MGSFN---第1章---山猫の再来





※このブログはMGS4の、その後をストーリー仕立てで考察するものです。序章、ブリーフィングを上げているのでまだ見てない方はそちらからお願いします。
MGSのネタバレを含むので、ご了承ください。
MGSファンの方の意見や感想が聞きたいので、出来ればコメントお願いします!
次回→




ヒューイ「それに僕は、ここの研究員じゃないんだ。僕の専攻は機械工学だからね。ここには、言わば助っ人として来てるだけなんだよ。僕の方の作業は終わったからね。」
雷電「ならお前はこれではない何かを作ってたのか?」

ヒューイは前のめりの姿勢になって、指を鳴らした。

ヒューイ「良い質問だね。僕はかつて、核搭載二足歩行兵器メタルギアを作り出した。
だけど僕が作ったのはハル……君が作ったような鳥類のような姿勢の二足歩行兵器じゃない。『直立』二足歩行ができるメタルギアだ。名前はサヘラントロプス。」

ハル「最初の人類…。そんなものが………。」



ヒューイ「だけど、サヘラントロプスは未完成だった。様々な人間の復讐心に囚われ、最後はスネーク達によって撃破された。」

---コツ、コツ、コツ---
靴が鳴らす、軽快な足音が背後から聞こえた。

??「喋りすぎだ。ギーク。」
図太い声と共に、電撃音が鳴った。その瞬間、ヒューイの体は異常なまでに痙攣していた。

図太い声の主がテイザーガンを放ったのだ。
雷電「お前は?」
銃を構え、雷電は問う。

??「お前が奴の息子か。確かに面影があるな。なるほど…期待出来そうだ。」


ヒューイは絞り出すような声で話す。
ヒューイ「リ…リンクス……僕はこの計画のために……奴らには…情報が必要…」
図太い声の主はリンクスと呼ばれていた。
黒髪に鋭い眼をした厳つい顔、そして体格の良い、筋肉質な体からは想像できないような名前だ。

リンクスはヒューイを踏みつけながら、軽蔑の眼でヒューイを見ていた。
リンクス「貴様はいつもベラベラと話し過ぎる。おい。こいつを連れていけ。」
リンクスの後ろから、3人の兵士が駆け寄る。


リンクス「ジョン、いや、雷電。我々求心者達に愛国心があると思うか?」

突然の問いかけに戸惑う雷電にお構いなしにリンクスは話を続ける。

リンクス「答えはNOだ!バカな奴らは我々が愛国者達の生まれ変わりだと言う。愚かな連中だ。」
リンクスの怒号に、雷電は身構える。
雷電愛国者達の残党じゃ…ない?どういうことだ!お前らは元愛国者達だろ!」


リンクス「……すぐにわかるさ。おい、行くぞ!乗れ!」

リンクスと兵士達はヒューイを連れて去って行った。


雷電はすぐに無線を起動した。理解不能なことが立て続けに起こったことで、正確な状況判断が出来なくなっていたからだ。

雷電「博士、何かわかるか?」
博士「リンクス…どこかで聞いたことがある名前だ。」
黙り込む雷電と博士の無線に、オリヴィアが割って入ってきた。

オリヴィア「リンクスはネコの一種よ。と、言ってもイエネコじゃなくてオオヤマネコだけどね。古代ローマでは観察眼の鋭い事を『オオヤマネコの眼』と言っていたみたい」

博士「…山猫…?」
博士は何かを思い出している様子だった。



博士「とにかく雷電、そこから離脱してくれ。作戦通り、橋を超えたポイントで君を待っておく…」
そのとき、突然オリヴィアが叫んだ。
オリヴィア「博士!あれ!」
博士「オリヴィア?……まずい……ここも気づかれたのか!オリヴィア!ハッチをロックしてくれ!すまない雷電、少し遅れそうだ。」

通信は向こうから強制終了された。




博士達の乗っている軍用機が止まっている空港へ、黒い装甲車が3台、ゲートを突き破って侵入してきた。
銃火器を積んでいない機体の中からは何もすることができず、あっという間に包囲され、博士達は機内に籠城する形となった。
すると、装甲車の中から何人かの兵士が出てきた。1台に8人、合計24人の兵士がこちらに銃口を向けている。

