「ガリーボーイ」感想 貧乏に悩める奴らの、希望と成り得る奴さ。

ガリーボーイ」

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「俺には価値がある。」
そんな言葉で自分を鼓舞してきたすべての人に捧ぐ、最高にかっこいいヒップホップサクセスストーリー。
貧乏を舐めるんじゃねぇ!!!

 

 

 

 

 

 

 

路地裏生まれ

ガリーボーイ”の意味通り、ムラドはスラム街で育った大学生。でも彼の境遇はよくある“貧困にあえぐ少年”とは違い、大学に通い可愛い彼女までいる。一見すると幸せにも見える彼の生活ですが、これこそ地獄だと思う。両親が貧困の中で暮らしてきたことから息子にはいい暮らしをと思い学費を工面する。そこから生まれる息子への期待。ムラドは貧困と期待に挟まれるという地獄に直面しているんです。
この境遇が私と非常に似ていて、もうそこについては共感せざる負えない、地獄のような居心地の悪さを感じました。親からの期待に応えようと必死になればなるほど、成りたい自分から遠ざかっていく。周りからは期待されて羨ましいという目で見られてしまい、親のひいたレールを進む残酷さは当事者にしかわからない。彼女も友人もいるのに、ムラドは孤独なんです。

 

 

 

 


百獣の王

そんなムラドの前に現れたのがMCシェール。彼はムラドとは対照的に様々な衣服で自分を装飾し、ラップで自分を表現し、皆から喝采を得ている。
このシェールという人物が、本当に良かった。私はヒップホップは好き(詳しくはありません)なんですけど、ヤンキー文化は苦手なんです。ラップバトルのようにヤンキー文化を強く意識したヒップホップをなぜ私が好きなのか、これはずっと疑問だったんですがこの映画が答えを示してくれた。つまり、シェールこそ私にとって理想の“ラッパー”だったんです。
見た目はヤンキー的だし、ガタイも良い。彼が登場してムラドが弟子入りした時、正直彼の見た目から「後々、こいつと争うことになるんだろうな…」と思っていたんです。だけど彼は劇中絶対に暴力に走らないし、他人を常に思いやる。ぽっと出のムラドへ常にアドバイスし、励まし、支えている。さらに自分に勝ったムラドに対しても、彼は笑顔で祝福してくれる。彼はヤンキー的なのに、ヤンキーではない。この広大なまでの心の広さこそ、“カッコいい”

 

 

 

 

 

 

 


俺には価値がある

シェールのおかげでラッパーとして成長していくムラドを邪魔する、懐古主義な父親。貧困にそんな懐古主義的考え方という重圧に負け、ムラドはガリーボーイとしての自分を諦めそうになる。金持ちにバカにされ、外国人からバカにされ、人から舐められ続ける中で彼が叫ぶのが、「俺には価値がある。」
そこから、様々な重圧を解き放って、自分の価値は自分が決めるんだ!!と言わんばかりに成功していくムラドの姿は、もはや脊髄反射的に“かっこいい”と思えてしまう。上記した私自身の現状とさらに私とほぼ同い年設定というのも相まって、彼の成功は“自分が成りたかった存在”として眩しく映る。サクセスストーリーは数多あれど、ここまで自分と重なる存在の成功を楽しめる、最高に気持ちいい映画に出会えるとは思いませんでした。

 

 

 

 


ラップバトル

そんな本作最大の魅力はやはりラップバトル。
序盤の自分の育った街を歌うのも、そこからシェールとのコラボでスラム街をMVに納めるのも、さらに自分の生き様こそラップバトルに使いこなすバトルシーンも、全てがかっこいい。自分を抑圧してきた貧困こそが、ガリーボーイにとっては自らを爆発的にぶち上げるまさに“起爆剤”になっている。何も持ってないと思っていた自分が、自分が生まれた街を糧に何かを作り上げていく。この痺れるほどかっこいいヒップホップ描写はこの作品特有の唯一無二な魅力。
中でも中盤のシェールとのMVシーンは“スラムを武器に成り上がる”精神が最高潮に出ていて大好きだし、終盤のラップバトルでの鼓動演出なんて言葉抜きにブチ上がるかっこよさ。これこそ、ヒップホップ的カッコ良さなんだ!!と気づかされる。

 

 

 

 

 


最後に

私みたいにヒップホップに詳しくない人でも絶対に楽しめる、娯楽にして最高のサクセスストーリーでした。スラムから王になったムラドがラストに彼が語る「お前はもっと強い」という言葉。彼の生き様を描いた本作は、誰しもを鼓舞する大傑作だと思います。是非映画館で、浴びるようなライミングをお楽しみください!!

 

 

 


(感想を韻を踏んで書こうと思ったんですが、私はそんな才能持ち合わせていませんでした…w)