「シード ~生命の糧~」ネタバレなし映画紹介&映画感想!!あなたの”種子感”が変わる映画体験。

「シード ~生命の糧~」

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”種子”と聞いて、何を思い浮かべるだろう。豆?粒?それとも、ポップコーン??

この映画を観れば、”種子”には私達と同じく、等しく生命が宿っていることを再確認できるはず。

 

 

 

 

 

紹介

20世紀の間に、種子の94%はこの世界から消えた。その要因は様々で、気候変動や、時には戦争などによっても、種子は攻撃されてきた。しかし今、より深刻なダメージを、世界中の種子は被っている。それはなんなのか。そして、そこから見えてくる、私達の生活に欠かせない種子の変化とは……。

種子の現状を、ドキュメンタリーに描く作品。

予告→https://www.youtube.com/watch?v=q1AqRG-18NM&t=13s

 

 

 

 

 

感想

観るきっかけ

そもそも、なぜこの映画を観ようと思ったのか。それは、私が大学生とはいえ、植物に関わる勉強をしているからなんですよね。そんな植物に何が起こっているのか。普段の研究では見えてこない、新しい視点。それを探究したくて、観に行ってきました!

率直な感想としては、この映画は物凄く繊細に扱わないといけない映画だと思う。賞賛一辺倒でも、批判一辺倒でもいけない。絶妙なバランスで、知識をしっかり蓄えて観るべき映画だと思う。なぜなら、この映画は明らかにゴールが設定されて、そこに向かうだけの映画だから。

 

 

 

この映画で言っている事

この映画で言っている事は、主に3つ。農薬、GMO(遺伝子組み換え作物)、モンサント法。

農薬については、それについての被害と、企業がそれを垂れ流す非道さを前面に出して描く。

GMOについては、遺伝子組み換えが持つリスクと、それを顧みない世界の研究の現状を描く。

モンサント法については、モンサントという大企業が決定した法案によって苦しめられる農家たちを描く。

 

 

農薬

過剰な農薬散布が、如何に危険かについては皆さんもある程度知っていると思う。けど、この映画が描くのは、その被害の”今”を映してる。ハワイで、何が起こっているのか。どんな被害があるのか。そして、それについて黙秘を続ける企業の姿勢。やるせない気持ちと、強い怒りを覚えるこの現状を、1つ、また1つと見せつけられる。農薬散布がこの数十年でどう成長したのか、と思っていたけど、全くもって成長していないのかもしれないと気づかされる。

 

 

GMO

遺伝子組み換えって、パっと聞いて悪いイメージが強いと思うんです。けど、なぜ悪いのか。それを教えてくれるのが本作。遺伝子組み換えは、スタートはあるけど終わらせることのできない、生命というシステムにあってはならないエラーを引き起こす可能性を秘めている。しかも、それを世界中で今、食卓に提供されている。この映画を観たら、有機野菜だけを選ぼうとか、そういう考えにちゃんと理由がつくはず。

 

 

 

モンサント

多分この映画で1番描きたいのがこのテーマ。ちなみにこれって、日本も人事ではないんです。日本には、種子法という法律があり、それにより公的機関で種子を保護していました。しかし、2018年に種子法は廃止され、種子の保護は民間に任されることになった。さらに、種苗法の改定によって、特許のある作物の種子を勝手に育てることも禁止された。

そんな、種子を守れない、種子を使えない世の中に、世界中がなってしまっている。大企業が儲けを出すために、種子に特許を付け、独占し、農家に売りつけ続ける。農家は買った種子から育てた作物によって採れた種子を使うことが禁止されているので、また大企業から買わざる負えなくなる。そんな、ただ大企業が儲けるためだけのシステムのせいで、世界中から急激に種子が無くなっている。

 

 

 

種子を守ろう!

そんな中で、現在行われているのが種子バンク。種子を貯蔵し、ストックしておくことで種子を守る計画。そもそもなぜ、種子を守るのか。種子に多様性が無くなると、例えば感染症などが流行すると一瞬にしてその種の植物は全滅してしまう。しかし、多様性があればその感染症に強いモノが出てきて、その種を守ることが出来る。種子の多様性を守るという事は、種全体、ひいては植物全体を守る事につながる。だから、守らなければならない。この映画は、わかりやすく、最短ルートでこの答えを教えてくれる。

 

 

 

 

種子=生命

この映画で、語り人として出ている方々は皆、種子をまるで人のように話している。よく考えてほしいのが、植物と動物で認識の異なる現状について。動物は、可哀そうだったり肉を食べないだったり、そういう意見があるけど、植物、野菜についてはほとんど語られない。植物を、種子を1つの生命として、同等に見ることさえ、まだまだメジャーでない考え方なのかもしれない。1人でも多く、その考えに至ってくれたなら、そこから第二の緑の革命が起こるはず…。この映画は、その第一歩になるかもしれない。

 

 

 

 

この映画が言っていない事

一方で、上記したようにこの映画には危険な側面がある。それは、意見が一方向にしか傾いていない事。

農薬は悪。企業は悪。GMOは悪。

確かに、それは事実かもしれない。しかし、例えば農薬が齎す利益は?GMOによって進んだ研究の成果は?企業側の言い分、意見は?

この映画には、そういう要素が全くない。議論していない。

だから、この映画を観た人は二通りに分かれてしまうと思う。1つ目は、農薬、企業、GMOを毛嫌いする意見。これは、この映画のテーマ通りに理解した場合。

でも、少し頭の良い人ならこの一辺倒さに気づくと思うんです。そう、もう1つはこのテーマの危うさに気づき、この映画全体を嘘と思ってしまう場合。

これは、2つとも正解のようで不正解でもある。農薬には様々な種類があり、化学的なものでなくて生物を使ったものもある。GMOは被害の実態が把握できてない一方で、活躍している現状もある。企業によっては環境保全を意識したり、それを専門とする企業もある。この映画には、そういう反対の意見、もしくは解決策を描いていない。だから、この映画全体にどこか気持ち悪さが出てきてしまっている。

もっと言えば、この映画で終始語っている、”種子を使った農業という自然な状態”というものも、そもそも農業という、植物を管理し、維持し、選択する行為であり、それは不自然極まりないことをこの映画では隠している。この映画は、企業や研究に付随する欺瞞さを描きすぎるばかり、自分自身の意見が欺瞞を帯びてきていることに気づいていない。

 

 

 

 

最後に

色々言いましたが、この映画が、植物を愛する者によって作られた、叫ぶような作品だということは重々理解しているつもりです。それは、私もまた、植物を愛しているから。

だからといって、そっちの意見ばかり並べれば、普通の人は戸惑うし、疑問を持ち始めると思う。もっと中立に、でも植物への愛を貫いた映画だったら、よりドキュメンタリーとして濃厚な映画になっていたと思う。

 

でもこの映画を”知るきっかけ”にするなら、これほどピッタリな映画はないとも思う。予告を見て、少しでも種子について知りたくなったなら、”まずは”この映画を観てみて下さい!!(※ちょっと専門用語多めかも……)