「アメリカン・アニマルズ」感想!!オーシャンズにも、レザボアドッグスにもなれなかった奴ら。
「アメリカン・アニマルズ」(2D字幕)
何かをやってみたい。そんな誰しもが持つ動機から起こったある事件を描き切ることで、ただの大学生がなぜこんなことをしたのかに迫る、手に汗握る作品!!
本日のお品書き
バカな大学生
なぜ、大学生はバカなんだろう。理性ではその行動がバカだとわかっていても、その理性を麻痺させてまでバカなことをしでかす。
その動機は様々だと思いますが、常々思うのは”何かをしたい”という気持ち。高校生から大学生に、未成年から成人に。どんどん制約が外れていくけど、”何かをした”から制約が外れたわけじゃない。勝手に外れていく。どんどん制約が外れると、どんどん自由になる。けど、そこには解放感よりも不安感のほうが遥かに大きいんですよね。”何かしたい”、”何か出来るんだ”という気持ちが無いと、そんな不安感に押しつぶされそうになる。だから大学生は、手軽で何かを達成できる”バカ”をしでかす。
アメリカン・アニマルズ
そんな大学生の中でも、最上級にバカをしでかしたのが本作の4人。彼らは芸術、軽犯罪、座学、体育と四者四様に長けているから、この強盗事件を計画している時も、これがとんでもないことになる。とんでもないバカなことだ。というのはわかっているんです。けど、それでもどんどんどんどんやってしまう。最初は小さなバカだったのに、このバカなことをしていないと不安に押しつぶされそう、バカなことをして頭を麻痺させてる時だけがその不安から解放される、という快感にどっぷりハマっていく。
笑っていいのか、悪いのか。
そんな彼らの強盗を描く本作は、予告とは一切違う雰囲気で進んでいく。「オーシャンズ11」や「レザボアドッグス」のような強盗モノとしてはバカが過ぎるし、かといってコメディモノとしてはテンポが物凄く悪くて”笑っていいのか悪いのか”という絶妙なバランスに仕上がっている。細かい所だと手袋が邪魔でガムテープが上手く剥がせなかったり、大きい所だと脱出時にエレベーターで間違った階を押しちゃったり出口が閉まってたり。もっといえば、電話番号をディーラーにそのまま自分の番号を伝えちゃったり。こういう、聞いた限りだと絶対笑っちゃうような展開が、本作では絶妙に”笑えない”。
こういうミスが起こると登場人物は真剣に焦るし怒鳴る。第三者から見るとバカなミスだけど、彼らにとっては人生が掛かってるから。この映画は、強盗モノにも、コメディモノにもならないように慎重に作っているんです。
犯罪ドキュメンタリー
じゃあこの映画のジャンルはなんなのか。この映画はドキュメンタリー。それも、犯罪を”した側”の視点で描くドキュメンタリー。
強盗計画を思いついた時は死ぬほどワクワクした。
計画中は、葛藤とワクワクが混同したなんとも言えない時間。
強盗決行日には、もう突き進むしかない。
強盗を終えてみると、何をしても刺激的じゃない。
何をしても楽しめない。
後悔と疑念だけが残る。
逮捕されたことへの、安心感。
被害者への謝罪の思い。
こんな、彼らが強盗しているときに感じていたり、考えていたことが直接、本人達から僕たちにぶつけられる。そして、その後に彼らが思い、苦しんだ葛藤についても、ドストレートにぶつけられる。
これを見ても、人に迷惑かけて”バカ”なことをしたいか。”特別な存在”になりたいか。と、問いかけてくる。
そして、その先には被害者の方の思いがつづられる。彼女は「人が一線を越えてしまう、意味が分からない」とコメント。被害者はもちろん、加害者も、そして加害者になる前の”何かしたい”人達も、この一線を越えてしまう意味はわからない。だからこの映画では、4人の強盗犯のあらゆる視点をごっちゃに見せることで、”人が一線を越えてしまう”ことを描こうとしている。この映画は犯罪ドキュメンタリーであり、犯罪防止映画。
彼らのその後
出所した後の彼らは、4人とも自分の道を見つけて彼らなりに社会復帰をしていた。ここの見せ方、インタビュー形式から立ち上がって自分の生活に戻るあの見せ方が凄く良いんですよねぇ。
でも、ふと当時の自分達を思い出してしまう瞬間がある。一度やってしまったことは、一生忘れられないんです。罪を償っても。
最後に
コメディモノかと思ったらかなりドスンと重たい映画でびっくりしましたが、今、大学生であるときにこの映画を観れて、本当に良かったと感じてます。現役の大学生、そしてこれから大学生になる人、大学生だった人、”何かしたい”人は是非映画館へ!!