「よこがお」感想!!!復讐という言葉は、爽快感と罪悪感という2つの”かお”を持つ。

「よこがお」

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被害者と加害者。あまりに正反対な両者が曖昧になってしまった時、人間はどうなってしまうのか。

”復讐”という言葉を軸に繰り出す演出、演技の数々に、どこか奇怪な面白さが浮き出す不思議な作品。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流れるような演出

2時間で物語を描き切るのが映画。でもこれって難しいし、成功している映画もあれば失敗してる作品も多数あるのも事実。そんな中で本作は、本当に素晴らしい2時間の使い方をしている映画だったと思うんです。

和やかなシーンも、激しく揺さぶられるシーンも、全てが流動的に過ぎていくから心地良い。なのに、どこかザラザラする独特の質感を持つ本編に、それを助長するサウンド。言葉では語らず、まさに”よこがお”の表情の変化だけで登場人物の感情を描き、チャイム音やクラクションなどのサウンドをこれでもかと不快感MAXに鳴らし、呼吸するように音楽を使う。

この映画の演出は、”生きている”ように感じられるほどに綺麗に歪。

 

 

 

 

被害者と加害者

被害者と加害者は当然、決定的に分けられたもの。だけど、本作の主役である市子さんはその絶妙な位置にいる。加害者側でもあるし、被害者側でもある。そんな宙づりな状態でどんどん衰弱していく彼女。信じていた、もっと言えば同じ被害者だと思っていた人からの裏切り、愛した人からの別れ、そしてそれを追い立てる世論。どん底に落ちた彼女が、最後に頼るのが相談窓口。だけどそこは、”被害者”は相談できるけど”加害者”は相談できない…。

そこで遂に、彼女の中で唯一残っていた糸が切れてしまう……。

 

 

 

復讐

そんな市子さんの前に現れるのが基子の彼氏(?)。そこで行われるSEXの、あまりにグロテスクな感情渦巻く真っ暗なシーンたるや。

そこから彼女は、静かに狂っていく。この過程が、本当にシームレスに感じ取りやすくて人間臭い。ドン引きしてしまうような展開、例えばラストのあの展開さえも、罪悪感に加えてどこか爽快感さえ覚えてしまう、最悪に共感してしまう。ああ、もうこんな状況ならやるしかない。歯止めを効かせて抑制していたからこそ、はじけ飛ぶと一気に進んでしまいそうになる。

 

 

 

演技力

そんな複雑な関係性が魅力な本作は、役者陣の演技が本当に凄い。上記したような主演の筒井真理子の演技力を筆頭に、池松壮亮のミステリアスな魅力、そして基子役の市川実日子。だれもかれも、幸薄そうな演技が本当に上手い。特に市川実日子は、よくこういう幸薄そうな役を演じているけどこんなにも、幸せそうな不幸そうな、緩やかに上下するキャラクターも、違和感なく演じてしまうんだと驚きました。

 

 

最後に

正直この映画、かなり感想を文字にするのが難しい。なぜならこれこそ、”映画体験”を含んでこその作品だから。映画館で、息を飲むように彼らの演技力、流動する演出、本能的なサウンドを体中に浴びてこそ、本作は完了する。

語彙力の無さが露呈した感じもしますが、”何言ってんだ???”って人は是非、映画館で観てください。絶対に損しない、”生きている”演出の数々があなたに襲い掛かるはず!!