「僕たちは希望という名の列車に乗った」感想!!!”自分自身で、自己責任で考えろ”。この言葉の重みを知ったのは、いつからだろう。

「僕たちは希望という名の列車に乗った」

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2分間の黙祷という小さな決断が、彼らに重大な決断を迫ることに。

重大な決断を迫られる若者たちの選択を、そしてその理由を何度も何度も反芻して考えたくなる傑作。

 

 

 

本日のお品書き

 

 

無意識の正義

ハンガリーが占領国ソ連に対して革命をしてる。そんなニュースを知った若者が、クラスの皆にそれを広める。”人が死んでる”、”圧政に対する反抗”、”抑圧からの解放”。こんなワードにまみれたそのニュースが、若者たちの”正義感”を擽らないわけがないんですよね。何かしたい、してみたいと感じている彼らにとって、ハンガリーを密かに想うことは、自分達が出来る”正義”。

そんな無意識的な”正義”がまさか、重大な反乱分子とまで言われる事態になるなんて。

人生を左右する重大な決断を、急に迫られることになった彼ら。ここまでの展開は予告でもわかるんですが、びっくりするのがここまでのシームレスさ。2分間の黙祷が、あれよあれよと言う間に担任から校長へ、校長から政府へ、政府から群学務局へ。この映画が持つ、当時の空気感によって、無理矢理なこじつけもなしに、どんどん話の規模が大きくなっていく。

 

 

 

 

1956年の若者たち

当時の東ドイツの若者って、相当な重圧に耐えていたというのがヒシヒシと伝わってくる。戦争を経験した親世代からの抑圧、占領国からの抑圧。そんなのがない現代の自分達だって、18歳やそこらなら友達関係や恋人関係、受験に就職など悩みでいっぱいなのに、彼らにはそこに政治的な抑圧までかかる。

そんな彼らは、2分間の黙祷も、それをごまかすのか正直に白状するのかも、主犯格はいるものの多数決だったり説得したり、絶対に承諾を取って自分の意志を確認するんですよね。周りが何か言ったり、反対意見があったりしても、最後に決めるのは個人個人、自分自身。18歳という時に、親にも先生にも相談できずに人生の決断をするって、相当な重圧ですよ。自分だったらどんな判断してただろうなぁ、いや政府に逆らってるとか言われた時点で縮こまっちゃうだろうなぁ、とか、彼らと同じようにどんどん考えちゃうし、誰かと議論したくなる。

 

 

 

 

1956年の親たち

そんな子供たちを見守る親世代。彼らは戦争を経験して、子供には良い暮らしをさせようと必死なんですよね。だから占領国のいう事でもちゃんと聞かないといけないとわかっているし、労働階級のままではいけないという危機感もある。なのに、子供は政府に反発して学校から呼び出されるし、なんなら退学とまで言われている。親から見たら、能天気にしか見えないし、でも占領国の主張が明らかに間違っているのもわかってる。子供を守るためには、子供の自由にさせるべきなのか、子供を抑圧してでも安全を守るべきなのか。ここも、親ごとに決断を迫られるんですよね。二度と会えないかもしれない息子を見送るのって、子供を持ってみないと絶対にわからない、壮絶な葛藤があると思うし、それを急に迫られるなんてたまったもんじゃないだろうなぁ…。

 

 

 

占領国のやり方

そんな彼らを抑圧しているのが占領国。占領国の群学務局は、子供たちをどんどん追い詰めていく。最初は優しく、笑顔に質問していたのに、どんどん口調が荒く、強くなっていく。あの群学務局の女の人の変貌っぷりは怖すぎる…。

それでも口を割らない彼らに、政府は新たな方法を使い始める。それは、友人や家族をネタに、彼らを脅すこと。いや、ほんとこれが最低。親のスキャンダルのせいで、子供たちは親さえも信じられなくなるし、友達のスキャンダルで友達も信じられなくなる。正直、そこまでして首謀者を明かしたいのか!?と言いたくなるぐらい、最低のやり口を使ってくる。

 

 

 

 

自分自身

そんな占領国のやり方によって、子供たちの心はどんどん裸にされていく。親の建前も、友達の意見も、恋人の意見も、全てが脱がされて、自分自身の決断を迫れていく。でも、いや脱がされたからこそ、彼らは再び考えだすんですよね。親が本当に伝えたいことは何だろう、親がなぜ自分を大切にしてくれるんだろう、友達の決断を尊重することの大切さ、友達を許す大切さ。そんな、建前とは違う、内面のぶつかり合いこそ、彼らが最後に選択する決断の、判断材料になっていく。自分自身の意見を迫られることで、周りの人の本質が見えてきて、それが自分を形成しているんだと気づかされる。

学校でも、学校じゃなくても学ぶことを選んだ彼らが、学校で学んだのは知識だけでなく、こういう周りの人の本質を見る力だったんだと思う。それを理解したから、彼らは諦めずに卒業試験を受けようと立ち上がった。

私自身も、何か決断する時、自分の意見を求められた時に、周りの意見に”流される”んじゃなくて周りの意見を”尊重”できる人間にならなければ…。

 

 

 

 

最後に

話題沸騰で、ミニシアター系ながらかなり混んでました。

気になった方は、是非映画館で見てみて下さい!そして、議論を交わしましょう!!