「ウインド・リバー」感想!!!ウインドリバー保留地が内包する、何重ものアメリカの負の側面とは…。

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今年最後の鑑賞映画!!半年ほど前にかなり話題になった、ジェレミーレナー主演作。




ウインドリバー保留地
本作は、監督が「ボーダーライン」の脚本を手掛けていたこともあってか、かなり「ボーダーライン」に近しい面白さがあった。つまり大好物の映画。
「ボーダーライン」が、周囲が常に緊張に溢れていたのに対して、本作は、外面はにこやかで歓迎的なんです。これはもちろん、これまでの様々な映画と同じく、アメリカ国民としてFBIの捜査には協力せざるおえないから。ここでFBIや警察に銃を向けることは、絶対に勝てないものに喧嘩を売ることになるから。けど、田舎では違う。田舎では、警官が6人しかおらず、管轄する土地も膨大である。だから、FBIでも、警官でも撃つことが出来てしまう。その行為に対するリスクが、余りにも少ないから。
この映画は、アメリカという国の強さに隠れた、目を背けたくなるような弱い部分を映し出している。銃を携帯できること、移民で形成されたこと、それに伴う功罪が集まった土地が、アメリカの田舎である。さらに、保留地は、ネイティブアメリカンを押し込めるために作られた土地であるうえ、ウインドリバー保留地は地下に核実験施設が設けられたことで国連に提訴されている。つまり、ウインドリバー保留地という土地は、アメリカの田舎という側面と、アメリカのエゴが生み出した負の遺産という側面を併せ持ち、白人への執念とネイティブアメリカンへの差別意識が混在する土地なんです。





事件
そんな土地で起こったのが、18歳の少女の死体が見つかる事件。本作において、この事件の真相を追いかける、というような推理ものの要素はほとんどないんですよね。本作では、その事件を追う過程でアメリカの田舎で腐っていくしかないギャング、軍を退いたことで行き場を失った白人、ネイティブアメリカンが直面している現状が見えてくる。彼女は必死に生きようとしたという事実と、それを無下にしたエゴイズム。そんな最悪の事件が、アメリカの田舎では起こり続けているのに、それに対する統計がなされていない。つまり対策が講じられていない。これって、日本も他人事ではないし、どんな国にもある問題だと思う。色んな映画のようにポリティカリーコレクトを意識して様々な人種を並べて人種差別を訴えるより何倍も意義のある映画だと思う。これを見てアメリカ人はどう思うのか。そして、これを見た他国人はどう思うのか。それこそが、この最悪の状況を打開するための第一歩なんじゃないかなぁ。





暴力
本作で印象的なのが、暴力に至るまでの過程。急に殴ったり、撃ったりはしないんです。最初は小さな出来事から、それが次第に熱を帯び、沸騰し、限界を迎えたところで、一瞬で起こってしまう、もう引き返せない行為。それこそが暴力。銃を手に持った人と渡り合ったり、マッチョな男たちの最低なノリだったり。
暴力を、本当に怖いと思いしらされました。





名言マシーン、ジャレミー・レナー
この映画において、ジェレミーレナー演じるコリーは物凄い数の名言を言うんですよね。彼は職業柄、この地獄ともいえる土地と、生死と常に隣り合わせである上に、彼もまたこの土地の被害者である。そんな彼が言う言葉で最も印象に残ったのは、今回殺されたナタリーの父に言ったこの言葉。
「人から聞いた話だけど、良いニュースと悪いニュースがある。悪いニュースは、あんたの心に空いた穴はもう埋められることはないだろう。良いニュースは、あんたがあの娘を想い、痛み、苦しむことで、あんたはあの娘を思い出せるだろう。痛みを忘れちゃいけない。」(セリフ自体はかなり違う言い回しになっていると思いますw)
下手に慰めるんじゃなく、痛みさえも肯定させるこのセリフに、セリフ自体はかなり序盤なのに泣いてしまいました…。
他にも、いちいち名言をいうジャレミーレナーはカッコイイし、西部劇だし、彼のベストアクト確定かもしれない!!




最後に
観た映画館が良かったのか、サウンドが本当に良い映画でした。特に銃声は、腹に響くというか。。。もう上映している映画館はかなり少ないですが、絶対に観るべき大傑作でした。是非映画館へ!!次回は下半期映画ベスト!!


エンドロールで、主役のコナーより上の先頭にナタリーがクレジットされてたんですよね…。