MGSFN---第2章---「蛇の王」 求心者達の真実 中編

※このブログはMGS4の、その後をストーリー仕立てで考察するものです。第1章を上げているのでまだ見てない方はそちらからお願いします。
MGSのネタバレを含むので、ご了承ください。
MGSファンの方の意見や感想が聞きたいので、出来ればコメントお願いします!
Twitterでの更新は中止になりましたので、このブログで随時更新していきます。Twitterでは前回までのあらすじや更新告知なんかをします。

地下にたどり着いた雷電とガデューカは辺りを見渡した。
このフロアは、まるでよく映画なんかで見る、巨大な研究室のような作りをしている。

ガデューカ「ここからは手分けをして探そう。雷電、お前にはそっちを頼んだ。」
雷電「ああ。見つけ次第、連絡する。」

2人は分かれて歩き出す。

雷電は身を隠しながら辺りを偵察してみた。しかしここは研究者ばかりで兵士の姿はない。
素早く行動すれば、誰も傷つけずに攻略できそうだ。

雷電はリンクスについての情報がありそうな部屋をくまなく探したが、研究室はどれも指紋認証型の鍵がかかっているせいで、ほとんどの部屋には入れなかった。

仕方なく前へ突き進むと、兵士が2人、扉を警戒しているのが見えた。ここを警備する兵士なら、リンクスのことを知っているかもしれない。それに今まで見てきた中で唯一兵士が守っている部屋だ。怪しすぎる。

兵士から情報を得るため、雷電は兵士達に接近する。


兵士を慣れた手つきで無力化し、雷電はその扉に向かった。
扉は鍵が開いており、なんのトラップもなしに入ることができた。
扉の奥は灯りがなく、吸い込まれそうなぐらいの暗闇になっている。

雷電は警戒しながら奥へ進む。音の反響は、かなり響いていた。見えないが、この部屋はかなり広いのだろう。

突然、正面から足音が聞こえた。雷電は銃を構える。
??「ようやくたどり着いたか。想像よりも遥かに遅い。…本当にこいつで大丈夫なのか?」
誰に話しているのかわからない。想像よりも遅い?初めからここに来ることがわかっていたかのような口ぶりだ。

??「雷電、よく来たな。俺の名前は冷(レン)。俺はお前にとって、最初の難関だ。」

冷たく言い放つと、レンは背中に背負っていた何かを取り出した。
スイッチを入れる音がすると、炎が辺りを包んだ。奴が持っていたのは火炎放射器だったのだ。

炎のおかげで視界が良くなる。レンは細身な体系のアジア人だった。厚手のコートを着た姿は、炎と相反する姿だ。

灼熱の熱気に、雷電は苦悶した。
レン「熱いか?本当に熱いか?……灼熱の炎も、俺には冷たい。……寒いんだ!!寒い寒い寒い寒い寒い!!!」
そう叫ぶと、レンは雷電に駆け寄る。細身を生かした素早い動きに雷電は一歩遅れた。

雷電の顔に炎が近づけられる。
レン「お前も凍えろ。ここで灼熱に焼かれ、凍死するんだ!!」

雷電にはもはやレンが何を言っているのか理解できなかった。
なんとか炎と距離を取り、雷電は身を隠す。奴の情報が必要だ。雷電は急いでガデューカに連絡した。

ガデューカ「なんだ?すまんが今は忙しい。後にしてくれ!」
ガデューカの声の後ろには、銃声と砲撃のような音が聞こえた。ガデューカも何かと戦っているのだろうか。

雷電は無線をアレックスに切り替える。
雷電「アレックス、奴らの中に、アジア人顔の幹部はいるか?」

アレックス「ん?アジア人?……ちょっと待ってくれよ…お、こいつだな?本名は不明だが、コードネームは冷(レン)。中国人だ。奴はかつてCIAに所属していたみたいだな。だが、CIAのデータでは消息不明になってる。最後の任務は、ロシアへの潜入任務だ。もう1人、女エージェントと一緒だったらしい。2人ともそこで行方不明になったまま…ああ、あとその任務で、寒中潜入用のスーツの実戦テストも行われたらしい。必要な情報かはわからんがな。雷電、頑張ってくれよ?」

雷電「ああ。ありがとう。」


あまり有益な情報は得られなかったが、雷電は勝たなければならない。ここで死ぬわけにはいかないんだ。

レンは雷電を見つけると、またもや急接近してきた。雷電は何発か発砲する。明らかに当たっているはずだが、レンは一瞬たりとも怯むことなく接近してくる。

炎に焼かれ、左肩の感覚が麻痺する。激痛をなんとか耐える雷電を容赦なく炎が襲う。

全身から煙を立てながら、雷電は決死の覚悟で炎から全速力で脱出した。もう体は限界だ。


雷電はレンの弱点を探した。火炎放射器ということは、どこかに燃料タンクがあるはずだ。
レンは燃料タンクを隠す気もないんだろうか、背中に背負っていた。雷電はそのタンクに向けて数発、銃弾を撃ち込んだ。
途端に爆発したタンクと共に、レンは煙に包まれる。


