『the face vol.02 根矢涼香 特集上映』レポート&「父、かえれ!」「河童研究会」「次は何に生まれましょうか」紹介感想!!(ネタバレほぼなし!) 特集上映に初めて挑んだ、ある映画凡人のお話。
『the face vol.02 根矢涼香 特集上映』
今回はいつもの映画感想とは少し違い、特集上映の感想&短編映画の紹介と感想回です!
本日のお品書き
『the face vol.02 根矢涼香 特集上映』
噂はかねがね、根矢涼香さんを特集した短編映画企画イベントに行ってまいりました!
このイベントは、根矢涼香さんという女優さんを軸に、15本の短編映画を数作ずつ上映していく企画。
大阪に住んでいて、あまり行く機会がなかった阪急十三駅に位置する「シアターセブン」さん。初めて利用したどころか、十三駅さえほとんど行ったことが無かったんですが、街の空気感が凄いw
20時30分からの上映だったんですが、ビビりな田舎者の私は、本当にビクビクしながら街を歩きましたwあんなに露骨に、スーツを着たガタイの良い男の人が近寄ってくる街は初めてでした……
そんな気持ちでたどり着いた「シアターセブン」さん。内装はよくあるオシャレなミニシアターというよりは楽屋裏のような、ワイワイした雰囲気で、観た事も聞いたこともないような映画たちに囲まれる感覚は、なんだか自分の趣味に新しい扉が開いた感じでした。
その日は舞台挨拶があり、登壇してくださったのは「父、かえれ!」に出演されているひと:みちゃんさんと、「次は何に生まれましょうか」を監督した野本梢監督。このお二人の和やかな撮影秘話や雑談になんだか実家のような安心感さえある映画体験でした。まさかひと:みちゃんが衣装を仕込んでいるとは思いませんでしたw
パンフレットにサイン、握手や写真撮影までして頂き、大満足で映画館を後に!(来週、また行きます!)
ここからは、映画の紹介、感想です!ネタバレは、ほとんどありません!
「父、かえれ!」
映画紹介
結婚を視野に彼氏と同棲している瀬奈の家に、ある日大きな荷物が届く。そこに入っていたのは、なんと瀬奈の父だった!
突如顔を見せた父は、飲むわ寝るわでやりたい放題…。そんな父を煩わしく思う瀬奈は、ふと疑問に思う。「お父さん、何しにきたの?」
果たして、父の本当の目的とは……。
予告→https://www.youtube.com/watch?v=mkj7qyobo64
映画感想
実は、この作品を監督した武石監督とTwitter上ですが昔から交流がありまして。この特集を観に行ったのも、彼が撮った映画がついにスクリーンで観れるから!といきり立った次第で。
本編の感想としては、まるでうちの妹と父を見ているようでした。私の父は、本作の父親同様にめちゃくちゃなことをしでかして人様に迷惑をかけることもしばしば……という人なんです。そんな父と、うちの妹はよくケンカをしていて。娘と話したい父と、父を煩わしく思う妹。けどそんな妹も、たまに父への自分の態度を後悔しているようで…。
この映画には、そんな家族のエッセンスがとっても含まれてる!それも、コメディタッチに、笑いながら、共感しながら、父と娘の関係を考えさせてくれる。父と息子と違って、父と娘って何とも言えない歪な関係だと思うんです。不器用な父親は娘とどうやって関わったらいいかわからない。一方で娘は、そんな父があたふたする姿につかれる。それを冒頭の登場一発で体現してみせるのが、父役を演じたひと:みちゃんさん。初めて見た時はびっくりするぐらい、キャラが濃いい…w常に適当言ってそうだし、能天気そう。そんな父の娘を演じた根矢涼香さんは逆にかなり抑え目の演技。父はずっと娘を思っているから、父のキャラが立つと娘のキャラも立つという、ピッタリな構造。
そんな2人の演技が最も輝いていたのは、やはり階段でのシーン。夜道って、どこか素直になってしまいますよね。そんな夜道でかわす2人の会話は、”ああ、親子だ”と直感で思えるうえに、そこで瀬奈が何気なく言ってしまう一言が……。そりゃ傷つくぜ……。
その後、その言葉に後悔した瀬奈がとるトンデモな行動も、パワフルで、本当は勿論あった父への愛を見せつけられる名場面でした!
