「ジョジョ・ラビット」感想 子供の頭の中には、いつだって独裁国家が繁栄しているんだ!

ジョジョ・ラビット」(2D字幕)

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子供だって悩んだりするし、挫折もするし、友情に恋に大変なんだ!!

あらゆるものを使ってそれを乗り越えてきた、全ての大人が肯定される大傑作。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくらの独裁国家

何かをするための第1歩が踏み出せないジョジョ君は、アドルフヒトラーに励まされて「ハイル・ヒトラー!!!」と叫びながら家を飛び出す!そして向かったヒトラーユーゲントの合宿。そこでは少年たちに戦闘訓練をさせていた…。

でもジョジョくんたちにとってはこれが学校だし、教わることは授業だし、友達と一緒に頑張る場だから、彼らは明るく元気に練習している。この、独裁国家を子供視点で見上げたような展開がとんでもなくワクワクするんです。小さい頃から当たり前のように独裁国家ナチスドイツに触れてきた彼らにとって、この文化は侮蔑的に見るわけでもなんでもなく、ただただ当たり前の存在。だけど一方で観客は、彼らの教わる教育の歪みを感じながらこれを見る事になる。さらに劇中では、ユダヤ人への差別のようなナチスドイツの痛々しく怖い部分を見せているんだけど、それが子供のフィルターを通して見ることになるせいで、観客にはなんとも滑稽にさえ見えてくる。この現代の常識と子供たちの常識のズレが、まずコメディとして面白い。そんな常識が最もズレた存在こそ、ジョジョくんのイマジナリーフレンドであるアドルフ・ヒトラー

 

 

 

 

 

 

 

イマジナリーフレンド

皆さんは、幼いころに空想の友達がいましたか?もしくは、空想の世界を持っていましたか?

言わずもがな、ボンクラな少年時代の僕の目の前にもそれはそれは広大な空想の世界が広がっていました。そこには空想のお友達もいたし、空想の生き物たちもそれはそれは沢山いました。彼らは自分(僕)の思い描くままに生きていて、自分(僕)の経験してきたものが強く反映されていて、自分(僕)が好きで信じてるモノが具現化していた。イマジナリーな世界は、少年時代の安息の地だったんです。

そして本作のジョジョ君のヒトラーもそれは変わらない。ヒトラーは、ジョジョ君が信じてやまないナチスドイツの具現化であり、そのヒトラーが放つ言葉、起こす行動は何から何までジョジョ君の思い通り、思うがままのアドルフヒトラーなんです。ユダヤ人のことは嫌いだけど動物の命を大切に思ってるし、なぜかタバコを勧めてくる(後述しますw)。重要なのは、このヒトラーナチスドイツの具現化ではなく、ジョジョにとっての”ナチスドイツの具現化なんです。

 

 

 

愛は最強なんだぜ

そんなジョジョ君の思想を惑わすのが、家で母親が匿っていたユダヤ人少女エルサ。最初は彼女に反発していたジョジョ君だけど、次第に教育されてきたユダヤ人と目の前にいる少女の違いを目の当たりにしていくことで、ジョジョ君の固定概念が覆されていく。子供のころ、信じてやまなかったことが否定されていく絶望感がジョジョ君を襲うんだけど、それを優しく包み込む母と、歩み寄ってくるエルサ。この2人の愛が、ジョジョ君を少しずつ変えていく。

愛ってのは、自分の固定概念さえ覆してしまう最強の能力を持った蝶々みたいな、最強の感情。自分だけの世界、独裁国家を作り続けていたジョジョ君が、愛という感情によって、誰かを思いやる、誰かを愛する、そして誰かから愛されることを知ることで、ジョジョ君の独裁国家が崩壊していく。愛は、ちっぽけだけど大きな国家さえも壊しちまう、最強のものなんだぜ!!

 

 

 

 

 

 

脱却!!

そんな最強の感情を装備したジョジョ君の前に、最後に立ちふさがるのがアドルフヒトラー。街全体が降伏して敗戦が決定していくなかで、ジョジョ君の固定概念はどんどん崩壊していく。自分を支えてくれた、安息の地だったヒトラー、それは例えばクレヨンしんちゃんで言うぶりぶりざえもんであり、のび太で言うドラえもんであるような、大人になるために絶対に別れなければならない子供時代の存在として、ジョジョ君は残酷なまでに一方的に突き放す。自分が成長するために。自分が明確な一歩を進むために。自分の独裁国家を崩壊させるために。

このシーンは自分が子供の頃に思い描いていた、もはや曖昧にもなってしまったイマジナリーフレンドたちを思い返してしまい、そしてそんな彼らと決別した僕の少年時代が肯定されたような気がして、嬉しくて泣いてしまう場面でした。

 

遊ぶ事、考える事、愛、そして友情。僕らが少年時代に経験した数々の出来事が、ナチスドイツで生きる少年を通して肯定されていく大傑作でした。

子供時代の、イマジナリーフレンドからの脱却を目指していたあの頃の自分に、全力でエールを送りたくなりました…。

 

 

 

 

新コーナー『映画といきもの』--ナチスドイツと生き物--

さてさて、今回から『映画といきもの』というミニコーナーを入れてみました。映画と生き物は、切っても切り離せない存在。生き物が好きな僕が、そんな生き物を注視した視点で映画を解釈してみよう!というなんとも珍妙なコーナーです。ただ、1人の大学生の戯言ではあるので真偽のほどはどうか「ほんまでっか!?」というスタンスで読んでくださると幸いです。

 

今回は当然、ジョジョ”ラビット”でいこうかと思ったんですが、ウサギってかなり人気度の高い動物なので結構みんな詳しく知ってるんですよね…。ということで、今回のテーマはナチスドイツと生き物+環境にしてみました。

現在、ペットに対する法整備がかなり進んでいる事からペット先進国とも言われるドイツ。その歴史はなんと、1933年のライヒ動物保護法”にまで遡ります。自然保護、動物保護に注目が集まっていた当時のドイツで指示を集めるため、そして宗教上の理由からユダヤ人への迫害を定着させるべくこの法律は出来上がりました。つまり、劇中でウサギを殺せなかったジョジョを慰めてくれたイマジナリーヒトラーは、このような法整備を見てきたジョジョ君の印象からきた妄想だったのかもしれません。まぁ、史実のナチスドイツは戦争終盤にはこの法律をほとんど無視してたんですけどねw

さらにもう1つ、環境についてはナチスドイツは反タバコ運動を行いました。アーリア人の健康を維持するために、彼らは健康被害を避けるべく禁煙を促しました。さらにヒトラー嫌煙家で、軍内部ではタバコを吸わない人が結構多かったそうで。しかし劇中では、ヒトラーは何度もジョジョ君にタバコを勧めてきます。このヒトラーが、史実通りの人物ではないですよーと思い出させてくれる要素として、劇中に何度も散りばめたのかもしれませんw

ナチスドイツと生き物に注目してみると、この映画に出てくるヒトラーが”イマジナリー”な人物である!という要素を、とても重視しているということが見えてきました。

 

 

 

 

 

最後に

子供時代のあらゆる記憶が呼び覚まされ、それが1つずつジョジョ君に肯定されていく大傑作でした。誰もが楽しく泣けて、幸せな気持ちになれるこの映画を、是非映画館で観てください!!

 

※ミニコーナーの必要不必要を教えて下さると嬉しいです