「国家が破産する日」感想 最悪の事態まであと7日。ゴジラのように圧倒的だが見る事さえできない脅威が、国を壊していく。

「国家が破産する日」

 「国家が破産する日」の画像検索結果

 

 

 

国家は利益を優先して大企業を守り、中小企業から搾取する。

しかし国同士にも少なからず、大小はある…。

 

韓国で実際に起こった、衝撃の経済危機を三者三様に描く社会派作品。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

韓国映画

”自国が破産しそうになった歴史を映画化する”。もうね、この企画が通るだけでも韓国映画は本当に凄いですよ。日本でも少し前に話題になった「新聞記者」では、かなり現実に起こった出来事っぽいけどフィクションを描いた話でしたが、本作は少し前に明らかになった当時の対策チームの存在から、当時の事件をあらゆる視点で描くこの徹底さが凄い。「新聞記者」の何が苦手だったかって、一方的な視点でのみ語る点だったので、本作のような群像劇で史実を描くのは誠実で感心しました。

いつか日本でも、こういう形で政治、国家での出来事を記した映画が普通に作られる日が来てほしいな…と思ったり。

 

 

 

 

 

三者三様

そんな本作で登場する主人公は主に3人。

1人目は対策チームのリーダー。彼女は対策チームの存在から作られた創作だそうで、いうなれば韓国にとって”こんな風に、圧政に立ち向かって国家を守ろうとする人がいれば何かが変わったのではないか。”という願望のような人物。彼女を演じたキム・ヘスさんがチームで奮闘する姿は手に汗握る。

2人目はこの危機を利用して儲けようとするコンサルタント彼の視点は基本的にずる賢く描かれるんですが、その理知的な行動と時折見せる後悔のような表情が絶品な人物。彼は儲けと愛国心で揺れ動く存在として描かれる。

3人目はこの危機で被害を被った町工場の社長。彼の物語はわかりやすく、この危機のせいで身も心も、そして会社も家庭も崩壊してしまった人物。そんな彼が最後に頼るある人物と相反した時、一方は自分の不甲斐無さを、一方は絶望を魅せる最悪のシーンになっている。あのシーンだけで、この経済危機を二度と引き起こしてはならないと感じさせられる。

 

そんな風にこの映画は三者三様に描かれるため、経済的な知識が無くても楽しめてるんですよね。簡単に言うと得する人損する人、そして守ろうとする人がそれぞれこの危機について右往左往するから、用語がわからなくても次第にその重大さが見えてくるから楽しめちゃう。

 

 

 

 

 

シンゴジラ

群像劇スタイルで国家を描くこの展開は、なんだか「シンゴジラ」を彷彿とさせる。特に中盤、経済危機の被害が拡大し、大企業が倒産し国民が路頭に迷いだすシーンは、まるでゴジラに襲われた国のような切迫したシーンになっている。この映画では経済危機という、ゴジラのように圧倒的な脅威なのに目に見えない力に、国が圧倒されていく。ゴジラのような物理的な力なんて無くても、国家は崩壊しうる。そんな恐怖すら、この映画は感じさせてくる。

 

 

 

大中小

そんな経済危機で優先的に守られるのは国に直接的に利益をもたらす大企業。韓国は政策として大企業や金持ちを守り、貧困や中小企業を突き放してしまった。その結果、失業者が急増し自殺率まで高くなってしまう。

現実でどうこうではなくこの映画での話ですが、もっと大きな視点も描かれているんです。それは、IMFを利用したアメリカという存在。韓国国内で大企業を守り中小企業を見捨てている最中、世界規模で見れば大企業アメリカ合衆国に搾取される中小企業韓国のような構図が出来てしまっている。IMFのような、世界規模で経済を支えようとするシステム自体に、そのような裏があるのは当然といえば当然なんだけど、ここまで国が企業のような、もっといえば人同士の関係のようにも見えてくる。いつ大企業、富裕層に見捨てられてしまうか、いつ自分に危機が訪れるかなんて誰にもわからないし、それは国規模でも同じ。大きいモノが小さいモノを虐げるんです。こう考えると、他人事ではないんですよ、この話は。

 

 

 

疑え

そして本作が提示するのは、”疑え”という視点

テレビやラジオ、新聞にネットニュースなど様々な情報が行き交う現代だからこそ、何を疑うか、何を信じるかを選択する視点こそ重要で、その目利きが出来た人間と出来なかった人間がエピローグでは描かれる。誰も負け組になんてなりたくないんだけど、目利きするのってすごく面倒くさいんですよね。常にアンテナを張り、あらゆる情報を俯瞰的に見るなんて。

だけどそんな行為こそ、”疑うこと”こそ、今必要だと突き付けてくる。

 

 

 

 

最後に

この映画の内容を韓国批判の材料にしている感想をよく見かけます。そういう意見自体はそれぞれの自由ですが、こんな映画を作り、そして日本でも上映させる技量と映画産業は、見習うべきところがあるのかもしれません。日韓関係も、このようなポップカルチャーを通すとまた違った視点で見ることが出来るんじゃないか、と私は思います。

 

是非今、観るべき作品です。是非映画館でご覧ください。