久しぶりの静寂に、雷電は安堵する。

そんな雷電の後ろから、地獄のような声が聞こえた。レンだ。奴はあの爆発でも死なない…。なんて奴だ…。
レン「まだだ…俺の復讐は!思想は!こんなところで終わるはずがない!!寒い!寒い!寒い!!寒すぎる!!俺はまだ、寒さを感じる!!感じられるんだ!!」

ボロボロになったコートからハンドガン92式手槍を取り出して、雷電に向けて発砲する。
ほとんど狙えていない状況だが、レンの放った銃弾は、雷電を頬をかすめた。

雷電が咄嗟に撃ち返す前に、レンは部屋の隅にあったガソリンを自分の頭から浴びた。
レン「さぁ!撃て!撃って俺を彼女の元に連れて行ってくれ!!もう寒さはいらない!!」

雷電は、撃った。

着弾すると、引火し、レンは炎に包まれる。
レン「ああ、熱い!熱い!!熱いぞぉぉぉぉぉぉ!!!」
レンはそう叫ぶと、膝から崩れ落ちた。

するとガデューカから無線が鳴った。
ガデューカ「どうした?雷電。」
雷電「いや、レンというコードネームの男と戦っていたんだ。もう決着はついた。」

ガデューカ「レン……そうか、奴もここにいたのか。」
雷電「知り合いだったか?」

ガデューカ「そんな関係ではなかった。だが奴の過去は知っている。最後の任務で何があったか…」
雷電「……教えてくれ。俺は死から目を背けない。だからこそ、レンの過去を知りたい。」

ガデューカ「最後の任務、極寒のロシアで行われたその任務は、当時の最新鋭だった寒中用スーツの実戦でテストも兼ねたものだった。レンと彼女、香蘭はスーツを着てその任務に臨んだ。レンと香蘭は恋人関係だったらしい。出身が同じこともあって、気が合ったんだろうな。2人はブリーフィングで、敵地にある洞窟で1週間の待機、その後、バックアップチームが到着したと同時に潜入を開始する予定だった。

2人はブリーフィング通り洞窟に入った。中はかなり奥まで続いてた。
ここロシアの凍えるような寒さにも、このスーツのおかげでなんとかしのげていた。

だが初日の夜、悲劇は始まった。突如、2人のスーツは全く動かなくなったんだ。すぐに救助の要請をしたが、CIAの返答は「作戦は予定通り行う」の一点張りだった。

スーツは、ガソリンによって動いていた。エンジン周りは無事のようだったが、肝心のヒーターの回線がやられたようだった。ここでの修理はできそうにない。こうなってしまえば、スーツはもう体力を消耗するだけの冷たい布でしかなかった。2人はスーツを脱ぎ、装備品として持ってきたコートを羽織った。だがそのコートは室内潜入用で、薄手の物だ。この寒さはしのげない。2人は装備品を少しずつ燃やし、暖をとった。だが暖をとるためには火だけでは足りない。彼らは食料品の中にあった、ありったけの温かい食料を少しずつ消費していった。

なんとか6日が過ぎ、最後の日を迎えた。この時、2人ともほとんど動けないような状況だった。火を絶やさないように、何もかも燃やした。食料は、明らかに足りていなかった。この寒さで、予定通りのペースで消費することは不可能だったのだ。残りの食糧は、1人分も足りるかわからない。だが食料が無ければ、この極限状態では生き残れない。

外に出て助けを呼びたかった。だがここは戦場だ。外には敵兵士しかいない。

この状況を打開するには、燃えそうな物、そして食料の調達が必要だ。レンは決死の覚悟で外に出ることを決めた。どこかでそれらを拾ってこないと、2人とも死んでしまう。

レンは必死に探した。だがこのあたりには木々も動物も、何もなかった。
仕方なくレンは洞窟に向かった。

洞窟に入ると、ガソリンの匂いがした。

レンはゾッとした。ガソリンは、最後の手段として置いておいた物だからだ。

レンは洞窟の奥へ走る。2人が寝泊まりしている辺りまで進むと、かなりのガソリンの匂いと共に、香蘭が立っていた。
香蘭はこちらに気付いていたが、こちらに背を向けたままだ。そして、手に持っていた松明を自らの体に擦りつけた。
瞬時に香蘭の体は炎に包まれた。
香蘭はこちらを振り向くと、口を動かした。声にもなっていなかったが、レンは必死に読み取ろうとした。
だが、レンの極限状態での朦朧とする意識では、炎に遮られた彼女の伝えたかった言葉を知ることはできなかった。


しかしレンには、彼女の思いが伝わっていた。それはレンもずっと、考えていたことだったからだ。
2人ともわかっていたんだ。この状況では、どちらか1人しか生きられない。


レンに生きてほしい……彼女はその一心だったのだ。






彼女は膝から崩れ落ち、この世を去った。





レンは恨んだ。作戦を中止にしなかったCIAを、助けを呼ぼうにも呼べない、そんな敵味方に区別された世界を作った国を、そして、彼女を助けられなかった自分を……



香蘭の体を包む炎は、レンを凍えさせた…



その後レンは、データ上では行方不明になった。」

雷電「……だから奴はあんな最後を…。」
ガデューカ「寒さは奴にとって、彼女と過ごした時を刻む感情だったんだろうな。」