「シークレット・スーパースター」感想!!!男は父親よりも、親父になろうぜ。

「シークレット・スーパースター」

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何かに打ち込む面白さを思い出せる大傑作。

母親に賛辞を。

 

男は父親よりも、親父に。チンタンになろう。

 

 

 

 

 

 

 

インド映画なのに……

インド映画といえば、何を思い浮かべますか?多くの人は、歌って踊る映画を想像するんじゃないでしょうか。

しかし本作は、その歌って踊る要素は完全に封印していて、あくまで歌を歌いながら回想したりお話が進んだりする。これは国際版編集なのかもしれませんが、このおかげでかなり本作は見やすい。インド映画ならではの、文化の違いからくるエグ味のような、とっつきにくさが本作にはほとんどないんですよね。あるとすれば言語ぐらい。明らかに国際的に売り出すことを考えているので、普段洋画を観る感覚と同じようにすんなり見れる、万人受けするインド映画なのが本作。

 

 

 

シンデレラストーリー

そんな本作が描くのは、才能はあるのに夢を叶えられないでいる1人の少女のお話。この王道なストーリーが、ド直球に多幸感を演出してくれる。

まず、主人公インシアを演じたザイラー・ワシームちゃんの夢を諦めきれない、苦悩や葛藤を体現したような顔つき含めて演技が素晴らしすぎる。この子、「ダンカル きっと、つよくなる」でデビューした子みたいなんですが、なんと2019年で引退を宣言したそうで。

よくよく考えれば、彼女自身もシンデレラストーリーのようにデビューした女優さんで、さらに現在は自分のやりたいことをするために引退を決意した。日本での本作の公開時期と引退の時期は偶然の一致にすぎませんが、彼女自身を体現したような映画だったのかもしれません。

 

 

何かに打ち込む面白さ

そんなインシアちゃんは歌に思いっきり全力で打ち込む。どんなにくじけそうになっても、諦めそうになっても、色んな人の助けや自分の不屈の精神を胸にどんどん進んでいく。

こういう、ハングリーな精神って本当に凄いし羨ましいなぁ…と思うんですよねぇ。というのも、私自身はそういう努力を常に怠って生きてきたダメ人間で、実際本ブログも閲覧数なんてほとんど気にせず好き勝手自己満足でやっているだけだし…。もっと、映画が好きなら好きでこういう活動を頑張りたい自分もいるんですが、それをする勇気が出ない、それをする元気がないのも事実で…。だからこそ、彼女のハングリー精神が”羨ましい”。

 

 

 

父親と親父

そんなインシアちゃんを邪魔するのは、実の父親。この家庭は明らかなDVと男尊女卑がある。日本でもこういう父親がいる家庭って結構あると思うんです。まぁ、まさに私の家庭も若干その1つなのかな、とも思っているんですが、その理由は明確なんです。父親としての責任を負いたくないんですよ。人の人生を背負う勇気がないんです。だから、厳しく怒るし無責任になんでもかんでも規制する。その子に、その家庭に何が望ましいか、どんな責任を負うべきかなんて考えずに。

一方で、アーミルカーン演じるクズ音楽プロデューサーのシャクティは、インシアの夢や苦悩の解決に全面的に協力してくれる。彼は女癖は悪いし、人の気持ちを考えるのは下手だけど、自分が忘れかけていた音楽をどこで奏でるのかを思い出させてくれたインシアに対して、あらゆる責任を自分が背負ってでも成功させてやろうとする。自分と同じように音楽という世界に魅入られたインシアのために。このシャクティはまさに親父なんです。教育に悪いことばっかり教えるかもしれないし、人とは違うことをするかもしれないけど、その子に何をさせるべきか、させてあげられるかを考えて、それに対して責任を負う覚悟を当然のように持ち合わせている。

 

 

 

 

本当のシークレットスーパースター

そんな親父に出会ったインシアだけど、父親のある行動と母の叫びから自分の夢を断念する。ここ、普通の映画なら”ああ、ラストへの前振りねw”ぐらいの展開なんだけど本作ではかなりそこを濃く演出するから”あれ!?そういうラストもありか!?”とまで観客も夢を諦めかけてしまうほど。

そんな展開を経て、インシアを遂に気づく。周りの色んな人の助けがあったからこそここまで来れたんだ。そして、本当のスーパースターはいつも横にいてくれたってことを。母親のありがたさって、急にわかる瞬間がありますよね。怒ってくれたことも、支えてくれたことも意味があったんだ!!とわかる瞬間というか。

それに本作のお母さんナズマが本当に良い母親なんですよ。母親の優しさというか、温かさをにじませた顔で、インシアが成功すると一緒に喜んでくれるし、危ないことをするとちゃんと叱ってくれる。まさに、母親の見本というか、母親への心の具現化というか。

帰ったら母に感謝を言いたくなりました…

 

 

インシアを支えた人たち

母以外にも、色んな人に支えられていたインシア。特出したいのはやはり弟がパソコンを直そうとしていた話。いやぁ、あんなのズルイですよね…。ぶっ壊れてるしテープで貼り合わせたところで直るわけはないんだけど、ちゃんとインシアの心は治っていく…。健気で可愛い弟のまさかの行動に、不意打ちで涙腺崩壊でした。

もう1人、インシアの彼氏になるチンタン。聖人といっていいほど良い奴チンタン。いやまじでこういう、なんでもモノをあげるんじゃなくて何かをやってあげられる男が”カッコイイ”んだよ。こういう男になりてぇよ…。

 

 

最後に

インド映画、それも近年上映しているものって多幸感溢れるものが多いと思うんです。特に「バジュランギおじさんと小さな迷子」なんかはかなり良かった。けど、本作はそれとも負けず劣らずな、本当に心地よい多幸感に包まれる、まさに”良い映画”でした。上映館は多くはありませんが、是非映画館で鑑賞してください!!