「フロント ランナー」感想!!!”正義感”という快楽の犠牲になった、1人の男の物語。

「フロント ランナー」(2D字幕)
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好感度、爽やかさ、カリスマ性MAXなイメージ俳優、ヒュー・ジャックマン浮気者の政治家を熱演!!!


本日のお品書き
・本作に期待したもの
・政治家と不倫
・とは言っても
・最後に


本作に期待していたもの
皆さん、本作の予告を見たでしょうか。私は観た時、パっと面白そうだけど、一方で展開が読めちゃいそうだなぁ…と色々思ったんですよね。こう、観るか迷ったら行くしかない!それが映画好きだ!!
というわけで観てきたんですが、感想に入る前に、鑑賞前に期待していた2点をおさらいしておきます。
まず1点目。ここを見に行った人も多いんじゃないかと思うのが、ヒュー・ジャックマンのゲス野郎演技。女を軽視したゲス野郎を、好感度MAX俳優が演じる。このギャップが観たい!!
そして2点目。この映画の予告からその匂いはぷんぷんしていたんですが、政治家と不倫のシーソーという要素。政治家として、国を、国民を導こうと身を粉にして活動するのと、そんな大きい偉業に対して些細(と思っている)なプライベートでの失態。彼は最低野郎だけど、彼を陥れたことは本当に正しかったのか?結果的に、誰も得をしていないんじゃないのか?という、不倫=著名人としての人生の破綻という式に迫る、現代に語るべき話。これが観たい!!
「フロントランナー」予告→https://www.youtube.com/watch?v=cYO9iWSIfAU
(この予告の、「奥様に誠実ですか?」の言い回し、好きだったんだけど本編じゃ使われてなかった…)



皆大好き、ヒュー・ジャックマン。日本人も大好き、ヒュー・ジャックマン
そんな好感度高すぎ俳優が、不倫した政治家を演じる。でも、正直もっとゲスになって欲しかった。彼はゲス野郎っていうよりは、大事なことが見えてない野郎なんですよね(なんだそのネーミングセンス)。政治活動において彼は周囲を驚かす色んな手を使い、記者には上手い返しを何通りも披露し、出来る男をアピールしまくる。そんな中で彼自身も、自分が出来る男だと思い、そんな俺が不倫の1つや2つでとやかく言われるなんて!!!!と、その問題を直視しないで見たい部分、自分が輝く部分だけを見続けようとした結果、あの顛末をむかえるわけです。マスコミに囲まれる不倫相手を助けなかったり、他の不倫相手がまた居たり、奥さんに許しを乞うても全然反省してなかったり、そういうポイントではゲスなんだけど、振り切れてないと感じたんですよね。元々好感度MAXな俳優なんだから、彼が政治家として逸材だ!みたいな描写やフレンドリーな描写は要らなかったんじゃないかなぁと思う。ゲス野郎映画って、潔白な人の仮面が剥がれて超ゲス野郎になるのが面白いのに、この映画はチラっとしか仮面を剥がさない。まぁ、そっちに振り切る映画じゃないのかもしれないけど、ゲスいヒュー様を見れると思った私は少し残念でした…(「ウルフオブウォールストリート」のディカプリオ…まではいかないとしても)ただ、マジ切れするヒュージャックマンを観れたのは良し!






政治家と不倫
大前提として、不倫は最低です。そして、罪には罰があるわけです。では、不倫という罪に対して、彼が受けた一連の騒動、職を失い、社会的信頼を失い、プライベートを露わにされたことは、この罪と同等の罰だったんでしょうか。これは誰かが判断できることじゃない。
でも、私個人の意見で言えばこの罪に対しての罰は、彼の妻が施した罰が同等だと思う。彼を許さず、彼のもとに居続ける。贖罪の気持ちで溢れかえるまで。それが、この罪に対しての罰。
それ以外の、上記した彼が受けたものは過剰な罰だった。この罰は、一瞬の快楽は生むけれど、その後何も残らないんです。
”正義感”は、人間にとって快楽の1つで、人の罪を正義の名のもとに罰する。悪を滅ぼす、その過程に参加する。自分が正しい、そう思うことが出来る。寄ってたかって”悪人”を懲らしめるだけで。自分は何も失わずに、快楽を得ることが出来る。
こんな、人間の根本の悦楽の対象になりやすいのが、著名人。あの人が!?というギャップによる快楽は、もはやドラッグのよう。使われては捨てられ、次のものを欲する。この快楽を満たすためだけに、どれだけの人間を過剰に罰してきたんだろう。と、考えだすとキリがない。
著名人のプライベートに踏み込むのはもう辞めにするべきなんじゃないか、とも思うんですよね。著名人であっても、その人が犯した罪に対する罰は、私達が自由に決めて良いものじゃないと思う。法律という規範の元で決められた罰を受けるべき。だけど、SNSやインターネットのおかげでもう、社会的制裁は自由に誰でも加えられるようになってしまったんです。そんな現代だからこそ、この原点となったゲイリーハートの物語を、今知るべき。そして考えるべきなんです。





とは言っても
でも、この映画がそこまで描けているかというと、そこは曖昧だと感じました。ラストの、ゲイリーの演説はまさにこの問題について語っていると思うんです。でも、その結果がわからないんですよね。まず、ゲイリーの政策がなぜ注目されたのか、そしてゲイリーが何を掲げていたのか、つまりゲイリーが大統領になるとどうなっていたのか。そして、それが叶わなかったことで何が失われたのか。ここを描き切ってこそ、このメッセージ、問題提起が生きると思うんです。そして、もっと社会的制裁を受ける部分を丁寧に描いて良かったとも思う。ここの部分が曖昧だから、イマイチ彼が受けた過剰な罰が際立たない。(際立たせないようにしているのかもしれないけど)

何よりの問題は、この映画がリアルに作り過ぎていることだと思う。実話ベースなのはわかるけど、もっと映画的に、物語的に面白い部分を作ってくれないと、淡々と彼の3週間を語られても、盛り上がりきらない。場面場面の演技や演出は良いのに、それが光れば光るほど物語の単調さが際立ってしまうという逆効果まで生んでた。






最後に
この映画、中盤のワシントンポストの女性記者の意見同様に、”ゲイリーハートという人物がいました”、”彼は不倫をしていました”、さぁ、その事実を知って、あなたはどう判断しますか?と読者(観客)に投げかけているから、これを見た人同士で語り合うのは本当に面白いと思うので、是非映画をねっとり語り合える人と観に行ってください!カップル向きではないかも?!





去年紹介した、LBJがちょびっと出てくるんだけど、彼のキャラクターなら不倫がバレても問題なかった…のかも?