「ジョン・ウィック:パラベラム」感想 ”美”と”ユーモア”の狂乱。もう”ガンフー映画”なんて、言わせない。
「ジョン・ウィック:パラベラム(2D字幕)」
”美”と”ユーモア”。
2つの絶妙なセンスが、ジョンウィックという男を形成していく。
殺し屋業界に激震が走る!
ジョンウィックシリーズの、最大ともいえる魅力こそが”殺し屋業界”という世界観。
殺し屋専門のガンショップ、闇病院、テーラーそしてホテル。そんな非現実なモノが当たり前のように存在してる世界こそジョンウィック流NYシティ。そこかしこで殺し合いをしてるし、血まみれの人が走ってても市民は気にしない。殺し屋が当たり前の世界。この外連味にとんでもなくワクワクするんです。
そんな殺し屋業界がついに今回動き出す!かつての英雄ジョンウィックの始末に向けて右往左往する殺し屋業界。もうあのメダルも使えなくなり、自分のツテを頼るしかないジョンウィックに対して、殺し屋業界の権力を使いまくって様々な刺客を送り込む主席。
遂に、大きく動きだす殺し屋業界こそ本作の魅力!
犬も、剣も、馬も!
ジョンウィックといえば、銃と柔道が合わさったガンアクションもまた、世界観と同格の魅力を持つ要素。
しかし今回は銃だけでは終わらない!
犬を駆使して陽動と牽制と銃を組み合わせたロジカルな戦闘。
ナイフを使ったスラップスティックコメディのようなアクション。
NYの街を馬で駆け抜けるチェイスシーン。
韓国映画「悪女/AKUJO」を彷彿とさせるエクストリームなバイクアクション。
そしてアジア的エクストリーム格闘とジョンウィックの組手的アクション。
山盛りテンコ盛りになったアクションシーンの山々が、どれも別の魅力を持っていて、純粋に”楽しい”、映画全体が一連の大きなアクションシーンを観ているような、そんな体験になるような映画でした。
”独特のユーモア”と”美”
これもシリーズ通しての魅力だと思うんですが、ジョンウィックには独特のユーモアが溢れてる。それは例えば「ミッションインポッシブル」のようなアメリカンジョークでもなく、「エクスペンダブルズ」のような豪快ギャグでもない。ダニエルクレイグ版「007」のような渋いセンスにシュールなギャグが合わさったような、一番近いのは「007 スカイフォール」のラストバトルの雰囲気。王道に渋いアクションを詰め込むことで生まれる独特のシュールさ、そしてそれに対して愚直に対処するジョンウィック。このギャップコメディこそ本作のユーモアセンス。
SUSHI職人が出ても、にんじゃりばんばんが流れても、ジョンウィックという愚直な芯があるからこそ映画全体の雰囲気は壊さずに面白くなる。
そしてそれは”美”のセンスにも直結していて、ジョンウィックのアクションは何処を取っても”美”を感じる。型の美しさ、銃声の美しさ、展開の美しさ、そしてキアヌの美しさ。この抜群の美意識が、ジョンウィックをカッコよく進化させるし、ユーモラスな展開もカッコよく見える。面白いと同時にカッコイイ。それこそジョンウィックの魅力の秘訣だと思う。
ラストバトル
そんな魅力が、シリーズでも最も詰まっていたのが本作のラストバトル。選りすぐりの武器を選んで挑んだ闘いだけど、ここでの敵は新型の防弾装備仕様で銃弾を跳ね返す、つまりわかりやすく強い。敵に苦戦しながらなんとか引き返して、半ギレで武器をショットガンに変えて、そこからはバコバコ敵を倒していく。ここは高度なユーモアと美とアクションのセンスが瞬時に流れていく名シーン。
そしてその後に待っているのは、アジア的エクストリームアクション(忍者?)VSジョンウィックの肉弾戦。ジョンウィックの戦い方って、カンフーとガンアクションを合わせた”ガンフー”と呼ばれがちですけど、かなり柔道に近いんですよね。一方でこの敵は明らかにカンフーのようなキレがある。素早さVSテクニックの対決。これまでジョンウィックのアクションを、意外と鈍重だと批判する意見も結構ありましたけど、ここのシーンはこの”少し鈍重”なテクニシャン的戦い方がめちゃくちゃカッコイイ。まさに、ジョンウィックだからこそ出せる格闘の魅力が遂に開花したシーンでした。
次回に続くけど…
そこから色々あって、次回に続く展開に。次回も楽しみ過ぎるけど、本作での不安は残ったままな気がするんです。それはストーリーが欠落している点。このシリーズ、中でも2作目3作目はストーリーの比重がかなり軽い。だからこその魅力も増えた一方で、シリーズとしてはどんどんキツくなっていっているのも正直感じました。
なんといっても、キャラクターや設定を覚えられない。ジョンウィックという男があまりに魅力的過ぎて、他のキャラが全然立ってないんです。しかし本作でも過去に出てきた登場人物は当然のように登場するし、ラストの「ババヤガ」のように小さい過去作の設定もバンバン引用している。復習必須といえばそこまでなんだけど、シリーズとしてお話の魅力がないのはもう少し頑張って欲しいところ…。
最後に
キアヌが魅せる、アクション映画史に必ず名を遺すであろう作品。是非、映画館でそのユーモアと美意識を体感してください!