生物といえるのか。私個人の答えは、”YES"だと思っている。しかし、これは仮の答え。上記した通り、生命には”命”と”場所”が必要。でも、この恐竜たちには片方しかない。だから彼らは仮の生命だといえる。彼らは”場所”を得るために奔走するだろう。そしていつか、”場所”を手に入れ、生命として認められる時が来る。倫理的には、生命の誕生という意味でこれは正しいのかもしれない。でも、人間が身勝手に作り出したものが、生命になってしまうことは、本当に倫理的に正しいのだろうか。

と、どう考えてもやっぱり次作でこの問題にケリをつけるのは無理なんですよ!!だから私は、この映画のラストは一切肯定できません!


あと、ジュラシックパーク的な不満点として、こんなにもワクワクしないジュラシックパークは初めてでした。もっと、夢物語っぽい前振りがないと後半が生きないし、後半ももっと軽い語り口で良いんですよ。2時間弱で話を収めるのに、こんな生命倫理について答えのない論争を繰り返さなくても。
あと、細かいけど冒頭で水門を開けるのって、最後の最後にモサが出てくるためだけの伏線だったの??もっとあの水門が本編に絡んでくれると思ったのになぁ…






いろいろ語りましたが、次回作が色んな意味で楽しみな映画でした。まだみていない人は、こんな細かいことを気にしないで楽しんでね!