「アス」感想!!!目的のために”手を繋ぐ”のか、”手を繋ぐ”ことが目的なのか。恐怖と笑いが混在した”堪らん!”映画体験!
「アス」
もしもある日、自宅に自分達が訪ねてきたら…。
そんな怖すぎる設定を恐怖と笑い、そして社会風刺で描く奇妙な傑作!!
怖い?怖くない?
ご存知の方も多いかもしれません。私は大のホラー苦手人間なんです。
そんな私にとって本作は、ハッキリ言ってめちゃくちゃ怖かった!!!!私が苦手な、”くるぞ……くるぞ……からのドーン!!!”が連発される。もう、スクリーンを直視するがイヤになってくるぐらい、眼を反らしたくなるぐらいのあのお腹痛くなる緊張感が、もう苦手。
例えば、娘が車を挟んで逃げるシーン。あの、車の下に隠れた…?からの上だ!!がベッタベタだけどその吸い込まれるような怖さが本当に苦手で…。なんなら、音が鳴るシーンよりも音が鳴るまでの無音が苦手。
堪らん!
じゃあホラー映画が嫌いなのか?と聞かれれば、そうではないんです。ホラー映画特有の、例えばグロかったりロジックがあったりするような、不気味でフェチ的な部分は大好きなんです。だからこそ、ホラー映画は自分にとって”観たいのに観れない”口内炎のようなジャンル。
そして本作でもそんなフェチズムは抜群。序盤、家の前に突っ立ってる”奴ら”の不気味な描写とか、11章11節からの11時11分だったり、母親が少しずつ見せるラストへの伏線とか、そういう不気味な描写はもう堪らん!びっくりさえしなければ、大好きなんですホント。
その中でも1番好きなシーンが、タイラー家でのアレクサ的音声認識の誤認識による「 Fuck tha Police」が流れるシーン。あのPOPな残虐描写が良いんですよねぇ。ホラーなのにノレる。
………実はホラーに向いてる体質なのかも……?とも感じた映画でした。
コミカル!
しかしこの映画、コミカルなシーンもたっぷりあるんです。ずっと笑わせてくれるお父さんだったり、中盤のタイラー家での姉弟の卓越したアクションだったり、それこそ上記したアレクサのシーンだったり。この、ちょいちょい笑わせてくれるところも本作の魅力で、怖かったり面白かったり、気持ちが常に上下してるから飽きないんですよね。あれ?これって笑っていいのか?それとも怖がるべきなのか?と疑心暗鬼になりつつ見てしまうから、ずっとワクワクな気持ちが続く。
監督がコメディアン出身なのもあってか、観客の感情を上手く使った映画でした。
白人と黒人
この映画、色んな方が考察しているようにusはアメリカ合衆国という意味も込められていて、そこが本作に考察の余地を与えている。
ここからは私個人の解釈になりますが、本作は白人はすぐ殺されるけど、黒人は縛られたり追いかけっこしたりと結構生かされる。これは”奴ら“が地下、すなわち逆の世界から来たことと関係していて、地上世界における白人と黒人の問題とは真逆に、彼らは黒人を擁護的に認識している。差別的な感覚が、地上とは真逆になっているんです。
差別を語る人
そんな中で、地下の”奴ら”は手を繋いで一直線に並び始める。それは、1986年にあったハンズクロスアメリカという運動を真似て。
本作ではよく”手を繋ぐ”描写があるんですが、地上世界の人間はほとんど黒人と白人で握手はしない。逆に、地下世界の奴らは黒人でも白人でも無作為に手を繋ぐ。
1986年のハンズクロスアメリカでは、貧富の差による差別改善のために人々が手を繋いだ。しかしそれは、”自分は貧富の差に怒れる人間です”というパフォーマンスでしかなかったからこそ、現在でも深刻な貧富の差が続いている。
黒人差別も貧富の差による差別も、あらゆる差別意識において、”手を繋ぐ”ことを目的とした改善なんて出来てないんです。しかし僕ら地上の人間とは真逆の彼らは、無作為に手を繋ぐことが出来る。しかもそれは、”手を繋ぐ”ことが目的なんです。手を繋いでこういうことをしよう、なんて思っている今の社会では差別なんて無くなる訳がないんです。
最後に
容易に、しかし深く考察も出来てしまう、万能型ホラー作品でした!!こういう映画は、映画館で体験しないといけないと思うので、是非映画館へ!!