「王様になれ」感想 ある夢追い人の物語は、少しずつthe pillowsというバンドと重なっていく。これはバンドの経歴の実写化という、新感覚バンド映画だ!!

「王様になれ」

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the pillows30周年記念映画。

それは27歳という、夢と現実の最後の分岐点で悩む男を描く成長物語。しかしそこには確実に、the pillowsというバンドの存在があった…。

 

 

 

 

 

 

 

27歳

この映画は、プロのカメラマンという夢を諦めきれない27歳の男が主人公のお話。夢を追いかける人の話なら、普通もっと若くて、未来のある人を題材にすると思うんです。けどこの27歳というのが、夢を諦めるという選択肢が当たり前になっている年齢な気がして、もっと言えば夢を諦める最後の瞬間が、27歳。この映画はただの夢追い人を描く話ではなくて、夢を諦めるべきと見られがちなアラサーの男が、それを受けてなお成長していくことを描いている。だから夢を追うというのに、後に引けない緊張感と焦りが常に生じているんです。ここがこの映画の魅力で、夢を追う、夢を叶えるという大多数の人にとって現実味のない話に、絶妙な緊迫感というスパイスが加わることで等身大な27歳の、リアルな話に見えてくる。

 

 

誰かのおかげじゃない。

監督が演じるラーメン屋の大将のおかげでユカリさんと出会い、後東ようこ演じるユカリさんのおかげでピロウズと出会い、ピロウズのおかげ岡田義徳演じる虻川さんと出会い、27歳の神津祐介は、ライブカメラマンという形で夢を叶える。この映画に出てくる登場人物は、イヤなキャラがほとんどいない。上記した面々、特に虻川さんはもはや聖人だし、同期で成功している西小路健だって、嫌味臭いけど祐介に刺激を与えてくれる。色んな人の支えで、祐介は夢を叶えるんです。でも、誰かのおかげじゃない。自分が挫けず、諦めずに突き進んだからこそ、夢を叶えて、自分らしい王様になったんです。

 

 

the pillows

この映画の感想を語る上で絶対に外せないのが、the pillowsというバンド。私は正直、音楽好きとかではないんです。でも、そんな私が1番好きなバンド何?と聞かれたら1番位浮かぶのがピロウズ。青春時代に彼らの音楽と出会い、お金を貯めてアルバムを(わざわざ新品で)買い、現在に至るまで同じアルバムを何度も何度も聞いている。ライブに行ったりとか、色んなアルバムを買っているようなバスターズではまだありませんが、私にとってずっとずっと大切な存在のバンドなんです。

そんな彼らが30周年の映画を作る。っという噂を聞き、このブログを読んでくださっている方はご存知の通り映画好きの私としては楽しみで仕方なかった。遂に、ピロウズのとんでもない経歴が映画になるんだ!と。しかし、その作品はピロウズが主役の、最近流行りのバンドの伝記映画ではなく、フィクションを主軸とした映画だった…。

 

 

経歴の実写化

ではなぜ、フィクションの話にしたのか。その話の前に彼らの経歴をざっくり説明すると、当初のリーダーが脱退した第一期、現リーダーが決まりもがき苦しんだ第二期、「ストレンジ カメレオン」のスマッシュヒットによる起死回生の第三期、そして活動再開から現在の第四期。

そして本作を、大きく分けるならラーメン屋で燻っていた第一期、虻川さんに拾われた第二期、自分の写真を撮ることが出来、自分らしさを生み出した第三期…。

この映画は、ピロウズというバンドの経歴をお話の骨格に添えることで、フィクションを通してピロウズを描いているんです。いうなれば、経歴の実写化というか。

そしてこの映画にはもう1つ大事な要素がって、それはファンという存在。バスターズは、どうピロウズに心を動かされ、どう支えられているのか。もう1つの要素こそ、ファンの実写化なんです。

 

 

 

自分らしさ

1人のファンとしてピロウズのテーマだと思うのが”自分らしさ”。それは「ストレンジ カメレオン」から続くテーマで、この映画と同タイトルのピロウズの曲「王様になれ」にもこのテーマが反映されている。何色にも染まらなかったことでブレイクを果たしたピロウズだからこそ、ここまで”自分らしさ”に触れることが出来るし、それは映画という媒体になっても、伝えるべきだし伝えられるテーマ。ピロウズの歌を聞いて、自分らしさを取り戻せるように、この映画を観ることで、自分らしさに気づくことが出来る。お話はフィクションでも、伝えたいもの、伝えられたものは確実にピロウズなんです。

 

 

 

最後に

ピロウズを知っていないと楽しめないのか、という人もいるかもしれません。でもこの映画は、フィクションのお話で突き進むので単純にお話を楽しむことにおいては、ピロウズを知らなくても十分楽しめると思います。そして、ピロウズを知っている人ならお話の展開がピロウズの経歴と重なっていく、ダブルミーニングな面白さを味わえる佳作だと思います。

バスターズも、そうでない人も是非、映画館で鑑賞してください!