この映画を、うちの妹が観たらどう思うのかなぁ…w
ずっと観ていられるような家族で、家に帰れば自分の父と何か話したくなるような、そんな映画でした。
「河童研究会」
映画紹介
河童を研究する団体、それが河童研究会。そこに所属する大学生3人は、○○県にある河童が祀られていると噂の河童神社に行くことに。
数日後、彼らは行方不明に。そして、彼らのスマートフォンとカメラが発見される。そこに映されたものとは…。
映画感想
まさかのホラー!!!
大学生らしい、恋っぽい関係も見え隠れするようななんとも言えない距離感の男女3人が、バカトークをしながら山奥の神社に行く。この設定だけで、ホラー映画としては完璧な流れ。さらに本作は、全編カメラ視点でお話が進み、テロップには(iPhone5)やカメラの名前みたいに、撮影された媒体が出るのには笑いましたw
全体は二部構成になっていて、前半が襲われる場面、後半が襲われるまで。前半がかなり断片的で、それを後半に回収しながらホラーとしてグイグイ見せていくのは面白かった!!いきつく答えを知っているからこそニヤニヤしながら、でもビクビクしながら観れる映画でした。
欲を言えば、ちゃんと前半のラストまで後半続けてほしかった!
でも、初めて河童を”怖い”と思った映画でした。鳴き声がまず怖いw
「次は何に生まれましょうか」
映画紹介
シングルマザーの聡美は、子育てに仕事に大忙し。口うるさく母は子育てに口出ししてくるし、小学校も娘が宿題を出してくれない、授業中に寝ていると相談してくる。周りの子と同じようにしてくれない娘に悩み、苛立ち、疲れてしまう聡美。そんな彼女が決めたある決断が、親子関係を変えていく…。
予告→https://www.youtube.com/watch?v=tfDuofkFJbg
映画感想
この映画の全てを物語っているのは、母のある一言。「娘を病気扱いしたいの?」
周りの子と同じように計算したり、遊んだりできない娘に悩む聡美は、色々と焦ってしまっている。娘が学校でいじめられるんじゃないか、将来どうなってしまうのか。そんな不安を煽る母親。そしてお構いなしに行動する娘。その板挟みに耐え切れなくなった時、ついカっとなって娘を怒鳴りつけてしまう。ここの、聡美役を演じた根矢さんの演技は本当に半端ない。ぐちゃぐちゃに混じった感情が爆発した、心が張り裂けなそうな怒鳴り声。
その後、家で娘の宝箱から自分が採点した宿題の紙が出てくる。ああ、娘も娘なりに、大切なものがあって、自分があって、理由があって生きているんだ。このシーン、本当に泣いてしまいました。私もこの歳になって、色々と自分を育てていた時の秘話を聞いたりするですが、そんな私の母が「この子なりの生き方があるって気づけたから、好きに育てられた」という一言が印象的で。
聡美は、娘を病気扱いしたいわけじゃないんです。娘の生きたいように、娘がしたいように支えてあげるために、行動したいと思い立ったから、検診に行くことを決める。
そんなラスト、砂の山でトンネルを掘って、親子が手を繋ぐのが良かった…。検診するシーンではなく、この”手を繋ぐ”というロジックを回収してくれたからこそ、この映画はわかりやすく、説教臭くなく終わったんだと思う。検診したり、思いを語るシーンが入ると、どうしても説教臭くなってしまう気がして。
根矢涼香
特集として、3作それぞれの彼女を見たわけですが、彼女の抑制の効いた、自然な演技は本当に凄かった。感情が動いてないようで動いてるように見える、なんとも言えない目線というか、声色というか。彼女は、今後絶対に大成していく女優さんだな、と感じられる特集でした。
最後に
これまで観てきた映画にはない、原石のような映画たちに出会える機会でした。また、新たな映画の楽しみ方を発見してしまったと、帰りはニヤニヤしながら帰宅しましたw
ミニシアター、それもこういう特集は少し勇気がいるかもしれませんが、その一歩を踏み出す価値は絶対にあります!是非、最寄のミニシアターに1度は足を運んでみて下さい!