「バジュランギおじさんと、小さな迷子」感想!!!無価値に思える”優しさ”が、どれほど価値があるものかを教えてくれる大傑作

「バジュランギおじさんと、小さな迷子」(2D 字幕)
イメージ 1


満点の”優しさ”が観る人を包み込む、大傑作!!!



今流行中、インド映画
昨年の「バーフバリ 王の凱旋」以降、かなりのペースでインド映画が上映されるようになりましたよね!!でも、インド映画ってそもそもあまり触れたことがない人も(私も含め)多いので、その文化的な違いなどでなかなか難易度が高いイメージの人もいるかもしれません。

私自身、インド映画は数えるほどしか観ていない素人なんですが、その素人目線で、この映画がどのぐらいの難易度の映画なのか。
ここでは
レベル1:踊りなども少なく、すんなり見られるもの(バーフバリなど)
レベル2:踊りはあるけど、インド的文化を知らなくても楽しめる(ダンガル、きっと、うまくいくなど)
レベル3:インドの分化を少し知っていると楽しめるもの(PKなど)
レベル4:展開やお話の構成、演出までインドらしく、正直とっつきにくくあるもの(スタンリーのお弁当箱、マガディーラなど)
という区分で行います。

このレベル分けだと、本作はレベル3ぐらいだと思う。踊りが多分にあるのでインド映画らしく楽しめると共に、インドの宗教観や他国事情を少し知っているとすんなり楽しめるような映画でした。といっても、インドはヒンドゥー教徒が多くいるだったり、パキスタンイスラム教徒が多いんだだったり、インドとパキスタンは宗教を巡って戦争してきた、というような事情を軽く知っているだけで大丈夫。しかも、この情報もある程度劇中で説明してくれるのでまっさらで行ってもお話に置いて行かれることはないと思う。





バジュランギおじさんと、小さな迷子のストーリー
タイトルからわかるように、この映画の主役はパワン(バジュランギおじさん)と、小さな迷子ムンニ(シャヒーダー)。ヒンドゥー教を崇拝し、絶対に嘘や間違ったことを許さないパワンは、ある日小さな女の子を見かける、その子は、喋ることができない上に、パキスタンから来たらしいが、自分の出身の町の名前さえ知らない。さらに、その子はヒンドゥー教を崇拝している。なんとかパキスタンに帰してやろうとパワンがインド国内のパキスタン大使館にその子を連れて行くと、大使館はインドの過激派によって襲撃されてしまう。
その事件のせいでインドとパキスタンは数か月の渡航不能を勧告する。断絶してしまった両国によって、正攻法では女の子を家に帰すことが出来なくなってしまったパワンだったが、彼は自分の”正直さ”、そして”優しさ”をぶつけることで、次々と苦難を乗り越えていき、やがては大きな”優しさ”を生み出すことになる…。
イメージ 2







※ここからは、多少ネタバレを含みます





繰り返される天丼ギャグと、2人の魅力
まず、この映画の設定って、下手に作るとかなりイラっとさせる作りだと思う。宗教に馴染みのない私達にとってパワンの底抜けの正直さは「もう適当に嘘つけばいいじゃん…」と思う要素だし、ムンニのトラブルを起こす理由がいたずら心ってのもイラっとする要素。でも、それを一切感じさせないのがこの映画の物凄いところ。宗教に馴染みのない日本人でも、パワンの信念とそれに対する誠実さを見ることで”何かを信じること”がどれだけゆるぎないことなのかを自然に理解できるし、ムンニのいたずら心も彼女のびっくりするぐらいの満点の可愛さとしぐさで、この行動も6歳の子供だから仕方ないし、その行動も含めてこの子のアイデンティティだと思わされる。
だから、国境でのパワンの天丼ギャグも、ムンニの度々行ういたずらも笑って観ることが出来るんですよね。イラっとさせそうな要素を、逆に彼らの魅力へと昇華させている。この2人以外のキャラクターも、どれだけ嫌味に登場しても最後には全員が大好きになってしまう。最初に見えていたものが全てではない、っていうのもこの映画のメッセージなのかもしれません。





”優しさ”は人を変える
劇中の登場人物のほとんどは最初、パワンの優しさを真に受けないんですよね。それは、”優しさ”という無償のものに対する不信から。何も見返りのないことを他人にやるなんて、という不信。
しかしそんな人達を、パワンは変えていく。
パワンがお世話になっている家のおじさんはイスラム教徒であるムンニを助けることに否定的だったが、それをやり遂げたパワンから優しさを学び、最後には拍手で彼を迎えに来る。
国境で出会ったパキスタン軍兵士にパワンは誠実に、正直に話すことで彼らのインド人に対する考え方を変える。
パキスタン内のバスの乗組員に、切符を持っていない自分の事情を正直に説明することで彼の優しさを引き出し、彼に「インドとパキスタン、両国にあなたのような人がいれば」とまで言わせてしまう。
不法入国したパワンを拷問した捜査官は、自分の愛国心を問いただし彼を助けることに。

一方で、パワンも変わっていく。
モスクに自分は異教徒だからと入らないでいると、導師に「関係ないよ、だからここの扉は常にあけてあるんだ」といい、さらにはイスラム教の導師なのにも関わらずヒンドゥー教の挨拶をしてくれる。そんな出会いによって、パワンは宗教を超えた、”優しさ”に気づいていく。




大感動のラスト
そしてその”優しさ”が臨界点に達したラストは、本当に涙なしには見れません。大号泣しました。
パワンがイスラム流に、ムンニ、いやシャヒーダーがヒンドゥー流に交わす別れと感謝のあいさつ。そしてインドとパキスタンの国を超えた、自分が内包する”優しさ”を曝け出そうと集まった人々。
この世に、国境や、宗教、文化、愛する者の違いがあっても、”誰かに優しくしたい”という原理的な欲求、無価値に見えて何よりも価値がある”優しさ”は、誰の心にも眠っているんだ、そう思わせてくれる大傑作。

絶対に映画館で観るべきだ!!!!