「万引き家族」感想! ※ネタバレありです。

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 いつも行く映画館、ほとんど観客がいないんですよ。それも、私が観たのは平日のお昼の回。もしかしたら1人っきりかも…ってぐらいの気持ちで映画館に入ったんですが……
めちゃくちゃ混んでました…!というか、満席でした!!

最近だとアベンジャーズ3の公開初日並みのお客さんの量で、店員さんも大慌てで作業してました…w

それではなぜ、これほど多くの人の注目を集める映画になったのか。それは確実に、タイトル一発だと思う。
”家族”という最も身近なワードに、”万引き”という最も関わりたくない犯罪を合わせる。このギャップはずるい。こんなの絶対観たりますよねw




凄すぎる役者陣
リリーフランキー安藤サクラ樹木希林、そして松岡茉優と演技派俳優を大量に起用したことで、本作の柴田家は、本当に1つの”家族”に見えてしまう。特に、ご飯を食べるシーンでは、みんなが生活感のあるダラダラをしながら、それぞれ口々に喋りあってごちゃごちゃするあの感じが、物凄く”家族”だった。この演技派俳優たちに負けない演技力を見せていたのが、佐々木みゆ演じるゆりと、そして何より城桧吏演じる翔太。この2人の子役が、演技とは思えなかった。まさに、そこにいる。特に翔太の立ち位置は、本当に複雑なのに、その心境の変化をしっかりと感じさせる演技は、子役とは思えませんでした。
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柴田家の人々
柴田家で、最も家族同士の交流があるのが治。治は、一家を背負うどころかその日暮らしの宙ぶらりん状態。なんでも「何とかなるだろ」という楽観的な見方と、何事にも自信のない気の抜けた人物。治を中心に、この家族は抜け出せない”何か”に引き込まれているんですよね。それは貧困だったり、苦悩だったり…。
そして治の妻信代。彼女も治と同じように、どこか気だるそうに、ダラダラと毎日を生きている。
そんな2人がやっと見つけた”生きがい”こそ、この柴田家。
初枝と暮らし始めたのは、年金目当てかもしれない。翔太の出所もハッキリしていない。亜紀との暮らしもお金目当てかもしれない。利用するために集められた集団かもしれない。
けど、ゆり。ゆりだけは、2人の”善意”で迎え入れられたことがハッキリしている。


翔太
翔太と治の関係は、誰もが父親との昔の思い出を思い起こしたはず。翔太は、治といる時間、男だけの時間がなんだか楽しい。この気持ち、すっごいわかります…w
さいころ、父親と買い物に行くときはなぜかちょっと、ワクワクというか、仲間というか、そんな感情が湧いてたんですよねぇ。
でも翔太は、治を「お父さん」とは言えない。なぜなら、翔太の本質は、真面目で勤勉な性格だから。そんな翔太が、だんだん治が教えてくれることに疑問を持つようになってくる。
一方で治は、翔太の心境の変化を内心理解しているけど、理解しないようにしている。なぜなら、”万引き”だけが、教えられることだから。”万引き”だけが、自分が父親としての尊敬を勝ち取れるものだから。リフティングなんて、やってこなかったから…。
そんな父を、最後に「お父さん」と呼ぶ。翔太にとって、養護施設に入ることは良いことづくめかもしれない。勉強はできるし、友達もできる。治と過ごした日々は、傍から見ると翔太にはなんのためにもなっていなかったかもしれない。”万引き”を教えるなんて、最低だ。だけど、翔太は治から、お父さんであろうとする苦労、そしてお父さんからの愛を学んだ。だから、最後に感謝と尊敬をこめて「お父さん」と呼んだ。治は、初めて”万引き”以外で尊敬された…。


亜紀
3人の中で最も存在が謎なのが亜紀。暮らしに不自由していたわけでも、家族に嫌気がさしていたわけでもない。”なんとなく”イヤになったんだと思う。”なんとなく”自分がイヤになって、1度イヤになるとどんどんどんどんイヤになって、堪らなくイヤになってしまったんだと思う。
そんな彼女を救ったのが初枝。
おばあちゃんっ子な松岡茉優は、本当に可愛すぎました…w
そんなおばあちゃんっ子の亜紀に、初枝がやってきたことが告げられる。これを信じたのか、信じなかったのか。

どちらか明言はされませんが、彼女は再び柴田家に行く。個人的に、あのシーンは亜紀が初枝に感謝を述べに来たんだと信じたい。…ちょっと、偽善的すぎますかね…?w



ゆり
上記した通り、ゆりは善意で2人に連れてこられた。翔太の出所はハッキリしませんが、ゆりを連れてきた行動から、翔太もまた、本当に2人に救われたのかもしれません。いや、もしくは翔太の時を反省しての行動だったのかもしれませんが。
そんなゆりは、柴田家で初めて家族の愛に触れていく。そんな彼女が、再び元の家族の下へ戻ったときのあの顔は、忘れられません。彼女は、生きる希望を与えられ、そして奪われた…。

万引きをすることは、絶対にいけないこと。それは、本作を観た人は当然のようにわかっていると思います。けど、そんな彼らを引き裂いたことで起こる顛末は、犯罪を犯した人々=罪を償うべきという倫理を破壊するほど、両者に心が触れる。どう頑張っても、犯罪は悪いことだし、でも家族を奪うこともまた、悪いことだし。。。





”家族”って、不思議ですよね。例えば、友人なんかは自分で選ぶことができる。けど、”家族”は1度固定されると変えが利かない。友達との縛り付けが友情なら、家族の縛り付けって、なんなんでしょう。
血縁関係?お金?
現代、”家族”を定義づける最も一般的なものは血縁です。しかし、生まれてすぐに決められた定義に従うことで失われた命も多くあるのも現実。”家族”を結びつける、最良のものって、なんなんでしょうか…ずっとずっと、何度も考えても答えは出てきませんが、これだけは言えると思います。
家族を決めるのは”血”かもしれない。けど、家族を留めておくのは”愛”。柴田家は、バラバラになってもなお、”愛”で繋がっている。彼らはまだ、”家族”なんだと、私は思います。