絶望的だ。



兵士の1人が拡声器を片手に話し始める。
兵士「ハル・エメリッヒ博士。見ての通り完全に包囲されてる。だが、今回の目的はお前を捕らえることではない。お前を殺すことだ。」

そう吐き捨てると、兵士は片手を上げた。

兵士「構え!」

兵士達は、一斉に銃口をこちらへ向ける。

そして兵士は、手を振り降ろして叫んだ。
兵士「撃て!」
その言葉は、ハルの脳内に響いた。ここまでか……



そのとき、爆音を上げて5台のジープが現れた。
ジープは全速力で、軍用機を包囲していた兵士に向けて発砲しながら近づいてくる。
すかさず兵士達は撃ち返す。

しかし突然の戦闘に、兵士達はパニック状態になっていた。

1台のジープが撃ち抜かれ、爆発した。大破したジープは炎上しながら何回転もしている。
それでも残りのジープは突き進み、兵士達の15mほど手前で停車した。
ジープに乗っていたのは13人だ。そのうち1人は赤髪をしている。
赤髪の人物は、周りの乗組員に指示を出す。

赤髪の人物「軍用機には当てるな!いいな?」
「了解!」

素早くジープを降りると、彼らは即座に連携体制を取り、撃ち合いを再開した。
10人以上の差があるにも関わらず、彼らは匠な連携で兵士達を圧倒する。

兵士達のうち数人が装甲車に乗り、彼らへの攻撃を始めた。

さすがの連携も、装甲車の前では無力かと思われた。しかし、赤髪の人物は叫ぶ。
「対戦車砲、用意!」

すると、彼らはジープの荷台からロケットランチャーを取り出した。
「構え!」

一斉にロケットランチャーが装甲車をはじめとする兵士達に向けられた。

「撃て!」

複数のロケットランチャーによる攻撃は辺り一帯に轟音を響かせ、戦いは終わりを迎えた。

あの爆音が嘘だったように辺りは静まり返る。そして、赤髪の人物が女性だったことを、オリヴィアは今気が付いた。


赤髪の人物が話し始めた。
「久しぶりね。エメリッヒ博士。いや、この状況ではこの呼び方のほうがいいかしら?オタコン。」
博士は懐かしむように応答した。
「久しぶりだね、メリル。でもその呼び方はなんだか……恥ずかしいな。」

「フフ…全然変わってないのね。良かったわ。」


博士「ハッチを開けてくれ、オリヴィア。」
「ええ。」ハッチが開くと、メリルと仲間が入ってきた。
メリル「あなたがオリヴィアね?」

博士「なんでオリヴィアのことを知ってるんだ?」

メリル「私は、彼女に会いに来たの。」
メリルは改まった態度でオリヴィアに話し始めた。

メリル「私はあなたのお父さん。いえ、戸籍上は違うんでしょうけど、あなたの本当のお父さんに助けられた。私はその恩返しをするため、あなたを助けるため、ここに来たの。」

博士「助けられた?どういうことだい?」

メリルは、辛い表情をしながら話している。


メリル「私は昔、そう、シャドーモセス事件のすぐ後、偵察機に乗っていたの。そのとき、敵の対空攻撃で偵察機は墜落、そして敵陣で遭難した。その救助を任されたのがスネークとあなたのお父さん、アレン軍曹だったの。
アレン軍曹はそこで銃撃に巻き込まれ、殉職した。私を助けるために……」

メリル「その事件以来、私はずっとあなた達家族を探していた。
そしてやっとあなたを見つけたわ。戸籍上では夫婦ではなかった2人から生まれた子を見つけるのは時間が掛かった…
私は、あなたのお父さんに代わって、あなたを守る。そう決めたからこそ、FOXHOUNDを身に着けているの。」

メリルは胸についてるFOXHOUNDのマークに手を当てた。

オリヴィアは泣きそうになっていた。

オリヴィア「私の母は…1度も結婚してないの…。
私の母の名前はヘレナ。母は父のことをいつも話していた。母はずっと、父のことを思い続けていたのよ。
でも、父の最期のことは話してくれなかった……

きっと、私があなたを憎むと思ったんでしょうね……

でもそんなことはなかった。真実を伝えてくれて、ありがとう……メリルさん。」

メリル「彼は勇敢だったわ。彼のおかげで、今の私がある。本当にありがとう…。」

オリヴィアは泣きながら、頷いた。





第1章  完